習近平のかたくななゼロコロナ政策と、不動産バブル等の経済不安。揺れる習近平政治に対し、国民の不満が募っている中国。
中国経済を米国に追いつき追い越す迄の基礎を創った鄧小平の流れを継ぐ、共青団派の李克強首相への期待が高まっているという情報を見聞する機会が増えています。
秋の共産党大会での人事を決めると言われる、現役指導部と長老とが集う「北戴河会議」。
ここでも李克強への期待のふくらみがみられる節があるとか。。
しかし、長老たちによって習近平続投が阻止されることはない。長老たちが一枚岩になって習近平を辞任に追い込むようなことは起きないと、ベトナム・ビングループ主席経済顧問の川島博之氏。
今年の北戴河会議は長老たちが続投以降も自分や自分の一族が安全に暮らせるように、習近平に懇願する場になるのではないかと。
北戴河会議に向けた長老たちに依る李克強待望論は、自分や自分の一族が安全に暮らせるように、習近平に懇願する為に投げた牽制球と見るべきだと川島氏。
長老たちは練達の政治家であり馬鹿ではない。そして、現在の中国共産党が置かれた状況をよく理解している。
天安門事件、あれから33年が経過したが、彼らはそれをよく覚えている。あの事件をうまく乗り切ったからこそ今の地位があると。
天安門に集まった同胞に発砲し多くの人の恨みを買った政権が、33年間も存続した。その理由は、共産党が経済を急速に発展させたことに尽きる。鄧小平が考え出した「政治は共産主義、経済は資本主義」というキメラのような体制は中国に奇跡をもたらしたことは、諸兄がご承知の通り。
このシステムが成功した最大の理由は、土地が国有化されていたことにあったと川島氏。
都市近郊の開発が進むと農地の価格が高騰した。その利益を地方政府が独占的に手に入れた。現在、中国のGDPの3割は不動産業に由来すると。
ただ、このシステムに少々悪乗りし過ぎた。
バブルが全国に広がってしまった。それはソフトランディングが不可能な状態に陥っていると川島氏。
日本は1990年代初頭にバブルが崩壊するとまもなく金融危機に襲われ、その後、「失われた20年」と呼ばれる停滞期に突入した。中国の不動産バブルは日本をはるかに超えている。そうであるならば、中国は日本が経験したよりもはるかに深刻な経済危機に見舞われるはずだと。
バブル崩壊での経済危機は、日本では自民党政権から、社会党の村山政権への政権交代を産んだ。
銃口によって天安門事件を乗り切った長老たちは、なんとしても現体制を維持したい。
経済成長という飴によって民衆を従わせることができなくなった現在、鞭によって民衆を従わせるしか方法がない。習近平に続投させて、より統制を強化する。これが不動産バブルが崩壊した後も、共産党政権が存続する最善の方策である。
同時に外交では民衆の心の中に潜む西欧コンプレックスを刺激する。
民衆に「中国の夢」を語り、米国との対立を演出すれば、民衆に夢を与えるとともに非常時を認識させることができる。
非常時なのだから勝手な言論は慎むべきだ。戦前の日本も「贅沢は敵だ」や「欲しがりません勝つまでは」などの標語を作って、民衆を抑え込んだが、非常時の演出は政権の基盤強化に有効であると川島氏。
もし李克強が共産党総書記になって習近平の極左路線を否定するような政策を行えば、民衆が自由に発言するようになり、ゴルバチェフの出現によってソ連が崩壊したように中国共産党政権も崩壊する可能性がある。それは長老が最も恐れる事態。
だから長老たちは、本音は習近平続投を支持している。
そして共産党が存続するためには、自分たちが持っている利益を民衆に渡す必要があることも、頭では理解している。格差是正は必要だ。だがそれでも自分の利権は守りたい。それが人の性というものであろう。そんな長老の心理が李克強待望論という牽制球を生み出したと川島氏。
今後、習近平の続投はさしたる混乱もなく決まるはずだ。そして続投が決まった習近平は国内では締め付けを強化する。また対外的にはさらなる強硬策をとる。GDPの3割を占める不動産セクターが崩壊し金融危機が発生しかねない状況下において、それは中国共産党が生き延びるための最良の方法であると。
毛沢東の専制政治が招いた天安門事件。
その再発防止として鄧小平が産み出した集団指導体制と定年制。そして、手本にした戦後の日本復興を追い抜いて、米国に迫り対峙するまでになった中国経済と、その経済の恩恵に裏打ちされる軍事力増強と覇権拡大。
党大会の年に67歳以下なら留任、68歳以上なら引退という「七上八下」のルール。
18年の憲法改正で国家主席の任期制限の規定は撤廃されており、習氏は明文化されていない定年ルールを破って続投することが確実視されている習近平。
定年ルールがあいまいになることで、習氏の終身制につながる可能性も増す。
習政権が長期化することで歴史が繰り返される恐れもあると指摘されているのは、産経・三塚氏。
毛沢東時代への回帰を目指す習近平。
経済発展を支えた不動産バブルの崩壊、新型コロナ禍で世界の工場のサプライチェーンの危うさから、脱中国依存で脱投資が進む中国。
習近平の続投は、吉とでるか、凶とでるか。要注目ですね。
# 冒頭の画像は、習近平と李克強
睡蓮
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA
中国経済を米国に追いつき追い越す迄の基礎を創った鄧小平の流れを継ぐ、共青団派の李克強首相への期待が高まっているという情報を見聞する機会が増えています。
秋の共産党大会での人事を決めると言われる、現役指導部と長老とが集う「北戴河会議」。
ここでも李克強への期待のふくらみがみられる節があるとか。。
しかし、長老たちによって習近平続投が阻止されることはない。長老たちが一枚岩になって習近平を辞任に追い込むようなことは起きないと、ベトナム・ビングループ主席経済顧問の川島博之氏。
今年の北戴河会議は長老たちが続投以降も自分や自分の一族が安全に暮らせるように、習近平に懇願する場になるのではないかと。
にわかに浮上した李克強待望論、「北戴河会議」に集う長老たちの本音とは 習近平の続投で中国共産党は生き延びる | JBpress (ジェイビープレス) 2022.6.17(金) 川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問
毎年夏になると渤海湾に面した保養地、北戴河(ほくたいが)に中国共産党の現役指導部とOBが集まり、話し合いが行われる。これは水泳好きの毛沢東が夏になると避暑をかねて北戴河に滞在し、そこでお気に入りの幹部と密談したことが起源とされ、俗に「北戴河会議」と呼ばれる。
その内容が公表されることはないが、秋以降に行われる人事や政策の骨格を決めるものとされる。今年(2022年)は秋の共産党大会で習近平国家主席が続投するか退任するかを決める年なので、特にこの会合に注目が集まっている。
そんな北戴河での会合を前にして、にわかに李克強待望論が語られるようになった。それは習近平の続投に対する批判と言ってもよいのだが、少し前までは習近平が3期目に突入することは既定路線とされていた。ここに来て変化があったのだろうか。本稿では中国政治の底流から、習近平続投について考えてみたい。
李克強待望論は「牽制球」
結論を先に言えば、長老たちによって習近平続投が阻止されることはない。長老たちが一枚岩になって習近平を辞任に追い込むようなことは起きないだろう。
北戴河会議は秘密会議であるから、確実なことを知るのは不可能だが、おそらく今年の北戴河会議は長老たちが続投以降も自分や自分の一族が安全に暮らせるように、習近平に懇願する場になるのではないか。
李克強待望論は、そんな長老たちが習近平に投げた牽制球と見るべきだ。牽制球によって習近平の続投を阻止したいわけではない。牽制球はあくまでも牽制球。習近平が必要以上に自分たちの権益を犯すことを阻止することが目的である。
長老たちは練達の政治家であり馬鹿ではない。そして、現在の中国共産党が置かれた状況をよく理解している。天安門事件、あれから33年が経過したが、彼らはそれをよく覚えている。あの事件をうまく乗り切ったからこそ今の地位がある。
緊迫した1989年6月を思い出す。どちらに転んでもおかしくなかった。鄧小平の決断があり、彼が軍を完全に掌握していたからこそ天安門前広場に集まった群衆を鎮圧することができた。群衆の中には北京大学の学生などインテリが多数含まれており、もしあのデモで政権が倒れれば、現在とは全く異なる政府が作られた可能性が高い。そうなれば長老たちの多くは、うだつの上がらない地方幹部として一生を終えることになったはずだ。
なんとしても現体制を維持したい長老たち
天安門に集まった同胞に発砲し多くの人の恨みを買った政権が、33年間も存続した。その理由は、共産党が経済を急速に発展させたことに尽きる。鄧小平が考え出した「政治は共産主義、経済は資本主義」というキメラのような体制は中国に奇跡をもたらした。
