早春の洪水(その3終わり)
配備が決まり入ったばかりの、新鋭小型除雪機「スノーロータリー」を手配して、堤防から川に入れた。
作業は順調に進み橋梁の前後を中心に除雪が終わった。
その日の直後、不安は的中し典型的な「台湾坊主」が発生した。
「災害警備」が発令され、現場に行った人の話によると、恐ろしいばかりの水量が押し寄せ、
橋梁に近付く事さえ出来なかったそうである。
上流の雪が大きな塊となって流れてきて、そのまま線路を直撃したらと、心配になるほどでもあったとか。
それでも除雪の効果で、線路上まで雪解け水が上がることも無く運転に対する影響は、最小限で済んだという。
結果として上司からお褒めの言葉を頂く結果となった。
その川は上流の地区名から「名木沢(なぎさわ)」と名付けられていたが、保線人は毎年泣かされる事から、
密かに「泣き沢」と呼んでいたのである。
(終わり)