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鬼の跫音 道尾秀介

著者の本は出たらすぐに読むことが多いが、本書は今まで何故か読んでいなかった。4回連続で直木賞候補となり、今年(4回目)の候補作で直木賞を受賞した訳だが、本書は著者の最初の候補作にあたる。それでも刊行されたのが2009年ということだから、本当にここ2,3年、次々と注目される作品を出し続けていることがわかる。本書を読むと良く判るが、著者の作品には、何ともいえない恐ろしさを感じる。ミステリーとかホラーといったジャンルでは括れない、もっと根源的な恐怖心を煽る作品が多いが、本書ではまさにふとした弾みで非人間的な行為に走ってしまう人間の怖さのようなものが次から次へと語られる。ミステリーとして読むと、これで謎解きになっているのかどうか判らないような作品すらあるが、それでも何故か納得させられてしまう。こうした感覚は著者の本ならではの不思議な感覚だ。(「鬼の跫音」 道尾秀介、角川文庫)

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