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虚構の男 L・P・デイヴィス

キャッチコピーは、「唖然とする展開」「開いた口がふさがらなくなるラスト」「早すぎたジャンルミックス」などなど。どれも読書意欲を掻き立てる。しかも本書が書かれたのは1965年というから50年以上前のことになる。期待度100%で読み始めた。最初は、のどかな寒村で静かに短編小説を書いて暮らす主人公と近所の人々の温かい交流の話なのだが、あれよあれよという間に話は全く別の様相を見せ始める。普通にチョイ役で登場しているのかと思った人物が別の顔を見せ、主人公のちょっとした違和感の意味が少しずつ明らかになるにつれて、話は本当にとんでもないことになってしまう。1965年に書かれた本書だが、その本当の舞台は50年後ということで、ぴったり今に重なる。世界における中国の台頭が現実とは別の形で実現していて、これはこれですごい洞察力かもしれないと思った。まあ現実がこの小説のようにならなくてよかったというべきかもしれない。埋もれていた過去の名作を再評価しようという企画シリーズの1冊とのこと。他の作品を読むのが楽しみになってきた。(「虚構の男」 L・P・デイヴィス、国書刊行会)

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