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9.11 ノーム・チョムスキー

テロ特措法の延長の是非が大きな問題となっていることもあり、大きな関心を持って読んだ。この本で最も驚いたのは、「ニカラグア」についての記述である。ニカラグアに対してアメリカが行った行為は、9.11よりも残忍だったというくだりである。これに対して、ニカラグア政府がとった手段は、「報復攻撃」でも「先制攻撃」でもなく、国際司法裁判所への提訴だった。その裁判所はニカラグアの主張を認める決定を下した。しかしそれは何の効果も無かった。次にニカラグア政府がとった手段は、国連への提訴であった。ここでも、ニカラグアに有利な結論が出されたらしい。しかしそれも何の効果も無かった。9.11に激高したアメリカと、ニカラグア政府の行った対抗手段とどちらが真っ当か、と本書は問いかける。私は、ニカラグアという国の名前を知っていても、それがどういう国かは知らない。だから、アメリカがニカラグアでしたことは、隠されているわけではないが、日本ではほとんど報じられないのだという。こうした例は、本書にいくつも書かれている。アメリカが行ったベイルートの建物破壊テロもその1つ。また、スーダンでは、アメリカの爆撃で国内に備蓄された薬の約半分が失われ、国全体の医療体制が瓦解したともある。こうした9.11以上に激しい破壊活動をアメリカは世界各地で行っているという。本書には、第二次大戦後にアメリカが爆撃をした国のリストが掲載されている。そこにあるのは「強国・大国の論理」と「小国の悲劇」だ。ここに書かれた内容が全て真実かどうかを検証はできないが、もしそうだとするとアメリカの言う「テロとの戦争」という大義名分はいったい何なのだろう。(「9.11」ノーム・チョムスキー、文春文庫)
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