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サクリファイス 近藤史恵

名古屋・栄の丸善で見かけた「今年の本屋大賞はこれで決まり(多分)」というPOPに惹かれて読んでみた。内容は、スポーツ青春ミステリということだが、前半の「自転車競技」というものに対する描写のなかで少しずつ破綻に向かっていくことを予感させる緊張感の高まりも見事だし、終盤の展開はさらに息をつかずに読ませる面白さだ。2転3転する真相は、最初の「惨劇」までは推測できたのだが、その後の展開には大いに驚かされた。自転車競技というものの面白さ、それに熱狂する欧州の人たちの心理などにも興味が沸く。確かに、今年の流れから言うと「本屋大賞」を取ってもおかしくない傑作だと思う。途中1か所だけ、「作者のご都合主義」が気になった部分がある(主人公の元カノがある人物に出会うところ)。最後の展開の伏線になっているのでそういう話にしたかった作者の気持ちは判るが、そこまで面白くしなくても十分面白いのにと思った。(「サクリファイス」近藤史恵、新潮社)
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