〈問1・問2〉
問1 傍線部(ア)~(ウ)の解釈として最も適当なものを、次の各群の①~⑤のうちから、それぞれ一つずつ選べ。→ 基本的な単語、文法事項の組み合わせで解く問題。「標準」
(ア)えまねびやらず
① 信じてあげることができない
② かつて経験したことがない
③ とても真似のしようがない
④ 表現しつくすことはできない
⑤ 決して忘れることはできない
「え~やらず」……最後まで~しきることができない、「まねぶ」……真似る・学ぶ・そのまま伝える。歴史物語には「そのまま伝える」の意味の「まねぶ」が多く用いられる。正解は④。
(イ)めやすくおはせしものを
① すばらしい人柄だったのになあ
② すごやかに過ごしていらしたのになあ
③ 感じのよい入でいらっしゃったのになあ
④ 見た自のすぐれた人であったのになあ
⑤ 上手におできになったのになあ
「めやすし」……感じがいい、「おはす」……いらっしゃる、「ものを……~なのになあ」。正解は③
(ウ)里に出でなば
① 自邸に戻ったときには
② 旧都に引っ越した日には
③ 山里に隠(いん)棲(せい)するつもりなので
④ 妻の実家から立ち去るので
⑤ 故郷に帰るとすぐに
「里」……実家、「出でなば」……ダ行下二段「出づ(出かける)」連用形+完了「ぬ」未然形+「ば」。「未然形+ば」なので、「もし~したら」。正解は①。
問2 傍線部A「『今みづから』とばかり書かせたまふ」とあるが、長家がそのような対応をしたのはなぜか。→文脈からいろいろ類推して解く「難」
① 並一通りの関わりしかない人からのおくやみの手紙に対してまで、丁寧な返事をする心の余裕がなかったから。
② 妻と仲のよかった女房たちには、この悲しみが自然と薄れるまでは返事を待ってほしいと伝えたかったから。
③ 心のこもったおくやみの手紙に対しては、表現を十分練って返事をする必要があり、少し待ってほしかったから
④ 見舞客の対応で忙しかったが、いくらか時間ができた時には、ほんの一言ならば返事を書くことができたから。
⑤ 大切な相手からのおくやみの手紙に対しては、すぐに自らお礼の挨拶にうかがなければならないと考えたから。
……宮々よりも思し慰むべき御消(せう)息(そこ)たびたびあれど、ただ今はただ夢を見たらんやうにのみ思されて過ぐしたまふ。月のいみじう明(あか)きにも、思し残させたまふことなし。内裏(うち)わたりの女房も、さまざま御消息聞こゆれども、よろしきほどは、A〈 「今みづから」とばかり書かせたまふ 〉。
おくやみの「消息(手紙)」がいろんな方から寄せられる。今だったら、メールとかラインにあたるのだろうか。「宮々」は長家の姉たちを指すと注にあるが、おろそかに扱えない存在であろう。
女房たちからも届く。「よろしきほど」どういう人かを指すか難しいが、「宮々」ほどの方ではないはずだ。物事の評価を表す言葉に「よし」「よろし」「わろし」「あし」の四段階がある。「よし・あし」は絶対的な「良い・悪い」だが、「よろし・わろし」は相対的なもので、文脈によって意味が幅広い。きわめて日本的な単語だ。
だから「よろし」は、「いい感じ」「わるくない」「まあいいかな」「ふつう」「ましかな」のようになる。
「『今みづから』とばかり」の「ばかり」から、「~とだけ書いておく」というニュアンスが伝わる、宮々ほどでなく、ふつうの相手には、あとで連絡するね、またあたらめてねとひと言だけ返しておいたということだろう。無視もできないから、スタンプいっこ送っておくとか。
②「妻と仲のよかった女房たち」とは判断できないし、「この悲しみが自然と薄れるまでは返事を待ってほしい」は「今みづから」とも対応しない。
③「心のこもったおくやみの手紙に対しては、表現を十分練って返事をする必要があり」、④「見舞客の対応で忙しかった」は、ともに本文から導き出されない。
⑤「大切な相手からのおくやみの手紙に対しては」は「よろしきほど」とずれることになる。正解は①。
