畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

連載222「早春の洪水」その1

2020-03-13 04:58:33 | 自然

        早春の洪水(その1)

 有名な雪国の祭り「裸押し合い」が終わる、三月の初めから毎年線路を守る保線が、悩まされる事があった。

時ならぬ春の洪水である。


 特に注意を要する川があったが、その川は山間から流れ出し信濃川の支流の、魚野川に注ぐまで総延長は、

十数キロあるか無しかと思われる小河川である。 

夏場は上流で伏流水となり長さ十数メートルの鉄橋(橋梁の前後の河川改修がなされるまでは数メートルの小さな橋だった。)

の下では水の流れないのが常の何の変哲も無い川である。


 山間から流れ出た土砂で河床が徐々に上昇した典型的な天井川でもあり、橋は線路の勾配の頂点にもなっている。

この川は冬、特に厳冬期は渇水状態となって水の流れは全く無くなる。そこには降り積もる雪のみならず、

吹雪の雪も川の窪み目がけて吹き込み、川としての姿も分らない程になってしまう。


 本流魚野川の水量が最も安定するこの頃は、風物詩「カジカ落とし」が楽しめる。

身を刺すような冷水の川に二人で入る。一人は頑丈な板にしっかりとした、

木の棒二本を縦に打ちつけた道具を持ち、上流に立つ。

 

 川にその板を入れ、水圧を利用してカジカの潜んでいる石を転がし起こすのだ。

その下流で網を持つ相棒が後ずさりしながらカジカを捕まえる。愛嬌顔をした小魚だが、

塩焼きをコップに入れ熱燗を注ぐと、酒飲み垂涎の「カジカ酒」の出来上がりだ。

     (続く)

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