水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ミセス・ノイズィ

2020年12月07日 | 演奏会・映画など
 ~ 母親として日々家事をこなし、小説家としても活動する吉岡真紀は、スランプに陥っていた。あるとき彼女は、隣人の若田美和子から嫌がらせを受けるようになる。真紀は美和子がわざと立てる騒音などでストレスがたまり、執筆が進まず家族ともぶつかってしまう。真紀は状況を変えようと、美和子と彼女からの嫌がらせを題材にした小説を書き始める。~

 これが「yahoo映画」で紹介されているあらすじ文。
 それぐらいの知識で観に行った。隣に座っている同僚から「おもしろそうだ」と聞いて、調べてみて上映館が少ないことと、上記のあらすじを知った。これがどうやったら面白くなっているのだろう、気になる女優さんが出ているわけでもないしなと思いながらも、ふらふらと日比谷ミッドタウンまで行ってしまったのは、どこか嗅覚が働いたのかもしれない。
 すばらしい作品だった。
 年末なので決定します。
 今年の邦画ベスト1はまちがいなくこの「ミセス・ノイズィ」だ。洋画は「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」。
 人間のものの見方とは、いかに表面的なものか、見たいものしか見てないかということを感じさせられた。
 人は、自分が見たかったことだけ見て、それが正しいとか、普通だと言う。
 言うばかりか、違う考えの他人を批判したり、バカにしたりさえする。
 何年か前、現実にあった「騒音おばさん」事件を題材にした作品だ。
 おそらくワイドショーでは「迷惑な変人」として報じられ、見ているわれわれも「あんな人が隣にいたらやだなあ、困ったもんだなあ」ぐらいの感覚で眉をひそめていただけなのではないか。
 彼女には、もしかしたら映画で描かれたような事情があったのかもしれない。
 あ、観る方がいるかもしれなので、これ以上は書かないことにしよう。
どたばた悲喜劇風に進んでいくのかと思いきや、視点が変わると、深い人間ドラマに様変わりする(書いてんじゃん)。
 ご近所付き合いだけでなく、いろんな人間関係が希薄になっている現代社会では、なんらかの事情を抱えた人の悲しさと、それに気づかずに一方的に断罪する人々が生まれる。
 その溝は、SNSが発達した今だからなおさら深いという洞察も感じさせながら、主張をおしつけるのではなく、高度な泣き笑いのエンタメ作品として訴えかけてくる。こんなに泣かされることになるとは予想もしてなかった。ぜひ、劇場へ!
コメント
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