キキ便り

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リストラから教えられる人生 その2

2010-06-11 09:25:27 | リストラから教えられる人生
今日は娘の卒業式だった。全校生徒が体育館に集まって、卒業生の父兄や家族の人たちも交えて共にお祝いする。

まず卒業生が入場するシーンで、思わずほろっとしてしまう。一人ひとり名前を呼ばれて入場するのだが、ここまで大きく成長したのだという実感と、解雇のショックがだぶり、複雑な思い。

子どもたちには、まだ知らせていない。しっかり準備して話をしないと、子ども心に大きな不安を抱きながらこれから数ヶ月過ごすことになってしまうだろう。ドラマクイーンの(大げさに反応する)娘と変化の苦手な自閉症の息子。そして二人とも感受性が強く、思春期ゆえの不安定さもあるので、共に重荷を背負っていく準備はできているのだろうか。

今の息子と同じ年齢の時、ダンナの両親は離婚した。家庭で頻繁に起こる喧嘩、それぞれの再婚、引越し、再婚相手の子どもとの同居など波乱に満ちた思春期を過ごしてきた。さらにそういう時期に、同級生から頻繁なるいじめに会い、随分辛い思いをしたためらしい。対処方法として、自分の感情を鈍化させ幼少期の思い出を意図的に忘れようとしたそうだ。時々、小さい頃の話を聞くたびに、この人なぜ全然覚えていないんだろう、と思うことがあるが、そういう過去があるらしい。

離婚に比べれば、解雇は一時的なものなので、修復が利きやすい。しかしそのトラウマはどういうタイミングでどういう仕事が見つかるかにも影響される。

1ヶ月前に、家族みなで見たビデオ「トウキョウソナタ」がここ数日頭から離れない。リストラされた主人公は、家族にもそのことを話せず、職安に通い続け、結局ショッピングモールの清掃員を仕方なく勤めることにした。その彼の同級生は、同じようにリストラされたことを妻に隠し続けるが、最後には子どもを残して妻と無理心中する。

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娘の卒業式では、いろいろな方面で活躍した子どもたちの名前が呼ばれ、表彰状が配られた。算数オリンピックに参加した娘にも表彰状が配られる。本当は卒業式で、全校生徒の前で書いた作文を読む予定だったが(作文が選ばれて)、どうしても人前で話すのが苦手だと先生に訴えて役を降ろさせてもらったらしい。そういう内弁慶のところが気になる。人前で失敗したくないというプライドが高いのだろうか。

卒業式の終わりには、学区合同キャンプのスライドを皆で視聴し、キャンプソングを幾つか歌ってフィナーレとなる。最後には、かぶっている卒業式用の帽子を空に皆で投げるところがアメリカらしい。

式後、担任の先生にもしかして引越しするかもしれないということをこっそり話す。話ながら、また涙ぐんでしまいそうになるが、娘に気づかれないように手短に話す。

廊下でカウンセラーの先生に会う。昨日娘が受けたGifted Program(英才教育プログラム)の選抜試験のことを報告してくれる。娘は数週間前に受けた算数と国語の標準試験がそれぞれ98パーセントタイル以上だったので、あと知能試験か創造性の試験のどちらかが98パーセントタイルだと、プログラムに正式に入れてもらえるらしい。もしかして引越しするかもしれないことを話すと、うちの州の英才教育プログラム選抜の条件は厳しいから、これだけ高い成績を収めていれば他の州でも同じようなプログラムにきっと入れてもらえるわよとのこと。娘が引越しすることになればショックで落ち込むことになるかもしれないから、夏休み中でも都合がつけばカウンセリングをして欲しいとお願いしておく。

沈んだ思いで卒業式を迎えた私だが、同伴したダンナの心はさらに複雑で辛いものがあったらしい。学校の前に止めた車に入るなりに、「こんなことになってしまって申し訳ない」と涙するダンナ。こうなってしまったのは彼の責任ではないと、私も共に涙が止まらなかったが、男として家族を養う者として責任を感じる気持ちがとてもよく分かり、胸に詰まる。

今日、ダンナが卒業式で職場を午前中休んだ間、彼の部下の一人が勇気を持ってダンナの上司(解雇を告げた人)にこういうのはおかしいと抗議に行ってくれたと聞く。ダンナの部署には7人働いているが、みなショックで言葉がなく、怒りは消えず、涙を流して悲しんでくれた人もいたらしい。自分の部署の人たちがそういう思いでいてくれることで、少し慰めをもらったらしい。

こういう時、周りの人たちに大きく支えられていることを実感し、それを思うだけで胸が一杯になる。今日は3人の人がこういう仕事があるけどどうか、とメールを送ってくださった。見当ちがいの仕事もあったが、そういう風に探してメールを送ってくださるだけでもありがたい。また恵まれない開発途上国の子どものためのクリスチャンのチャリティーにこういう事情だからしばらくは援助はできないと電話をすると、「もし良かったら私たちの祈りのリストにあなたとご主人のことを祈りの課題として入れてもいいですか」と、聞いてくださった。その言葉を聞いたとたん、涙がとめどなく溢れてしまう。その私の反応を受けて、「実は私も去年解雇されたんですけど、新しい仕事がこうやって与えられたんです。絶対見つかりますよ。」と慰めてくれる。

ローマ人への手紙5:3-5
そればかりではなく、患難さえも喜んでいます。それは患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと知っているからです。この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです。

コメント (3)
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