よし坊のあっちこっち

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カンのカン違い

2010年07月17日 | いろいろ
カン総理は、総理になるまでは実に上手く立ち回ってきた。小鳩一見蜜月舞台を見ながら、ひたすら副総理兼財務相として、無関心を装い、危ない案件には深入りせず、熟した柿が落ちるのを待っていたかのようである。そして、辛抱の甲斐あって、小鳩が退場した後を、密かにほくそ笑みながら、念願のソーリとなった。そして、前ソーリの稚拙な外交問題処理能力のお蔭で下がった内閣支持率が一挙に戻った。ここまでは良かったが、ここで、カンは大きなカン違いをしたのではないか。

一挙に支持率がV字回復したせいで、カンは、民主党への追い風は未だ続いている、当初心配した参院選もいける、そうならば国民が値上げ已む無しに傾きかけている消費税アップの狼煙を上げてもよさそうだ、と考えたのかも知れぬ。だが、支持率は瞬間風速的にV字回復したものの、実際の風は至る所で凪状態になり始めていた。大いなるカン違いである。

よし坊も、さすがに今回の民主党は応援出来なかった。仕分けプロジェクトという見るべきものも有ったが、それ以外は落第だ。何が落第かというと、政権を獲るまでは、与党に対して、あれだけ説明責任を連呼しながら、ひとたび政権を獲るとキチンとした説明もなしに、ドンドンなし崩し的に物事を変えていく。ルール慣行の無視だ。この辺りに、国民はひょっとして第二の自民党が出来るのではないかと、危惧したのではないか。

カンは、総裁就任時に余計なことを言ってしまった。言葉を選んでソフトに言ったつもりだろうが、オザワよ、当分お前は静かにしろ、と。あれは、決別宣言の何物でもないのは明らかだ。民主党の半分近くがオザワ党になっている現実でよくも言ったものだと思うが、これも、追い風で参院選勝利予想のカン違いが言わせたのかも知れない。しかし、大失敗だろう。そこまで言う必要は更々無かったはずだ。

もう一つ、カンの失策がある。そもそも、カンのバリューは何か。それは、間違いなく、かつて厚生大臣の時に見せた薬害隠蔽の厚生省に一人果敢に挑み、大臣として見事に役人天国の闇を暴いたその手腕と実行力にある。役人を叩きのめす事が出来た稀有な大臣なのだ。これがカンの真骨頂であり、国民も期待したい力量で、人気度も決して悪くない。ここで、カンはカンたるの何かを打ち出さなければならなかった。「オザワでもない、ハトヤマでもない、オレは薬害隠蔽を暴いたカンだ!官僚主導の政治を破れるのはカンしかいない」とアピールすべきであった。日頃から官僚に対しては腹に一物をもっている国民は、全く違った視点で彼に喝采したであろう。

あのコイズミが千載一遇のチャンスを物にして、信念とも言える郵政民営化を口にし、決して引かない強い意志を顔全面に表し、国民はそのすさまじい気迫に不退転の決意を感じたから、それを支持した。アレだけの国民の支持を受ければ、官僚は沈黙するしかないのだ。カンにとっても自分をアピール出来る千載一遇のチャンスだった。オザワに触れず、消費税にも触れず、これ1点をアピールするだけで、再び追い風が吹いたかも知れない。

カンは下手を打ったものだ。オザワは簡単に舞台から消えない。今頃身震いしているのではないか。