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ルバイヤートの謎 金子民雄

本書を手にするまで、「ルバイヤート」という書物については、名前だけは聞いたことがあったものの、いつ頃のどこの国の誰の本なのかという知識は全くなかった。本書を読んで、「ルバイヤート」という本が、11世紀頃イランのアフガニスタン国境近くで生まれたオマル・ハイヤームという詩人によって書かれたペルシャ語の「四行詩」集のことだと知った。それだけでずいぶん賢くなった気はするが、その本に書かれた詩とはいったいどういうものなのか、あるいはなぜこの本が世界中で読まれているのか、そのあたりの事情は、どうも一筋縄でいかないらしい。そもそもこの詩集の前述した基礎知識でさえ、様々な謎があり、しかもほとんどの謎が解明されていないという。要は、深い謎のベールに包まれていながら、あるいはその謎ゆえに世界の人々を魅了するというのがこの本の正体であるらしい。80歳になろいうとしている著者自身その魅力に取りつかれてしまったようで、学術的に謎を解明していく一方で、著者自身がその謎を楽しんでしまっているようで面白い。そんな本に巡り合ってしまった著者が、なんとなくうらやましい気がした。なお、巻末の著者の略歴をみたら、「ツアンポー渓谷の謎」の訳者とある。かなり守備範囲の広い人なんだなぁと感心してしまった。(「ルバイヤートの謎」 金子民雄、集英社新書)

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