このシステムが成功した最大の理由は、土地が国有化されていたことにあった。都市近郊の開発が進むと農地の価格が高騰した。日本などでは土地売却益は農民のものになったが、中国ではその利益を地方政府が独占的に手に入れた。それを原資にインフラ整備を行ったが、地下鉄や道路が造られるほど周辺で宅地化が進み、それによって地方政府はさらなる利益を得ることができた。現在、中国のGDPの3割は不動産業に由来する。
ただ、このシステムに少々悪乗りし過ぎたようだ。上海の不動産は2000年頃既にバブル化していると言われていたが、そんな状態を20年以上も放置してきたために、バブルが全国に広がってしまった。それはソフトランディングが不可能な状態に陥っている。
日本は1990年代初頭にバブルが崩壊するとまもなく金融危機に襲われ、その後、「失われた20年」と呼ばれる停滞期に突入した。中国の不動産バブルは日本をはるかに超えている。そうであるならば、中国は日本が経験したよりもはるかに深刻な経済危機に見舞われるはずだ。
日本でバブルが崩壊すると自民党は政権を維持できなくなった。細川政権、村山政権、そして2009年には民主党政権が作られた。バブル崩壊は政権交代の引き金になる。
銃口によって天安門事件を乗り切った長老たちは、なんとしても現体制を維持したい。それが彼らの本音である。共産党体制が崩壊すれば、天安門事件が蒸し返される。そうなると犯罪者になる長老も出てくる。現在、支配者として振る舞っている多くの共産党員にとっても、政権崩壊は悪夢以外のなにものでもない。
経済が順調に発展しなくなった今、民衆に不満を口にする機会を与えれば、それは必ずや政権の崩壊につながる。独裁政権はもろい。少しでも自由を与えると蟻の一穴になる。経済成長という飴によって民衆を従わせることができなくなった現在、鞭によって民衆を従わせるしか方法がない。習近平に続投させて、より統制を強化する。これが不動産バブルが崩壊した後も、共産党政権が存続する最善の方策である。
同時に外交では民衆の心の中に潜む西欧コンプレックスを刺激する。中国人にはアヘン戦争以来の西欧コンプレックスが存在する。そんな民衆に「中国の夢」を語り、米国との対立を演出すれば、民衆に夢を与えるとともに非常時を認識させることができる。非常時なのだから勝手な言論は慎むべきだ。戦前の日本も「贅沢は敵だ」や「欲しがりません勝つまでは」などの標語を作って、民衆を抑え込んだが、非常時の演出は政権の基盤強化に有効である。
続投が決まった習近平は何を行うのか?
このように考えれば、習近平の行っている極左路線(それを21世紀の文化大革命と呼んでもよいと思うが)を理解することができよう。
もし李克強が共産党総書記になって習近平の極左路線を否定するような政策を行えば、民衆が自由に発言するようになり、ゴルバチェフの出現によってソ連が崩壊したように中国共産党政権も崩壊する可能性がある。それは長老が最も恐れる事態である。
だから長老たちは習近平続投を支持している。そして共産党が存続するためには、自分たちが持っている利益を民衆に渡す必要があることも、頭では理解している。格差是正は必要だ。だがそれでも自分の利権は守りたい。それが人の性というものであろう。そんな長老の心理が李克強待望論という牽制球を生み出した。
今後、習近平の続投はさしたる混乱もなく決まるはずだ。そして続投が決まった習近平は国内では締め付けを強化する。また対外的にはさらなる強硬策をとる。GDPの3割を占める不動産セクターが崩壊し金融危機が発生しかねない状況下において、それは中国共産党が生き延びるための最良の方法である。
日本人と日本企業は隣国がこのような状態にあることをよく知った上で、今後の付き合い方を考える必要があろう。
毎年夏になると渤海湾に面した保養地、北戴河(ほくたいが)に中国共産党の現役指導部とOBが集まり、話し合いが行われる。これは水泳好きの毛沢東が夏になると避暑をかねて北戴河に滞在し、そこでお気に入りの幹部と密談したことが起源とされ、俗に「北戴河会議」と呼ばれる。
その内容が公表されることはないが、秋以降に行われる人事や政策の骨格を決めるものとされる。今年(2022年)は秋の共産党大会で習近平国家主席が続投するか退任するかを決める年なので、特にこの会合に注目が集まっている。
