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変見自在~スーチー女史は善人か 高山正之

仕事の関係でミャンマーについて考えることが多くなってきたこともあり、刺激的な題名に惹かれて読んでみた。私の知るミャンマーの人は皆、温和で温かく、礼儀正しい人ばかりである。そうした個人的印象と欧米の経済制裁を受けている強硬な非民主国家というマスコミのイメージとが、どうしても一致しないことに常に疑問を感じていた。本書を読むと、今までの一般的な報道とは180度異なり、今のミャンマーという国が「植民地時代の負の遺産を誰のせいにもしないで愚直に精算しようとしている温和な国民の国家」という側面があることが説得力をもって伝わってくる。スーチー女史に、本書が語るような悪意があるかどうかは別として、何故ミャンマーという国家が女史を警戒しなければならないのかは、本書の言うとおりだろう。本書の物言いはかなり刺激的だし、本書の内容をどの程度自分の考え方や行動スタンスに反映させるかはかなり個人差や好みがあるだろうが、例えば本書に示されたような中国や官僚に対する厳しい目などは、一般的なものの見方とは別の見方があるうという大切な事実を思い起こさせてくれると同時に、世界情勢や社会情勢を深く理解する上で、どうしても必要なもののように思われる。(「変見自在~スーチー女史は善人か」 高山正之、新潮文庫)

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