問1 傍線部(ア)~(ウ)の解釈として最も適当なものを、次の各群の①~⑤のうちから、それぞれ一つずつ選べ。→ 基本的な単語、文法事項の組み合わせで解く問題。「標準」
(ア)えまねびやらず
① 信じてあげることができない
② かつて経験したことがない
③ とても真似のしようがない
④ 表現しつくすことはできない
⑤ 決して忘れることはできない
「え~やらず」……最後まで~しきることができない、「まねぶ」……真似る・学ぶ・そのまま伝える。歴史物語には「そのまま伝える」の意味の「まねぶ」が多く用いられる。正解は④。
(イ)めやすくおはせしものを
① すばらしい人柄だったのになあ
② すごやかに過ごしていらしたのになあ
③ 感じのよい入でいらっしゃったのになあ
④ 見た自のすぐれた人であったのになあ
⑤ 上手におできになったのになあ
「めやすし」……感じがいい、「おはす」……いらっしゃる、「ものを……~なのになあ」。正解は③
(ウ)里に出でなば
① 自邸に戻ったときには
② 旧都に引っ越した日には
③ 山里に隠(いん)棲(せい)するつもりなので
④ 妻の実家から立ち去るので
⑤ 故郷に帰るとすぐに
「里」……実家、「出でなば」……ダ行下二段「出づ(出かける)」連用形+完了「ぬ」未然形+「ば」。「未然形+ば」なので、「もし~したら」。正解は①。
問2 傍線部A「『今みづから』とばかり書かせたまふ」とあるが、長家がそのような対応をしたのはなぜか。→文脈からいろいろ類推して解く「難」
① 並一通りの関わりしかない人からのおくやみの手紙に対してまで、丁寧な返事をする心の余裕がなかったから。
② 妻と仲のよかった女房たちには、この悲しみが自然と薄れるまでは返事を待ってほしいと伝えたかったから。
③ 心のこもったおくやみの手紙に対しては、表現を十分練って返事をする必要があり、少し待ってほしかったから
④ 見舞客の対応で忙しかったが、いくらか時間ができた時には、ほんの一言ならば返事を書くことができたから。
⑤ 大切な相手からのおくやみの手紙に対しては、すぐに自らお礼の挨拶にうかがなければならないと考えたから。
……宮々よりも思し慰むべき御消(せう)息(そこ)たびたびあれど、ただ今はただ夢を見たらんやうにのみ思されて過ぐしたまふ。月のいみじう明(あか)きにも、思し残させたまふことなし。内裏(うち)わたりの女房も、さまざま御消息聞こゆれども、よろしきほどは、A〈 「今みづから」とばかり書かせたまふ 〉。
おくやみの「消息(手紙)」がいろんな方から寄せられる。今だったら、メールとかラインにあたるのだろうか。「宮々」は長家の姉たちを指すと注にあるが、おろそかに扱えない存在であろう。
女房たちからも届く。「よろしきほど」どういう人かを指すか難しいが、「宮々」ほどの方ではないはずだ。物事の評価を表す言葉に「よし」「よろし」「わろし」「あし」の四段階がある。「よし・あし」は絶対的な「良い・悪い」だが、「よろし・わろし」は相対的なもので、文脈によって意味が幅広い。きわめて日本的な単語だ。
だから「よろし」は、「いい感じ」「わるくない」「まあいいかな」「ふつう」「ましかな」のようになる。
「『今みづから』とばかり」の「ばかり」から、「~とだけ書いておく」というニュアンスが伝わる、宮々ほどでなく、ふつうの相手には、あとで連絡するね、またあたらめてねとひと言だけ返しておいたということだろう。無視もできないから、スタンプいっこ送っておくとか。
②「妻と仲のよかった女房たち」とは判断できないし、「この悲しみが自然と薄れるまでは返事を待ってほしい」は「今みづから」とも対応しない。
③「心のこもったおくやみの手紙に対しては、表現を十分練って返事をする必要があり」、④「見舞客の対応で忙しかった」は、ともに本文から導き出されない。
⑤「大切な相手からのおくやみの手紙に対しては」は「よろしきほど」とずれることになる。正解は①。