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妻に捧げた1778話 眉村卓

TVで「感動的な本」として紹介された本書。紹介された直後にネット書店を検索したがあいにくの在庫なしで、町の大きな本屋さんにでかけたら大量に平積みになっていた。こういう時にリアルの本屋さんは有難い。但し、その場合のリアルの本屋さんとういうのは「大型チェーン店」に限られる。内容は、TVで紹介されていた通り、病気の妻に読んでもらうためにSF作家である著者が毎日一話ずつショートショートを書いたという経緯とその1778話の中から選ばれた10数編の紹介だ。ショートショートの面白さ、こうした話を1778日も毎日書き続けたという凄さ、話から伝わってくる著者の愛情と意思の強さなど、色々なことに圧倒されてしまい、こんなところで感想を書くことが無意味なことのように思われた。(「妻に捧げた1778話」 眉村卓、新潮新書)

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デザインの誤解 水野学

今年の流行語大賞にも表れているが、良いデザインのものであれば多少高価でも買いたくなるというのが近年の顕著な風潮だ。そこで問題になるのが、良いデザインとはどういうものなのかだ。少し前の話だが、デザインや素材に徹底的にこだわった「定番商品」なるものを作って販売し、話題を集めているお店があることをTVで知った。本屋さんで、そのお店をやっている人が書いたらしい本を見つけたので、読んでみることにした。デザインには「機能デザイン」と「装飾デザイン」の2種類があるという説明から始まって、著者たちがどの様な考えで商品を開発し、どのようにお店を運営しているのかを懇切丁寧に教えてくれる。まさに、商業デザインというものが今までとは別の形でポジティブな意味で見直されていることを改めて気付かされると同時に、そうした流れに関する知見を色々与えてくれる一冊だ。ただ、解説が余りにも親切なので、ここまで書かないと思いが伝わらない厳しい現実があるのかもしれないと感じた。(「デザインの誤解」 水野学、祥伝社新書)

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屍人荘の殺人 今村昌弘

2017年末のミステリーランキングベストワンを総ナメにした話題作。大学のサークル活動で山深い山荘に集まった曰くありげなメンバー、その中で起こる密室連続殺人事件と、かなりベタな設定なので、どこがそんなに話題になるのか最初は分からなかったが、途中でミステリー史上初めてと言えるようなとんでもないことが起こる。正直「マジか」と思ったが、最後まで読み終えて、本書が100パーセント本格ミステリーであることを納得せざるを得なかった。とにかく謎解き部分の論理的で緻密な展開やそれを解き明かしていく過程の面白さから、本物だと言わざるを得ないのだ。オーソドックスな傑作かどうかは賛否両論あるだろうが、次にどんな奇策を読ませてくれるのかがとにかく楽しみだ。(「屍人荘の殺人」 今村昌弘、東京創元社)

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世界は四大文明でできている 橋爪大三郎

中谷巌教授が主催する「不識塾」の講義録がもとになっているという1冊。この「不識塾」の本は、先日初めて読んだが、面白かったので2冊目を読んでみることにした。昨今のリベラルアーツブームを牽引するような色々な分野の泰斗が語るその分野の大きな流れを踏まえた解説は、「そういう風にまとめることができるのか」という新しい発見があってとても面白い。本書の場合は「宗教」というものを「バラバラの人間をグループに束ねるもの」という視点で見ることができるというのが大変参考になった。何を考えているのか分からないばらばらの他人同士、宗教の「同じものを信じているので行動が予測しやすい」という機能が社会の円滑化に役立っているという考えは分かりやすく説得力もある。講演で100回以上話した内容を文章化したというだけに、話は色々あっちに行ったりこっちに行ったりのように見えて、しっかりまとまっていて見事だ。(「世界は四大文明でできている」 橋爪大三郎、NHK出版新書)

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夏の祈りは 須賀しのぶ

本の雑誌社が選ぶ「2017年文庫年間ベストワン」」の一冊。ベストワンに輝いた数日後にターミナル駅の大きな本屋さんに行ったら「受賞」を知らせる帯のついた本書が山のように積んであった。自分の読書の傾向が「評判」とか「売れ行き」とか「ベストテン」とか「有名人のお勧め」といった言葉に流されすぎているなあと反省したばかりだが、やはり「ベストワンは早く読まなければ」という気持ちになってしまう。内容は、これまで県大会準優勝が最高成績で甲子園出場が悲願というある公立高校野球部の話。昭和最後の年の話から始まってその10年後20年後と続いていく連作短編集だが、最初の話のキャプテンやスラッガーが後の話でOBとして登場したりして話は続いていく。とにかくその構成が見事で、高校野球っていいなぁと思わずグッときてしまう。2017年度ベストワンというのも納得の一冊だ。(「夏の祈りは」 須賀しのぶ、新潮文庫)

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