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ルポ川崎 磯部涼

2016年から17年にかけて月刊誌に掲載された川崎という都市についてのルポをまとめた一冊。2015年に川崎で立て続けに起きた凄惨な中学一年生殺害事件と簡易宿泊所放火事件をきっかけに書かれたという。多文化が交錯する町、行政や法律の及ばない裏社会がはびこる町としての川崎、あるいは底辺から音楽を通して這い上がろうとする若者たち、どうしようもない日常の閉塞感から逃れられずに真っ当な道を諦めてしまった者たち、リーマンショックや東日本大震災のストレスを発散させるかのようなヘイトデモとそれに抗う者たちなど、そこに関わる人々が克明に書かれている。本書を読むと、ルポルタージュとはあくまで「現場からの状況報告」であり、話の落とし所、物事の真相に迫るようなノンフィクションとはかなり違う報告者の個性が浮かび上がるジャンルだということに気づかされる。(「ルポ川崎」 磯部涼、新潮文庫)
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