遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

安倍政権の中国包囲網戦略は成るのか

2013-05-08 23:57:17 | 日本を復活させる
 米国・オバマ政権のアジア回帰・中国包囲網構築の動きに揺らぎが垣間見え、安倍政権の右傾化を牽制する声が聞かれるようになってきた今日、日本の外交政策の進め方にも独り立ちした独自性が求められます。
 安倍首相は、豪州、インド、日本、ハワイ(米国)がダイヤモンドを形成して東アジアの安全を守るという英語論文「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド」を就任直後に発表していることは諸兄がご承知の通りです。
 日本の安倍政権が能動的に関係各国と連携した、東アジアの安全に向けた、中国包囲網の形勢が、独り立ちした独自性の外交の答えのひとつとなりますが、その現状と可能性はどうなのか。
 たまたま日経と産経がこのテーマをとりあげています。
 

安保強靱化へ動く安倍政権 中国包囲、露印と共闘 (5/8 産経 【湯浅博の世界読解】)

 オバマ政権がアジア回帰のピボット(軸足移動)政策を打ち出しても、中国は口先だけとみて南シナ海でも東シナ海でも「力による支配」を緩める気配がない。世界最強の米国もなめられたものである。そんな折に、安倍晋三首相はロシアから北回りの首脳外交を進め、日米同盟の土台の上に、もう1本の筋交いを通して安全保障の強靱(きょうじん)化をはかった。
 安倍首相はすでに、今年1月にベトナム、タイ、インドネシアの東南アジアを歴訪して、中国が南シナ海でふるう腕力に対して「法とルール」で立ち向かう決意を示していた。
 昨年末に国際NPO団体のサイトに寄稿した英語論文「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド」では、「
豪州、インド、日本、ハワイ(米国)がダイヤモンドを形成してこれを守る
」と宣言している。
 
日本にとり重要なのは、北のロシアと南のインドとの提携
である。中国が心置きなく海軍力を増強してこられたのは、南北の大陸国家からの脅威が薄れてきたからである。
 今回、安倍首相が訪露した背景には、ロシア側により大きな理由があった。極東アジアに対する中国の影響力の拡大である。2010年2月の「ロシア軍事ドクトリン」で、欧州で紛争の可能性は低下したが、極東アジアでは「一連の正面においてロシアへの軍事的脅威が増大している」と表現していた。「一連の正面」とは、4300キロの国境をもつ中国である。プーチン大統領の就任直後の大統領令でも、外交は「アジア重視」であり、軍事は「海軍重視」にシフトしていた。
 ロシアは、今年3月に中国の習近平国家主席が訪露した際も、対日戦勝利の「歴史認識を共同宣言に書き込もう」との申し入れをやんわりと拒否している。
 安倍政権の外交チームは、この中露の仲たがいを見て素早く動いた。安倍首相は首相として10年ぶりの公式訪露につなげ、北方領土交渉の仕切り直しを宣言した。プーチン大統領が昨年3月に柔道に擬して北方領土の「ヒキワケ」と、北方四島の分割解決論で誘っていた。
 しかし、ロシアが終戦後に北方領土を奪取した事実は消えず、四島一括返還がない限り真の日露和解はありえない。
 
安倍首相は隔たりの大きい北方四島の返還交渉を続けるとして、むしろ、ロシアとの外務・防衛閣僚会議(2プラス2)創設で対中牽制(けんせい)に重きを置いた
のではないか。これまでの「2プラス2」は、米国や豪州という同盟国級との間にしかなく、3つ目が平和条約も結んでいない準敵国である。主要敵を前にロシアン・カードを切った。
 ちょうど同じ頃に、小野寺五典防衛相が訪米して、ヘーゲル国防長官と初会談を行い、尖閣諸島に対する米国の関与で合意を引き出していた。
 もっとも、
安倍政権はプーチン大統領のロシアに心を許すべきではない
。ロシアもまた、日本を天然ガスの有力売り込み市場と見ており、対中牽制のカードに使っている。状況が変われば、カードを変える国益のリアリズムである。
 南のインドは、今月末にもシン首相が来日する予定で、彼らが導入を目指す新幹線や、原子力協定などを協議する計画だ。
安倍政権はインドとも「2プラス2」政策に踏み切るか中国に3方面作戦を強いる戦略であり、インディアン・カードは価値が高い。(東京特派員)

