goo

メロンのまるかじり 東海林さだお

まるかじりシリーズを読むのは本当に久しぶりだ。ある時まで、このシリーズは単行本が刊行されるとすぐに読んでいたのだが、いつしかあまり読まなくなってしまった。さすがにやや飽きてきたのと、著者の言い回しのなかに、周りを気遣うような注釈が多くなってしまったことに対する不満のようなものが多くなってきた気がしたのが大きな原因だった。周りへの気遣いに苛立つという、私自身の受け止め方自体、少しひねくれている感じがするが、これは作者の気遣いが強まったというよりも、世の中からタブーが減ってきたとか、ずけずけものを言う文章が多くなってきたということで、読み手側の心構えが変わってしまったということに原因があるのだと思う。そのことも、自分自身判っていた。今またこのシリーズを読んでみると、今度はそうした気遣いに対する苛立ちが、減っているのに気づいた。世の中、たここ数年か10年くらいの間に、タブーのようなものがまた増えているのかもしれないし、世の中の文章にそうした気遣いのための注釈が増えているのかもしれない。一貫している著者のスタンスから、こうした世の中の変化がわかるような気がするのは驚くべきことだし、内容とはまったく別のことを考えさせられるこうした読書体験はかなり貴重なもののように思われる。(「メロンのまるかじり」 東海林さだお、文春文庫)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )