遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

安倍氏なき日本 対米、対中外交のありかたは?

2022-08-07 01:33:55 | 日本を復活させる
 安倍晋三氏は、日本の外交・安全保障政策にこの半世紀で最も野心的かつ大きな変化をもたらした人物だ。
 首相在任中、日本の安全保障において、先手を打って行動する姿勢を「安倍ドクトリン」で明確に打ち出した。
 だが、同氏の主要な目的の1つは達成されなかったと、安倍氏を追悼しておられるのは、マサチューセッツ工科大学国際研究センター所長のリチャード・J・サミュエルズ氏。

 
安倍氏なき日本、重要性増す米中とのバランス - WSJ By Richard J. Samuels 2022 年 8 月 1 日

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リチャード・J・サミュエルズ氏は、マサチューセッツ工科大学国際研究センター所長。著書に「特務(スペシャル・デューティー) 日本のインテリジェンス・コミュニティの歴史」がある。
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安倍晋三氏は、日本の外交・安全保障政策にこの半世紀で最も野心的かつ大きな変化をもたらした人物だ。2006~07年、さらに2012~20年に首相を務めた同氏は、7月8日に暗殺された。首相在任中、日本の安全保障において、先手を打って行動する姿勢を「安倍ドクトリン」で明確に打ち出しただが同氏の主要な目的の1つは達成されなかった。1947年に日本が米国に押しつけられた憲法の第9条(いわゆる平和条項)を改正できなかったことだ。そこには戦争放棄、および国の主権としての「戦力」の不保持が定められている。

 
安倍氏は憲法を解釈し直し、近隣諸国や有権者を安心させるために日本が冷戦時代に自ら課した制約の多くを取り払うことで、いくつかの目的を達成した。日本で初めて機能する国家安全保障会議を立ち上げ日本が相応の防衛省を持てるようにした。また、自衛隊が苦境に立たされることなく攻撃用兵器を配備できるようにし、武器の輸出や、有事の際の米軍支援を可能にした――従来の憲法解釈では不可能とされていたことだ。

 
同時に安倍氏は、日本の対米依存度を低下させることに取り組んだ中国の台頭を目の当たりにし、米国が相対的に衰退することで当てにならない同盟国となる可能性を危惧したことが理由であるのは間違いない。そこで日本の戦略的立場を強化するため、日米とオーストラリア、インドの4カ国による安全保障協議の枠組みを作り、オーストラリアや英国、フィリピンとの間で2国間戦略パートナーシップを構築した。

 軍事・経済両面で世界をリードする
2大国の間で適切な距離を見つけることは、日本がこの10年余り直面してきた最も重要な戦略上の選択だった。この「ゴルディロックスの課題」――米中両国と「過不足なく程よい距離」を生み出すこと――を抱える日本は、常に気を張り詰めてきた

 第2次世界大戦後、連合国軍の占領下に置かれた日本は、外交・安全保障政策の土台として、アジアにおける米国の優位を受け入れざるを得なかった。
米国が保証する安全保障に便乗することは、日本の地位を損なったものの、悪い取引ではなかった米国の支援は、日本の驚異的な技術的・経済的復興を助け、日本の自由民主主義を確固たるものとした。日本は世界2位の経済大国になっただが現在は、日本がかつて見下すような態度で占領した中国に追い抜かれている。結果としてアジアのパワーバランスが変化し、国家安全保障問題は日本の政治において重要度が増した。

 
中国の国力は今や日本のそれをはるかに上回る。国内総生産(GDP)は日本の2.5倍、軍事費は5倍だ。一方で日本の為政者は、ドナルド・トランプ前大統領の予測不能な要求やジョー・バイデン大統領のアフガニスタン撤退をめぐる混乱を目にし、米国が長年アジアで保持してきた影響力に対する信頼を幾分なくしている

