goo

ハーメルンの誘拐魔 中山七里

大きな社会問題を扱ったミステリー。著者の本はかなり読んでいるが、こうした社会問題を正面から扱った作品は珍しいような気がする。作者を知るきっかけになった「音楽」を扱ったシリーズはもちろん印象深いが、それ以外の作品でも独特の暗さを持った作風が印象的で、もともとジャンルに関係なく好きな作家だけに、こうした新境地ともいえる作品は大歓迎だ。病気に苦しむ若い女性が、それを利用したような誘拐事件の犠牲者となる。それから連続して起こる事件は、起こるたびにその様相を変え、犯人の意図が全くつかめないまま、話はどんどん意外な方向に展開し、それだけで話に引き込まれていく。最後に待っている結末はほほ予想の範囲で、意外性はないが、読みながら色々考えさせられたことで、読後の充実感も大きかった。(「ハーメルンの誘拐魔」 中山七里、角川書店)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )