水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

センター2017年 評論(1)

2017年01月24日 | 国語のお勉強(評論)

センター2017年 評論(1)


1~4段落


1 現代社会は科学技術に依存した社会である。近代科学の成立期とされる十六世紀、十七世紀においては、そもそも「科学」という名称で認知されるような知的活動は存在せず、伝統的な自然哲学の一環としての、一部の好事家による楽しみの側面が強かった。しかし、十九世紀になると、科学研究は「科学者」という職業的専門家によって各種高等教育機関で営まれる知識生産へと変容し始める。既存の知識の改訂と拡大のみを生業とする集団を社会に組み込むことになったのである。さらに二十世紀になり、国民国家の競争の時代になると、科学は技術的な威力と結びつくことによって、この競争の重要な戦力としての力を発揮し始める。二度にわたる世界大戦が科学―技術の社会における位置づけを決定的にしていったのである。
2 第二次世界大戦以後、科学技術という営みの存在は膨張を続ける。プライスによれば、科学技術という営みは十七世紀以来、十五年で〈 (ア)バイ 〉ゾウするという速度で膨張してきており、二十世紀後半の科学技術の存在はGNPの二パーセント強の投資を要求するまでになってきているのである。現代の科学技術は、かつてのような思弁的、宇宙論的伝統に基づく自然哲学的性格を失い、〈 A先進国の社会体制を維持する重要な装置となってきている。 〉
3 十九世紀から二十世紀前半にかけては科学という営みの規模は小さく、にもかかわらず技術と結びつき始めた科学―技術は社会の諸問題を解決する能力を持っていた。「もっと科学を」というスローガンが説得力を持ち得た所以である。しかし二十世紀後半の科学―技術は両面価値的存在になり始める。現代の科学―技術では、自然の仕組みを解明し、宇宙を説明するという営みの比重が下がり、実験室の中に天然では生じない条件を作り出し、そのもとでさまざまな人工物を作り出すなど、自然に介入し、操作する能力の開発に重点が移動している。その結果、永らく人類を脅かし苦しめてきた病や災害といった自然の脅威を制御できるようになってきたが、同時に、科学―技術の作り出した人工物が人類にさまざまな災いをもたらし始めてもいるのである。科学―技術が恐るべき速度で生み出す新知識が、われわれの日々の生活に商品や製品として放出されてくる。いわゆる「環境ホルモン」や地球環境問題、先端医療、情報技術などがその例である。〈 Bこうして「もっと科学を」というスローガンの説得力は低下し始め、「科学が問題ではないか」という新たな意識が社会に生まれ始めているのである。 〉
4 しかし、科学者は依然として「もっと科学を」という発想になじんでおり、このような「科学が問題ではないか」という問いかけを、科学に対する無知や誤解から生まれた情緒的反発とみなしがちである。ここからは、素人の一般市民への科学教育の充実や科学啓蒙プログラムの展開という発想しか生まれないのである。


1~4  〈 科学の歴史と科学者の立場 〉

1 16・17世紀 好事家による伝統的な自然哲学
                  ↓
    19世紀 「科学者」による知識生産
                  ↓
    20世紀  国民国家競争の戦力

2 第二次世界大戦後
         科学 … 社会体制を維持する重要な装置

3 19世紀~20世紀前半
   科学―技術 … 社会の諸問題を解決する →「もっと科学を」
      ↑
      ↓
  20世紀後半
   科学―技術 … 両面価値的存在
   (+)自然の脅威を制御
   (-)人工物が災いをもたらす →「科学が問題ではないか」

4  一般人 … 「科学が問題ではないか」
      ↑
      ↓
  科学者 …「もっと科学を」・一般人を啓蒙すべき


問1の漢字

(ア)倍増  ①培養 ②媒体 ③陪審 ④賠償 ⑤倍した
(イ)要因  ①動員 ②強引 ③婚姻 ④陰謀 ⑤起因
(ウ)厄介  ①利益 ②通訳 ③厄年 ④躍起 ⑤薬効
(エ)宣告  ①上告 ②克明 ③黒白 ④穀倉 ⑤酷似
(オ)癒やす ①空輸 ②比喩 ③愉悦 ④癒着 ⑤教諭


