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小さいおうち 中島京子

単行本で刊行された時から読みたいと思っていたのだが、ようやく読むことができた。内容は、ある一人の女性からみた戦中戦後の日本の日常風景だ。女性の年代は、ちょうど我々の親の世代。自分などは、親の世代から「戦中戦後の日本人は何を考えていたのか」ということをしっかりと聞いたことがない。本書の主人公がその当時に見聞きして考えた事というのは、そうした我々と親の世代のギャップを非常にうまく埋めてくれているような気がする。どんどん泥沼化していく戦況のなかでどのような不安を感じたのか、資源のない小国日本がアメリカという強国大国と戦争をするということをバカげたことだと思わなかったのか等、今から思うと「何故?」と思うようなことも、本書を読むとその答えが良く判る。最後に主人公の手記と一緒に出てきたもの、色々な解釈が可能だが、色々考えると、胸が熱くなる。読んで良かったと思える傑作だと思う。(「小さいおうち」 中島京子、文春文庫)

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