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Future Watch 書評、その他
彼らはどこにいるのか キースクーパー
地球外知的生命探査(SETI)について、天文学、宇宙論、生命科学、社会学、SF小説などあらゆる知見を総動員して考察する一冊。各章毎に、①SETIが暗黙の前提としている「エイリアンは利他的」という仮定の妥当性 ②知的生命体の知能の向上とテクノロジーの関係 ③知的生命体の発生に欠かせない環境条件(レアアース仮説の検証) ④SETIが採用しているエイリアンとの通信手段の有効性 ⑤宇宙に活動範囲を広げていく際に必要なエネルギー確保の問題 ⑥知的生命との遭遇の確率に決定的に重要な知的文明の存続期間 ⑦エイリアンにメッセージを送る試み(Messaging Extraterrestial Intelligence)のリスクなどが取り上げられて、詳細に分析が加えられる。これらの検討課題のうちの①と⑦以外は、先日天文学のオンライン講義で学んだSETIを立ち上げたドレイク博士によるドレイク方程式の右辺の値を1つずつ検証していく作業と言い換えることができる。①については、人類の歴史を見ると暴力の減少などが観察される一方で異文化の邂逅の大半が悲劇的であることを踏まえ、SETIの仮定はやや楽観的すぎると指摘。②ではイルカの知能の研究などからSETIの方法ではヒト型知能しか見つけられないだろうとする。③では、地球という環境が偶然の産物なのか(言い換えれば地球が宇宙の中でレアな存在なのかを、地球存続に木星や月が果たす役割などにより考察(木星が小惑星を飲み込み地球への衝突を回避、月が傾きを安定させているので気候の激烈な変化を抑制)。④では、電波やレーザーという通信手段での交信に頼るSETIの手法の限界を指摘。⑤は、エイリアン乃至人類が宇宙に進出するためには膨大なエネルギーが必要であり、そのエネルギーをどうやって調達するか、そもそも調達可能なのかを考察。特に面白かったのは、⑤の膨大なエネルギー調達の可否についてを考える際の「ダイソン球」という概念。これは、木星を解体して太陽を太陽電池で包み込み、太陽が発するエネルギーを100%利用できるようにするという突拍子もないアイデアだが、銀河間を移動するためにはそれでもエネルギーが足りなく、複数の恒星にダイソン球を建設する必要があるのだそうだ。色々な前提を置いたラフな計算だとは思うが、そこまで考えていること自体に驚かされた。
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