問2 傍線部A「先進国の社会体制を維持する重要な装置となってきている」とあるが、それはどういうことか。

 傍線部の主語は「現代の科学技術は」。
 各選択肢の主語はすべて「現代の科学は」であり、傍線部と重なるので、述語部分を見比べて言い換えになっているものを選べれば、中間部は読まなくてもいい。
 もちろん中間部を見ておかしな内容だと確信できれば、そこで落としてしまえば時間の短縮になる。

 ②「本来の目的」は一面的な断定。
 ③「為政者の厳重な管理下に置かれる」とは言えない。
 ④「世界大戦の勝敗を決する戦力を生み出す技術」は限定しすぎ。
というように、中間部でもけっこう落とせる。
 個人的には、正解選択肢⑤「知的活動という側面を薄れさせ」は危険じゃないかなと思う。最初ここを見てバツつけてしまった。
 述部を対応させるなら、

 ① 国家の莫大な経済的投資を要求する主要な分野へと変化している
 ② 国家に奉仕し続ける任務を担うものへと変化している
 ③ 先進国間の競争の時代を継続させる戦略の柱へと変化している
 ④ 経済大国が国力を向上させるために重視する存在へと変化している

にくらべて、⑤が圧倒的に傍線部Aと対応する。

 ⑤ 先進国の体系的な仕組みを持続的に支える不可欠な要素へと変化している

 A「先進国の社会体制を維持する重要な装置となってきている」

 逆にいうと、この二つが似ていると思えない人に、センターの問題は解けない。「解き方」以前に「語彙量(ボキャブラリー)」の問題だ。
 といっても、語彙がたまるのを待っていたら高校時代が終わってしまうので、「現代文重要単語集」的な本を常に手元におきながら、やはりセンターの過去問や、同じようなレベルの問題集を解き貯めていく必要がある。
 私立大にしぼっている人も、志望校の過去問を確認したなら、あとは同じ勉強を(センター過去問)すべきだ。
 そういう意味で、センターは「基本」の確認に役立つ。
 センターを基本と思えないレベルから脱却しないと、イイカンジのところには入れない。
 それは古文も漢文も同じだ。
 古文などは大体の年で、東大二次の古文より難しい本文が出題されているから、センターをおさえておけばどんな大学にも対応できることになる。
 なんといっても、センターの問題を作成されている先生方は、学習指導要領のチェックはされているはずなのだ。そんな雰囲気をかけらも感じない問題が私大には多い。


問3 傍線部B「こうして『もっと科学を』というスローガンの説得力は低下し始め、『科学が問題ではないか』という新たな意識が社会に生まれ始めているのである。」とあるが、それはどういうことか。


a 選択肢中に、もしくは選択肢の前に指示語があったら、まずはその指示対象の確認を行う。

 〈 こうして 〉= 科学―技術の作り出した人工物 → 人類にさまざまな災いをもたらし始めてもいる

  二十世紀前半の科学 … +(プラス)
    ↓
  現代の科学 … -(マイナス)の側面
    ↓
  人々は科学に対する「問題ではないか」という思いを抱いている。


b 選択肢の構造を把握する。
  「 科学( + → - ) → 科学への疑念 」
 という内容と対応させればいいのだが、「疑念」部分との対応だけで、一気に落としてしまうのが、時間的効率がいい。

 ①「明白な警戒感」、②「顕著な失望感」、③「端的な違和感」は、それで誤答としてしまえる。

 ④「全的な信頼感が揺らぎつつある」
 ⑤「漠然とした不安感が広がりつつある」 は、

は、「 「科学が問題ではないか」という新たな意識が社会に生まれ始めている 」に対応する。

 しかし⑤は、「その新知識が市民の日常的な生活感覚から次第に乖離するようになり」の部分が本文の内容とは異なるので誤答。よって、正解は④になる。

コメント
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