スカルノ・ハッタ空港に日航機の車輪が触れた時に、とても嬉しい気持ちになったゆきたんくである。初めてのインドネシアである。10年間お預けだったインドネシアである。入国審査を終えて空港出口に向かうと、愛想よく話しかけてくる人、人、人。「荷物を持ちますよ」とインドネシア語で言っているのだろう。ところがゆきたんくとおーちゃんは力があるので「大丈夫ですよ」とにこやかに対応したのだが、中国での物売りと同じでこは任せてチップをあげることが習慣のようだ。異国の文化をよく理解していなかったのがいけないようだ。
義姉が迎えに来てくれるというので心強いのだが、途中でタクシーの呼び込みが大きな声で「タクシー」と言いながら手招きする。旅の本にシルバーバードとブルーバードは安心と書いてあったので、それ以外のタクシーは怖いと思っていた。義姉によると「そんなことはない。心配ならばシルバーにしようか?」と言ってタクシーをひろった。
高速道路を走っている時に北京で見たような近代的な建物がズラッと並んでいるのが見えた。かなり高層である。地震が日本に比べて少ないせいだろう。なんて話をしていたら、最近では地殻変動の影響のせいか、ジャワ島でも大きな地震があるそうだ。
アパート(どう見ても超高級マンションなのだが、地元ではアパートと呼ばれている。)に着いた。二重、三重のセキュリティがあり、関係者以外は一番最初のゲートで入場不可である。日本で言う新宿辺りのデパートの駐車場のような大きな駐車場で車を降りる。通路の脇が大きな池になっている。大きな魚が泳いでいると思ったら人だった。住人が自由に泳げるプールがあるのだった。全部で六棟ある建物の一つに着き、エレベーターに乗る。扉が開くとそこはもう義兄の家の入り口であった。分かりますか?エレベーターのドアの向こうには義兄の生活するフロアーしかないということを。
大きな窓から景色を見る。素晴らしい。遠くにはモナス(独立記念塔)も見える。「ああ、ついにジャカルタに来たんだなあ。」と背伸びしてふと見ると、近代的なビル郡の手前には赤瓦の屋根で、壁がところどころ崩れた家屋がたくさん立ち並んでいる。夕方なるとイスラムのお祈りも聞こえ始めた。近くにはモスクがあるという。
ここインドネシアでは貧富の差が大きい。金持ちはものすごい金持ちだが、貧しい人はすごく貧しい。そのコントラストが窓から広がる景色の中に見えるのだ。
その後旅行中には、日本では考えられないような体験をすることになる。イスラムでは、「富む者は、そうでないものに施しをする」ことが教えにあるそうだ。とりわけ驚いたのは、世界遺産の観光地の入場料が日本人料金というのがあって地元民の十倍の値段ということだ。ここジャカルタでも日本人は金持ちの象徴のようだ。繁華街などの場所では、周囲の人たちの視線が気になったが生きるのに必死な人たちのエネルギーを肌で感じることもできた。それは差がないと生まれないのかもしれない。
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