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紐育ニューヨーク 鈴木ひとみ

NYは旅行しても、駐在員として滞在しても実に楽しい場所である。そうしたNYについて、定住者と駐在員の中間的な立場から書かれたのが本書。日本人のNYの理解の仕方には3種類あるという。1つ目は旅行者が見るNY。2つ目は日本企業のNY駐在員が知るNY。3つ目はNYに定住している日本人にしか判らないNY。このうちの2つ目と3つ目の違いが実は非常に大きいと言われている。日本企業のNY駐在員は、いろいろな場所に出かけたり、いろいろな人とつきあうことでNYをよく知ろうとする。しかし、本当の意味でのNYの奥深さや怖さを体験することなく、一定期間が過ぎると日本に帰っていく。どちらかと言えば、「怖さ」を知らないケースの方が多いだろう。帰るところのない立場に自分を追い込んでNYで生活する覚悟の有無が、決定的な違いを生む。何だかんだ言っても、駐在員は日本の企業に守られている。「駐在員」が「定住者」しか知らない本当のNYを知りたいと思っても、その違いを乗り越えることは非常に困難だ。駐在員が、NYに定住する日本人を秘書として雇って思い知るのが、その距離感なのだ。
 本書は、こうした「駐在員」と「定住者」の中間的な視点で書かれており、両者の距離を埋めたいと考える人の手助けになるだろう。本書には、明るく楽しいNY情報が満載なのだが、その一方で両者の溝の存在、旅行や駐在では知ることの出来ないものとは何なのかを気づかさせてくれる。(「紐育ニューヨーク」鈴木ひとみ、集英社新書)
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