今回は、政権の移行に向けた、現政権の政策の引き継ぎと、格差が広がり人権問題にも煙が立ち始めた中での中国社会主義思想の立て直しが命題で、小平依頼の改革開放経済の、習近平政権への伝承が胡錦濤・温家宝両氏の狙いでした。
一方、最も注目されたのは、中国共産党中央政治局常務委員会の新政権での椅子取り争いが表面化した、薄煕来重慶市党委書記の命運の行方でした。
事態の進展は思いのほか速く、温首相が全人代終了後の会見で、薄煕来氏を厳しく批判したとおもったら、薄煕来氏の重慶市共産党委員会書記の職を解任しましたね。
【北京=大木聖馬】中国の温家宝首相は14日、第11期全国人民代表大会(全人代=国会)第5回会議の閉幕後の記者会見で、政治改革の必要性を改めて強調した。今秋の共産党大会で胡錦濤総書記から権力を引き継ぐ習近平国家副主席ら新指導部に課題を託したものだが、利益集団化した党内からの抵抗も強く、新指導部による改革の実現も容易ではない。
「政治体制改革の成功がなければ、経済体制の改革も徹底できず、これまでの成果も失うだろう」。全人代閉幕後の記者会見が今回で最後となる温首相は、政治改革の必要性を例年以上に強調した。
温首相は政治改革について、5日の政治活動報告の中で「法に基づいて民主的な選挙、監督を実行し、人民の知る権利や表現・監督する権利を保障する」と説明している。
共産党は一党独裁体制の堅持を掲げて直接選挙を導入せず、権力が集中する構造的問題を抱えているが、国民やメディアによる監視が働かないため、自浄能力が欠如している。「党は法をも超越した存在となり、党自体が利益集団化している」(北京の知識人)状況で、国有企業などの既得権益層が公共事業などの利権を独占し、所得格差の拡大や、党員や官僚の汚職を生む要因となっている。
温首相が会見で「(所得)分配や司法の不公平はいだに群衆の不満を引き記している」と述べたのも、胡政権下でこうした問題を解消できなかったことを認めたものだ。
温首相は今回、政治改革の中で「党と国家の指導システムの改革」の必要性を特に強調した。小平氏が、改革・開放路線に転じて間もない1980年に示した改革方針で、当時も党内に存在した「官僚主義や権力の過度の集中などの特権現象」の解消を目指したものだ。温首相は、習氏らの新指導部に改革開放を進めた氏の理論の原点に戻り、政治改革を促したと言える。
温首相は近年、こうした政治改革を訴え続けているが、党内で孤立しているとの見方もある。
共産党筋は、こうした温首相の改革思考を受け継ぐ次世代指導者として、習氏を支える次期首相の最有力候補の李克強筆頭副首相や、最高指導グループの党政治局常務委員会入りが取りざたされる汪洋広東省党委書記の名を挙げる。いずれも胡氏の政治基盤である共産主義青年団出身だ。
だが、改革派の胡耀邦・元総書記の下で働いた胡錦濤氏も政治改革には取り組めず、改革は後退した。高級子弟グループ「太子党」に属する習氏が改革に取り組むのはさらに難しいとみられ、李氏や注氏も「温首相のように言葉だけで終わるのでは」(同筋)との声も出ている。
温首相重慶市トップに苦言 「事件を教訓にすべきだ」
【北京=加藤隆則】温家宝首相は14日の記者会見で、重慶市の王立軍・前公安局長が米総領事館に駆け込んだ事件について、「重慶市の歴代政府と多くの市民は、改革建設の事業で実績を上げたが、現在の市共産党委と市政府は必ず反省し、真剣に事件の教訓をくみ取るべきだ」と、異例の厳しい口調でトップの薄煕来同市党委書記らを批判した。
同事件については、13日に閉幕した人民政治協商会議の趙啓正報道官が2日、会見で「孤立して発生した事件」とだけ言及。温首相はさらに踏み込んで上層部の責任を追及したもので、「事件の調査と処理の結果は必ず国民に回答する」と強調した。
温首相は、文化大革命を発動した極左派の誤りも指摘。薄書記が推進した「唱紅(革命歌を歌う)」運動を暗に批判したものだとる見方も広がっている。
薄書記は9日、国内外ディアの取材を受け、「監督責任は感じているが、(事件は)予想もしなかったと述べた。
中国共産党、重慶市トップの薄氏解任 権力争い激化 :日本経済新聞
温家宝首相は、全人代閉幕後の記者会見が今回で最後となるのでした。
政治改革についての、「法に基づいて民主的な選挙、監督を実行し、人民の知る権利や表現・監督する権利を保障する」と言う考えは、今の中国が真に世界のリーダー国の仲間入りをするには、不可欠のことがらで、このことに力を入れる政治家は、胡耀邦氏などとともに稀有な存在でしょう。
ですから、毛沢東を原点とするのではなく、小平氏を原点としようと言っているのですね。
習近平氏は、訪米時に、現政権の路線を引き継ぐと表明していました。
しかし、江沢民派や軍部の支持で次期国家主席の座を射止めた習氏が、いつ江沢民流(上海グループ)の旧い政治手法に戻り、既得権維持や、反日での国民の不満を逸らす手法に陥りかねないとの危惧からでしょうか、しつこいほどの、改革・解放経済維持の協調ぶりと受け止められます。
この点は、遊爺もかねて危惧し注目しているところです。
ただ、実勢は習近平氏(=太子党&江沢民派、軍部推薦)に流れていて、温家宝氏はレームダック化してるのですから、温家宝氏のいうことを継承できる勢力がどれだけ残るかにかかってきます。
そこで、党中央政治局常務委員会の九つの椅子取り争いの行方が注目されることになるのですね。
薄氏の重慶市党委員会書記の解任は、党中央政治局常務委員会への就任は困難となり、胡錦濤派閥(温家宝氏は無派閥)が巻き返したことになります。
新政権発足に向け、ますます目が離せられません。
温家宝氏の欠ける中国指導部に危惧を抱いているのは、遊爺だけではない様です。
[FT]退任する温首相の警告に耳を傾けよ(社説) :日本経済新聞
# 冒頭の画像は、ご当人にとって最後の全人代を終え記者会見する温家宝首相
雪景色 撮影場所; 六甲高山植物園
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