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深川にゃんにゃん横町 宇佐江真理

書評に「猫好きの必読書」とあったので読んでみた。猫好きが集まる江戸下町の小さな長屋を舞台にした人情話の短編集。長屋で起きる様々な事件の顛末が、そこに生息する猫の話に少しだけシンクロする形で人情味たっぷりに描かれている。本書に登場する主だった登場人物はおしなべて50歳以上の高齢者で、話は紆余曲折ありながらも最終的には彼らが若い人々を助けたり、励ましたりという話になっている。そのあたりに、身につまされるような人情味を感じるのだと思われる。最初の話の「猫がしゃべる気がする」という話は、猫好きには良く分かる話だ。猫が好きかどうかでこの本の評価が判れるのかどうかは判らないが、微妙な猫と人間のやり取りの記述は、やはり猫好きでないと納得できない要素を含んでいるような気がする。但し、正直な気持としては、いずれの話も猫は脇役なのがちょっと不満というか、1つくらい猫が主人公の話があっても良かったように思う。(「深川にゃんにゃん横町」 宇佐江真理、新潮文庫)

 

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