今年の前期、同じ授業をクラスごとに遠隔と対面で使い分けることになった。
元となる講義画面資料(プレゼン画面)はともに事前配布し、遠隔(学生が任意の時間に視聴できるオンデマンド方式)では説明原稿をパソコンの音声エージェント(MacOS付属のKyoko)が読み上げ、その音声ファイルを学生は任意に再生する。
対面は、同じ内容を私が教室でプレゼン画面を通して学生に説明する。
同じ画面資料で、対面だと説明に90分かかる内容が、エージェントの読み上げだと30分で済んでしまう。
その代わり音声ファイルは任意の回数繰り返し再生できる。
ともに授業後に同じ小テストをネット経由で実施し、その得点に差があるか確認※した。
※以下の分析は清水裕士関西学院大学教授開発のHAD16を使用。
10点満点で平均値は、遠隔:9.35(138人※)、対面:9.03(71人) ※遠隔は2クラス、対面は1クラス
この2群の平均値の差(0.32)に意味があるかt検定をした結果、p=0.049でぎりぎり有意。
効果量は0.3で、再現確率は0.93なので、それなりに意味のある結果といえる(t検定の効果量は0.2あれば無意味でない)。
すなわち、同じ講義の場合、遠隔(オンデマンド)の方が対面より、若干理解度が高かったといえる。
遠隔での音声ファイルと対面での私の口頭説明の違いでは、前者は凝縮され、後者には無駄話がある。
同じ90分を使うなら前者は3回繰り返し聴ける。
他に前者はやや棒読み、後者は感情を込めて話すが、滑舌は悔しくも前者が勝る。
また、同じ遠隔でもオンライン(リアルタイム)や動画配信だと対面と同じダラダラ(冗長)さが発生する(特に講義動画をパソコン・スマホ画面で90分観るのはつらい)。
もっとも説明原稿を作成するのに結構手間がかかり(エージェントの読み上げ音声を細かくチェックする手間も)、こちらは90分では済まないが(喋った方が楽)。
そういうこともあり、遠隔の場合は、静止画と音声ファイルの組合せが最も受講効率がいいと思っていたが、対面よりも良いくらいだったということは、コロナ関係なく、これからの授業のやり方として大事な選択肢となるだろう。