そんな北戴河での会合を前にして、にわかに李克強待望論が語られるようになった。それは習近平の続投に対する批判と言ってもよいのだが、少し前までは習近平が3期目に突入することは既定路線とされていた。ここに来て変化があったのだろうか。本稿では中国政治の底流から、習近平続投について考えてみたい。
李克強待望論は「牽制球」
結論を先に言えば、長老たちによって習近平続投が阻止されることはない。長老たちが一枚岩になって習近平を辞任に追い込むようなことは起きないだろう。
北戴河会議は秘密会議であるから、確実なことを知るのは不可能だが、おそらく今年の北戴河会議は長老たちが続投以降も自分や自分の一族が安全に暮らせるように、習近平に懇願する場になるのではないか。
李克強待望論は、そんな長老たちが習近平に投げた牽制球と見るべきだ。牽制球によって習近平の続投を阻止したいわけではない。牽制球はあくまでも牽制球。習近平が必要以上に自分たちの権益を犯すことを阻止することが目的である。
長老たちは練達の政治家であり馬鹿ではない。そして、現在の中国共産党が置かれた状況をよく理解している。天安門事件、あれから33年が経過したが、彼らはそれをよく覚えている。あの事件をうまく乗り切ったからこそ今の地位がある。
緊迫した1989年6月を思い出す。どちらに転んでもおかしくなかった。鄧小平の決断があり、彼が軍を完全に掌握していたからこそ天安門前広場に集まった群衆を鎮圧することができた。群衆の中には北京大学の学生などインテリが多数含まれており、もしあのデモで政権が倒れれば、現在とは全く異なる政府が作られた可能性が高い。そうなれば長老たちの多くは、うだつの上がらない地方幹部として一生を終えることになったはずだ。
なんとしても現体制を維持したい長老たち
天安門に集まった同胞に発砲し多くの人の恨みを買った政権が、33年間も存続した。その理由は、共産党が経済を急速に発展させたことに尽きる。鄧小平が考え出した「政治は共産主義、経済は資本主義」というキメラのような体制は中国に奇跡をもたらした。
このシステムが成功した最大の理由は、土地が国有化されていたことにあった。都市近郊の開発が進むと農地の価格が高騰した。日本などでは土地売却益は農民のものになったが、中国ではその利益を地方政府が独占的に手に入れた。それを原資にインフラ整備を行ったが、地下鉄や道路が造られるほど周辺で宅地化が進み、それによって地方政府はさらなる利益を得ることができた。現在、中国のGDPの3割は不動産業に由来する。
ただ、このシステムに少々悪乗りし過ぎたようだ。上海の不動産は2000年頃既にバブル化していると言われていたが、そんな状態を20年以上も放置してきたために、バブルが全国に広がってしまった。それはソフトランディングが不可能な状態に陥っている。
日本は1990年代初頭にバブルが崩壊するとまもなく金融危機に襲われ、その後、「失われた20年」と呼ばれる停滞期に突入した。中国の不動産バブルは日本をはるかに超えている。そうであるならば、中国は日本が経験したよりもはるかに深刻な経済危機に見舞われるはずだ。
日本でバブルが崩壊すると自民党は政権を維持できなくなった。細川政権、村山政権、そして2009年には民主党政権が作られた。バブル崩壊は政権交代の引き金になる。
銃口によって天安門事件を乗り切った長老たちは、なんとしても現体制を維持したい。それが彼らの本音である。共産党体制が崩壊すれば、天安門事件が蒸し返される。そうなると犯罪者になる長老も出てくる。現在、支配者として振る舞っている多くの共産党員にとっても、政権崩壊は悪夢以外のなにものでもない。
経済が順調に発展しなくなった今、民衆に不満を口にする機会を与えれば、それは必ずや政権の崩壊につながる。独裁政権はもろい。少しでも自由を与えると蟻の一穴になる。経済成長という飴によって民衆を従わせることができなくなった現在、鞭によって民衆を従わせるしか方法がない。習近平に続投させて、より統制を強化する。これが不動産バブルが崩壊した後も、共産党政権が存続する最善の方策である。
同時に外交では民衆の心の中に潜む西欧コンプレックスを刺激する。中国人にはアヘン戦争以来の西欧コンプレックスが存在する。そんな民衆に「中国の夢」を語り、米国との対立を演出すれば、民衆に夢を与えるとともに非常時を認識させることができる。非常時なのだから勝手な言論は慎むべきだ。戦前の日本も「贅沢は敵だ」や「欲しがりません勝つまでは」などの標語を作って、民衆を抑え込んだが、非常時の演出は政権の基盤強化に有効である。
続投が決まった習近平は何を行うのか?