 
日本が軸となる「対中国経済包囲網」は可能か  :日本経済新聞

 安倍晋三首相がロシア、モンゴルを訪問した。台湾とは漁業権を巡る協定を結び、ミャンマーから野党指導者のアウン・サン・スー・チー氏を呼び寄せた。中国から見れば日本が周辺国・地域との関係強化を急ぎ、対中国包囲網を築いているように映る。だが、経済の世界では日本、韓国、台湾、中国が一体となった緩やかな経済圏を構成している。グローバル経済の時代に、政治と経済を重ね合わせて考える地政学的な発想はどこまで有効なのだろうか。
<中略>

 経済と政治は絡み合いながら進む。中国は人件費が高騰し、サムスンはスマートフォンの生産拠点をベトナムに築いた。台湾の鴻海もベトナムに拠点を設けている。対中経済依存度が日本よりも高い韓国と台湾が中国依存の修正に動き出した
。台湾の昨年の対中直接投資額は前年比2割減となったが、対東南アジアは8割も増えた。
 中国の経済成長は2ケタ台の高速成長から7%台に鈍化している。成長市場の魅力だけで周辺国・地域をつなぎ留めるのは難しくなる。もし、韓台の電子産業の投資先が中国から東南アジアに移ることになれば、中国抜きの電子経済圏も可能となる。
中国が能力を隠して外国と争わない「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ぶ外交政策を修正すれば、その膨張志向が日本だけでなく、韓国や台湾、それこそインドまで敵に追いやってしまう
。そうなれば地政学的な発想による経済の地図の組み替えが起こり得る。
 企業が自発的に結びついてできた経済圏の地図、政治がトップダウンで形づくる地政学の地図。2つの地図は相互に作用しながらそれぞれ変容していく。ビジネスマンや投資家も忘れてはならない視点だろう。


 どちらも今日までの安倍外交が、中国周辺国との関係強化のために動いていることを高く評価しています。
 中国側も、日本による包囲網作戦を意識しているとも推察してもいます。
 
 産経・湯浅氏の記事では、北のロシアと南のインドとの連携が最も重要と指摘されています。たしかに、この両大国の動向は、それぞれが互いに長い国境線を接していて警戒をしあっているだけに中国にとっては配慮に割く力は大きなものを必要としますね。
 <カシミール>国境地帯で対峙、中印両軍が撤退 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 ロシアとの首脳会談の成果は、北方領土より 2+2 の設定が重要と指摘されている点は、遊爺と同じ評価です。
 中国に対しては、日露ともども大きな抑止力となります。
 そこから、インドとの間でも、2+2の設定が出来れば、日本の中国包囲網が成功したと見せると言う指摘は、判りやすい結論ですね。
 今回のシン首相の来日時に準備されている話は聞こえてきませんが、近い将来に設定されることを願います。

 日経の方は、政治の側面と経済=企業活動の側面の両面から語っています。
 中国経済の減速化が進み、韓国・サムスンや、台湾・鴻海の脱中国が進めばとか、中国政府が「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ぶ外交政策を修正すればといったたらればの前提を必要としています。
 従中卑日の度合いを強める韓国は、中国への依存度をますます高める傾向にあり、少なくとも韓国が中国包囲網に参加することはありえません。北の暴走もあり、ウォン高・円安もあり、中国への依存度は政治でも経済でも高まるばかりです。
 領土問題でも、中国の共闘の呼びかけに、ロシアは消極的であるのに対し、積極的に加担しています。
 朴氏の初の訪米でも、オバマ大統領が、日米韓の連携を唱えるのに対し、米中韓の連携を唱え(オバマ大統領に反発する様なコメントの事前交渉はどうなっているのでしょう?)、日本の歴史認識を批判する始末です。
 
【米韓首脳会談】対日配慮で温度差 朴氏は連携国に加えず「正しい歴史認識」要求 - MSN産経ニュース

 もっとも中国の属国への回帰を指向する韓国が、包囲網に参加するとは日本政府も考えてはいないでしょうし、眼中にはないでしょうから、影響はありませんし、企業競争では、サムスンが日本企業に追いつき追い越した歴史が、中国企業と逆の立場で展開されようとしていますから、中国依存を強めるほど、将来が暗くなるとも言えます。

 安倍政権の中国包囲網外交は、順調な滑り出しをしていますが、政治的には、ロシアとインドとの連携。経済的には、中国へ投資している各国の企業の投資動向が大きな山と言えます。
 今後の動向に注目ですね。



 # 冒頭の画像は、就任後初訪米の朴大統領と会談するオバマ大統領。安倍首相の訪米時の態度との明らかな差が、憶測をよんでいますね。




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