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雪の鉄樹 遠田潤子

これまで名前を聞いたこともないし、初めて読む作家だが、本書が少し前から話題になっているので、読んでみることにした。何か異常な家庭と暗い過去を背負った主人公が、何かに耐えながら何かを待っている。そうしたことがうすぼんやりと示されたまま、話は進む。彼は何をして何をされて、そこまで苦しむのか、読み進めるにつれて少しずつ分かっていくが、本当の意味で彼のことをそれなりに理解できるのは最後の最後だ。よくぞここまでと思うようなどろどろした愛憎劇だが、解説を読むと、それこそ著者の真骨頂だという。こうした作家の名前を今まで知らなかったことを恥じると同時に、自分の読書が狭いジャンルに偏っていることを思い知らされた気がした。(「雪の鉄樹」 遠田潤子、光文社文庫)

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