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ころころろ 畠中恵

シリーズの8作目にもなると、安心して読める反面、飽きてきしまう面もある。10年も続いているのに主人公の一太郎は少ししか大人にならないし、主人公にどんな大きな災難が降りかかっても最後は絶対にハッピーエンドに決まっているということで、読む方の緊張感も段々低下してしまう。小説の中の時間の流れと現実の時間のスピードが一致しないことは、こうした連作で綴られていく執筆途中の長編小説の難しいところだ。本書の場合、短編の集まりのような体裁だが完全に1つのまとまった話であるという構成の新しさと、脇役の「鳴家」がますます愛嬌度を増していくのがそれを救ってくれる。本書の「鳴家」は結構ちゃんとしたことをしゃべり、主人公の窮地を救うのにも何故か一役買ってしまっている。ここまで存在感が強まってくると、読者としては「鳴家」を主人公にしたスピンオフ作品なども期待したい気がしてくる。(「ころころろ」 畠中恵、新潮文庫)

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