 このような状況下で、
日本の政策立案者やブレーンなどは大きく4つに分類される考え方を示してきた。米中いずれとも近すぎる関係になることを望まない人々は、日本が自主防衛を強化すべきだと主張する。そうなれば、日本は独立した軍事力を獲得し、それを維持する費用とリスクを背負わなければならないが、結果的に、挑発的な中国と注意力散漫な米国を両にらみする必要性から解放される。つまり日本は「自助努力」の世界で独り立ちすることになる。これは、崇高な志を抱き、率直な物言いで人気のあった故石原慎太郎・元東京都知事が提唱した考えだが、国内で幅広く支持されてはこなかった

 日本にとって
第二の戦略的選択肢は、中国を受け入れる形で自国のジレンマを解消することだ。この考え方は、世界で最も新しい経済大国との強固な関係によって得られる利益を重視する、経済界の一部の人々を引きつけてきた。日本は中国を中心とする東アジア経済圏の構築に寄与し、その恩恵を受けるチャンスを逃さないというものだ。日本は10年以上前、鳩山由紀夫首相の下でこの方向に傾いただが中国は一段と力を増して挑発的な態度を強めており、そのような協調路線は妥当性を失いつつある

 中国の経済成長がもたらす恩恵よりも
中国の覇権を恐れる人々は、第三の選択肢に引きつけられる。それは、米国とより緊密な関係を結ぶことだ。安倍氏はこの路線を好んだ。日本が独力では中国との均衡を維持したり、北朝鮮を抑止したりすることはできないと判断する軍事的リアリスト(現実主義者)と位置づけられる。こうしたリアリストは、アジアにおける米国の力は安全かつ安定しており、不可欠とさえ考えている。ひとまず疑念は棚上げにし、米国の保護に賭ける姿勢を強めることで、米国を味方につけ、米国のアジアでの支配的な地位を守りたいという考えだ。そのためには防衛費を増やし、韓国と協力するとともに、台湾統一を目指す中国の脅威にどう対応するかをオープンに議論する必要がある

 日本の政策立案者やブレーンが全員、日本は本当にどちらかを選ばなければならないと思っているわけではない。与党・自民党内で
岸田文雄首相が率いる派閥(林芳正外相もそのメンバー)は、中国との経済関係を改善させるために、米国との関係を犠牲にする必要はないとの立場だ。双方の関係を維持することで日本が得られるものは大きい。対中関係の健全化は2017年に米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から突然離脱した際のようなショックから日本を守る可能性がある。一方、強力な日米安保体制は、中国の軍事的威圧から日本を保護することになる。これらの関係をバランスよく保つには、中国の台頭が日本経済に利することと、米国の保証する安全保障が揺るぎないこと同時に確信する必要がある

 日本の指導者は皆、この中間路線でうまくやろうとしてきた。
両方のいいとこ取りをしたいと思わない者がいるだろうか安倍氏でさえ、新型コロナウイルス流行前には中国の習近平国家主席に対話の呼びかけをした。実際、最近の日本の首相――首相を目指している人も――はそろって戦略の振れ幅が大きい中国に傾いたように見えた鳩山氏はそこから態度を後退させた。岸田首相は現在、軍事的リアリストを装っている

 
日本の意思決定者にとって決定的な瞬間に、安倍晋三氏は舞台から去った。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、多くの人々が日本の安全保障への影響について心配している。ロシアの攻撃が始まった数日後、安倍氏は米国との核抑止力の共有を議論すべきだと提案した。それから程なくして日本の評論家や政治家は、ウクライナから「学ぶべき教訓」を相次いで発表した。それらは国家安全保障戦略や新防衛ガイドラインに盛り込まれる可能性があり、日本の安全保障の姿勢が年内に成文化されるだろう

 
中国を正しく理解し、米国を味方につけておくことは、日本のゴルディロックスの課題に当面うまく対処する方法であり、安倍氏の並外れた野心と功績の証しとしてふさわしい

 安倍氏は憲法を解釈し直し、近隣諸国や有権者を安心させるために日本が冷戦時代に自ら課した制約の多くを取り払うことで、いくつかの目的を達成した。
 日本で初めて機能する国家安全保障会議を立ち上げ、日本が相応の防衛省を持てるようにした。
 自衛隊が苦境に立たされることなく攻撃用兵器を配備できるようにし、武器の輸出や、有事の際の米軍支援を可能にした。
 同時に、日本の対米依存度を低下させることに取り組んだ。米国が相対的に衰退することで当てにならない同盟国となる可能性を危惧したことが理由。
 日本の戦略的立場を強化するため、日米とオーストラリア、インドの4カ国による安全保障協議の枠組みを作り、オーストラリアや英国、フィリピンとの間で2国間戦略パートナーシップを構築した。

