その昔、たまたま、自らの命を絶った方の第一発見者となったため、警察から「第一発見者を疑え」とばかりの扱いを受け、朝からの事情聴取は夕方4時ごろまでかかってやっと放免された同僚がいた。その日の一分一秒の行動を克明に、しかも繰り返し言わされただけでなく、前日の行動も詳しく言わされたらしく、閉口したという。その夜は、皆で慰めの酒宴と相成ったのである。同じことを繰り返し言わされると、そのうち、自分が何を言っているのか分からなくなるそうで、冤罪に絡む強要自白が時折問題となるが、彼は有りうる話だと実感していた。
所変わって、20年位前の話となるが、仕事で何度も訪れている上海で初めて西郊賓館というホテルに泊まった。後で分かったことだが、このホテル、日本や世界のVIPが泊まるところらしい。相棒の商社マン下村さんと夜遅いチェックインを済ませその日はお開き。事件は翌朝起こった。
朝食を食べ、一度部屋に戻ってからいざ出陣。タクシーに乗って目指す公司へ行きかけたところで、下村氏、「あれっ?部屋に財布を忘れた。」。急遽逆戻りで、彼は部屋に直行。私は車で待っていた。戻ってきたかと思ったら、受付の人間と何やら真剣な話。聞いたら部屋に財布が無いという。二人で他の場所に置き忘れた可能性を考えたが、昨日はチェックインの時に確かに財布は有り、それから朝まで外には出ていない。どう考えても部屋の中の紛失で、大騒ぎとなり、公安(日本の警察)がすっ飛んで来た。外国人が絡んでおり、中国側にとっても事は重大で、早速本人の事情聴取とあわせ、連れ合いのよし坊の聴取となった。
途端に、昔の同僚の話が甦ってきた。昨晩のチェックイン以降の状況を分単位で説明する羽目となった。我同僚ほど厳しくは無かったのだと思うが、それでも、3回は同じ事を言わされた。どうも、下村氏本人の状況説明と合っているかどうかをチェックしているらしい様子であった。この時、体験したのは、話に時間の要素が入ってきて、しかも、昨日のことから思い出しながら説明し、間隔をを置いて又同じ説明を求められると、こちらの説明もちょっと違ったりする。例えば、最初は「8時10分にチェックインした」と言ったのが、2回目に「8時10分頃チェックインした」と言うと、そこを突かれる。一体どっちなんだ、10分か、10分ごろか、と。こちトラは、そんなのどっちでもいい話だから、やってられないが、それが通らない。
いよいよ、犯人探しが始まった。我々は仕事もあり、放免されたが、大変だったのがホテルの従業員。3日間の滞在期間、全員ホテルの外へは一歩も出られずで、我々が夕方ホテルに帰ってくると、「お前達の為に家にも帰れない」といわんばかりの「白い目」で見られる始末。
結局、犯人も見つからず、ホテル側が金額の弁償ということで決着した。
この「事情聴取」というやつで思い知らされたのは、日頃の記憶がいかに曖昧か。若い頭でもそんな状態だから、年くって、脳がドンドン老化して言った日にゃ、覚えている方が無理というもんだ。こんな目には2度と会いたくない。
参考までに、西郊賓館は、普通のホテルと違い、広大な敷地の中にある別荘のゲストハウスといった感じである。庭園もあり実にゆったりした、当時から贅沢なホテルで、現在もVIPが使っているとのこと。
所変わって、20年位前の話となるが、仕事で何度も訪れている上海で初めて西郊賓館というホテルに泊まった。後で分かったことだが、このホテル、日本や世界のVIPが泊まるところらしい。相棒の商社マン下村さんと夜遅いチェックインを済ませその日はお開き。事件は翌朝起こった。
朝食を食べ、一度部屋に戻ってからいざ出陣。タクシーに乗って目指す公司へ行きかけたところで、下村氏、「あれっ?部屋に財布を忘れた。」。急遽逆戻りで、彼は部屋に直行。私は車で待っていた。戻ってきたかと思ったら、受付の人間と何やら真剣な話。聞いたら部屋に財布が無いという。二人で他の場所に置き忘れた可能性を考えたが、昨日はチェックインの時に確かに財布は有り、それから朝まで外には出ていない。どう考えても部屋の中の紛失で、大騒ぎとなり、公安(日本の警察)がすっ飛んで来た。外国人が絡んでおり、中国側にとっても事は重大で、早速本人の事情聴取とあわせ、連れ合いのよし坊の聴取となった。
途端に、昔の同僚の話が甦ってきた。昨晩のチェックイン以降の状況を分単位で説明する羽目となった。我同僚ほど厳しくは無かったのだと思うが、それでも、3回は同じ事を言わされた。どうも、下村氏本人の状況説明と合っているかどうかをチェックしているらしい様子であった。この時、体験したのは、話に時間の要素が入ってきて、しかも、昨日のことから思い出しながら説明し、間隔をを置いて又同じ説明を求められると、こちらの説明もちょっと違ったりする。例えば、最初は「8時10分にチェックインした」と言ったのが、2回目に「8時10分頃チェックインした」と言うと、そこを突かれる。一体どっちなんだ、10分か、10分ごろか、と。こちトラは、そんなのどっちでもいい話だから、やってられないが、それが通らない。
いよいよ、犯人探しが始まった。我々は仕事もあり、放免されたが、大変だったのがホテルの従業員。3日間の滞在期間、全員ホテルの外へは一歩も出られずで、我々が夕方ホテルに帰ってくると、「お前達の為に家にも帰れない」といわんばかりの「白い目」で見られる始末。
結局、犯人も見つからず、ホテル側が金額の弁償ということで決着した。
この「事情聴取」というやつで思い知らされたのは、日頃の記憶がいかに曖昧か。若い頭でもそんな状態だから、年くって、脳がドンドン老化して言った日にゃ、覚えている方が無理というもんだ。こんな目には2度と会いたくない。
参考までに、西郊賓館は、普通のホテルと違い、広大な敷地の中にある別荘のゲストハウスといった感じである。庭園もあり実にゆったりした、当時から贅沢なホテルで、現在もVIPが使っているとのこと。