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水よ踊れ 岩井圭也

書評誌で絶賛されていた一冊。中国への回帰直前から現在までの香港を舞台に、ある少女の死の謎を追う日本人青年を描いたミステリー風味のある一冊。登場人物は、中国から日本に帰化した主人公始め、香港の変貌を見届けようとするイギリス人、ボートピープルとして不法滞在するベトナム人、建築を学ぶマレーシア人、中国の一国二制度の施策を警戒する香港人など多彩だが、それぞれが水のように形を自在に変えながらも自分の信念を何らかの形で守ろうと頑張って生きていく様を描いている。少女の死に隠された真相は衝撃的だが、それ以上に全ての話がそこに収斂していく展開はスリリングそのもの。登場人物の造形も実に見事で年間ベスト級の作品と謳う書評誌の評価通りだと感じた。著者の前作もその書評誌の推す年間ベスト10だったというが完全に見逃していた。その作品も是非読んでみたい。(「水よ踊れ」 岩井圭也、新潮社)
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