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クローバーナイト 辻村深月

一言でいえば子育て世代の奮戦記だが、父親の育児参加、加熱する保活・お受験・お誕生日会など、最近のテーマを扱っているのがみそで、とても参考になるなぁと一生懸命読んでしまった。おそらく著者自身の子育て体験が執筆の動機になっているのだろう。これを読むと、はた目には異様な世界のようにも見えるし、自分のところはそこまではひどくないと少し安心するようなところもあるのだが、異様だと判っていてもいざ当事者になるとそれに絡め取られてしまうことも良く理解できる、というのが多くの読者の感想なのではないかと思う。はるか昔に育児を終えて、孫のことを心配するような自分にとっても、こうしたびっくりするような実態を知っておくことは決して損にはならないだろうと感じる。自分の家も日本全体ももっと貧しくて、しかも3人兄弟の3番目という境遇の自分にはあまり大切に育てられたという実感がなく、どこか別の世界の話という気がするが、今の世代の人たちが大きな流れに抗えずに苦しんでいるのを目の当たりにするのは辛いものだ。(「クローバーナイト」 辻村深月、光文社)

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