ぼくらの日記絵・絵心伝心 

日々の出来事や心境を絵日記風に伝えるジャーナリズム。下手な絵を媒介に、落ち着いて、考え、語ることが目的です。

幻想、幻覚

2022年06月26日 | 日記

 4月1日に大きな手術をして3か月近くになる。体調体力もかなり回復し、少し余裕も出てきて当時の日記を読み返したりする。

 入院生活は厳しく、痛く、辛いものだった。そして医療スタッフの親切で優しい対応が救いであった。看護婦さんが天使に見えるというのは本当のことだ。今となって、病気を抜きにして、また病室に戻りたいと思えてくる。不思議なことだが。

 医師から、術後4日目くらいに、幻想、幻覚があるかもしれないといわれていた。

 それはあった。幻覚はかなりはっきりしたものだった。そのうちの一つは・・・・。

 病室の壁は漆喰壁でできており僅かに凹凸がある。それを見ていると凹凸でできた模様が動き出し人間の姿に変わり、群衆はざわざわと動き出すのだ。ちょうど、ルノアールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の絵のように見える。そのうち、紙風船が現れる。紙の灯篭のようなものも出てくる。僕は、そこで、自分の意識がはっきりしていることを確認し凝視する。絵は鮮明なままだ。それでは、と、その紙風船をつかもうとする。すると、さっときえてしまった。背景の群衆はそのままざわめいている。

 ・・・・これは幻覚なのだと思いそれを楽しんでいた。それ以外にも普通では体験できない幻想、幻覚があったが、入院生活のなかでのスパイスであり、懐かしいとさえ思う。

  2022年6月25日  岩下賢治

 
 
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