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残された人が編む物語 桂望実

行方不明者捜索を行う団体に音信不通の人の捜索を依頼する人々を主人公に据えて描いた連作短編集。主人公達は、遺産相続のため家出した弟と会いたい、有料配信の同意をもらうために学生時代にバンドをやっていた仲間を探して欲しい、突然失踪した夫に似た人を警察のHPで発見したので相談したい、上司だったベンチャー企業の社長に昔借りたお金を返したいといった理由で捜索を依頼する。題名からも察せられるように捜索の対象者はいずれも既に故人になってしまっているのだが、音信不通の間に故人と関わった人々の話を聞くうちに、行方不明になった深い理由やその後の生活を断片的ながら知ることになる。残された人々がそれぞれ何を思い、どのようにして空白の時間を埋めていくのかが克明に語られる一方、行方不明者の側の事情がそれぞれ現代社会の生きにくさを背景にしたものであることに、著者の強い意図を感じた。(「残された人が編む物語」 桂望実、祥伝社)
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