 「ゴルディロックスの課題」――米中両国と「過不足なく程よい距離」を生み出すこと――を抱える日本は、常に気を張り詰めてきた。
 米国が保証する安全保障に便乗することは、日本の地位を損なったものの、悪い取引ではなかった。
 日本は世界2位の経済大国になった。だが現在は、中国に追い抜かれている。
 
 日本の政策立案者やブレーンなどは大きく4つに分類される考え方を示してきたと、サミュエルズ氏。
 米中いずれとも近すぎる関係になることを望まない人々は、日本が自主防衛を強化すべきだと主張する。日本は「自助努力」の世界で独り立ちすることになる。これは、崇高な志を抱き、率直な物言いで人気のあった故石原慎太郎・元東京都知事が提唱した考えだが、国内で幅広く支持されてはこなかった。

 第二の戦略的選択肢は、中国を受け入れる形で自国のジレンマを解消すること。
 世界で最も新しい経済大国との強固な関係によって得られる利益を重視する、経済界の一部の人々を引きつけてきた。日本は10年以上前、鳩山由紀夫首相の下でこの方向に傾いた。だが中国は一段と力を増して挑発的な態度を強めており、そのような協調路線は妥当性を失いつつある。

 中国の経済成長がもたらす恩恵よりも中国の覇権を恐れる人々は、第三の選択肢に引きつけられる。米国とより緊密な関係を結ぶことだ。安倍氏はこの路線を好んだ。
 こうしたリアリストは、アジアにおける米国の力は安全かつ安定しており、不可欠とさえ考えている。

 米国を味方につけ、米国のアジアでの支配的な地位を守りたいという考えだ。そのためには防衛費を増やし、韓国と協力するとともに、台湾統一を目指す中国の脅威にどう対応するかをオープンに議論する必要がある。 

 与党・自民党内で岸田文雄首相が率いる派閥(林芳正外相もそのメンバー)は、中国との経済関係を改善させるために、米国との関係を犠牲にする必要はないとの立場だ。
 双方の関係を維持することで日本が得られるものは大きい。関係をバランスよく保つには、中国の台頭が日本経済に利することと、米国の保証する安全保障が揺るぎないことを同時に確信する必要がある。
 日本の指導者は皆、この中間路線でうまくやろうとしてきた。
 安倍氏でさえ、新型コロナウイルス流行前には中国の習近平国家主席に対話の呼びかけをした。中国に傾いたように見えた鳩山氏はそこから態度を後退させた。岸田首相は現在、軍事的リアリストを装っている。

 日本の意思決定者にとって決定的な瞬間に、安倍晋三氏は舞台から去った。
 ロシアの攻撃が始まった数日後、安倍氏は米国との核抑止力の共有を議論すべきだと提案した。
 それから程なくして日本の評論家や政治家は、ウクライナから「学ぶべき教訓」を相次いで発表した。
 日本の安全保障の姿勢が年内に成文化されるだろう。
 
 中国を正しく理解し、米国を味方につけておくことは、日本のゴルディロックスの課題に当面うまく対処する方法であり、安倍氏の並外れた野心と功績の証しとしてふさわしいと、サミュエルズ氏。

 蛇足ですが、ゴルディロックスという言葉は、初めて勉強させていただきました。
 バイデン大統領が、北京冬季五輪への「外交的ボイコット」の協調を自由主義陣営各国に求めた時に、逡巡し対応が遅れた岸田政権の二股外交は、ゴルディロックスではない??
 ゴルディロックスとは? | 経済用語集



 # 冒頭の画像は、増上寺で安倍元首相の遺影に手を合わせる一般弔問者




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