手元に、日本国憲法の衆議院可決の最終案なる草稿(国立公文書館蔵)がある。朱線による訂正文が見え消しになっている。
憲法前文の一節目の主権在民を書いた終わり部分が、当初の案文は「・・・ここに国民の総意が至高なものであることを宣言し、この憲法を確定する」となっていた。
それが極東委員会からの申し入れによって、主権在民主義が明確になるよう「・・・ここに主権が国民に存するものであることを宣言し、」と訂正された。
元の英文がsovereignty(主権)であることからして、意図的に「主権在民」を明確にしたくなかったと言うことである。
敗戦時の政府中枢は英文を誤訳までして、「主権在民」の押し付けに抵抗したのである。そこまで天皇制(国体)の護持に殉じるという姿勢に驚きを禁じ得ない。
今の安倍首相が、事あるごとに、「みっともない憲法ですよ」と言う理由は、まさかここにあったのかと思うと、滑稽であると同時に背筋が寒くなる。
最近の態度を見てると、どうやら特別な階級に自分は属していると考えている節も窺える。それでなければ、あれだけ国民に嘘をつけないだろう。
【参照文献:週刊朝日百科「日本の歴史」『日本国憲法』朝日新聞社2004年12-60,61頁】
この国が元気だったころ