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重力波は歌う ジャンナ・レヴィン

2017年度のノーベル物理学賞が「重力波」に関する研究者3名に授与されたというニュースを見たすぐ後に本屋さんで本書を見かけたので購入、読んでみることにした。刊行が今年9月となっていて、ノーベル物理学賞の発表が10月だから、まさに絶好のタイミングだ。早晩受賞することは間違いないということだったようだが、読みが的中した出版社にとってこんな嬉しいことはないだろう。すでに本の帯には「今年度ノーベル賞受賞者3名への直接インタビュー」と書かれている。重力波を測定するということは、何もないところで伝わる微細な音を聞くことだという。そうした説明の後で、最初に登場する科学者が「子供のころからオーディオマニアだった」というエピソードが語られていて本書の題名の意味が納得できたり、またこうした科学史につきものの「間違ってしまった先駆者」なども登場したりして、わくわくする話の連続だ。内容は、科学的な解説はほとんどなく、研究に携わった人たちの人間模様が大半だが、これがものすごく面白い。大きな成功の陰に、研究の道半ばで失意のうちに亡くなった人、成果を上げる直前に研究チームから外された人、研究の中心にいながらノーベル賞決定の直前に亡くなった人など、様々な人たちの存在があったことがわかる。本書を読んでいると、ノーベル賞を受賞したのは3人だが、本当の功労者は何百人もの研究者全員で、少し不公平な気がする。物理学賞にも平和賞のように団体に送られるという制度があっても良いと思った。(「重力波は歌う」 ジャンナ・レヴィン、ハヤカワ文庫)

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