このように考えれば、習近平の行っている極左路線(それを21世紀の文化大革命と呼んでもよいと思うが)を理解することができよう。
もし李克強が共産党総書記になって習近平の極左路線を否定するような政策を行えば、民衆が自由に発言するようになり、ゴルバチェフの出現によってソ連が崩壊したように中国共産党政権も崩壊する可能性がある。それは長老が最も恐れる事態である。
だから長老たちは習近平続投を支持している。そして共産党が存続するためには、自分たちが持っている利益を民衆に渡す必要があることも、頭では理解している。格差是正は必要だ。だがそれでも自分の利権は守りたい。それが人の性というものであろう。そんな長老の心理が李克強待望論という牽制球を生み出した。
今後、習近平の続投はさしたる混乱もなく決まるはずだ。そして続投が決まった習近平は国内では締め付けを強化する。また対外的にはさらなる強硬策をとる。GDPの3割を占める不動産セクターが崩壊し金融危機が発生しかねない状況下において、それは中国共産党が生き延びるための最良の方法である。
日本人と日本企業は隣国がこのような状態にあることをよく知った上で、今後の付き合い方を考える必要があろう。
北戴河会議に向けた長老たちに依る李克強待望論は、自分や自分の一族が安全に暮らせるように、習近平に懇願する為に投げた牽制球と見るべきだと川島氏。
長老たちは練達の政治家であり馬鹿ではない。そして、現在の中国共産党が置かれた状況をよく理解している。
天安門事件、あれから33年が経過したが、彼らはそれをよく覚えている。あの事件をうまく乗り切ったからこそ今の地位があると。
天安門に集まった同胞に発砲し多くの人の恨みを買った政権が、33年間も存続した。その理由は、共産党が経済を急速に発展させたことに尽きる。鄧小平が考え出した「政治は共産主義、経済は資本主義」というキメラのような体制は中国に奇跡をもたらしたことは、諸兄がご承知の通り。
このシステムが成功した最大の理由は、土地が国有化されていたことにあったと川島氏。
都市近郊の開発が進むと農地の価格が高騰した。その利益を地方政府が独占的に手に入れた。現在、中国のGDPの3割は不動産業に由来すると。
ただ、このシステムに少々悪乗りし過ぎた。
バブルが全国に広がってしまった。それはソフトランディングが不可能な状態に陥っていると川島氏。
日本は1990年代初頭にバブルが崩壊するとまもなく金融危機に襲われ、その後、「失われた20年」と呼ばれる停滞期に突入した。中国の不動産バブルは日本をはるかに超えている。そうであるならば、中国は日本が経験したよりもはるかに深刻な経済危機に見舞われるはずだと。
バブル崩壊での経済危機は、日本では自民党政権から、社会党の村山政権への政権交代を産んだ。
銃口によって天安門事件を乗り切った長老たちは、なんとしても現体制を維持したい。
経済成長という飴によって民衆を従わせることができなくなった現在、鞭によって民衆を従わせるしか方法がない。習近平に続投させて、より統制を強化する。これが不動産バブルが崩壊した後も、共産党政権が存続する最善の方策である。
同時に外交では民衆の心の中に潜む西欧コンプレックスを刺激する。
民衆に「中国の夢」を語り、米国との対立を演出すれば、民衆に夢を与えるとともに非常時を認識させることができる。
非常時なのだから勝手な言論は慎むべきだ。戦前の日本も「贅沢は敵だ」や「欲しがりません勝つまでは」などの標語を作って、民衆を抑え込んだが、非常時の演出は政権の基盤強化に有効であると川島氏。
もし李克強が共産党総書記になって習近平の極左路線を否定するような政策を行えば、民衆が自由に発言するようになり、ゴルバチェフの出現によってソ連が崩壊したように中国共産党政権も崩壊する可能性がある。それは長老が最も恐れる事態。
だから長老たちは、本音は習近平続投を支持している。
そして共産党が存続するためには、自分たちが持っている利益を民衆に渡す必要があることも、頭では理解している。格差是正は必要だ。だがそれでも自分の利権は守りたい。それが人の性というものであろう。そんな長老の心理が李克強待望論という牽制球を生み出したと川島氏。
今後、習近平の続投はさしたる混乱もなく決まるはずだ。そして続投が決まった習近平は国内では締め付けを強化する。また対外的にはさらなる強硬策をとる。GDPの3割を占める不動産セクターが崩壊し金融危機が発生しかねない状況下において、それは中国共産党が生き延びるための最良の方法であると。
毛沢東の専制政治が招いた天安門事件。
その再発防止として鄧小平が産み出した集団指導体制と定年制。そして、手本にした戦後の日本復興を追い抜いて、米国に迫り対峙するまでになった中国経済と、その経済の恩恵に裏打ちされる軍事力増強と覇権拡大。
党大会の年に67歳以下なら留任、68歳以上なら引退という「七上八下」のルール。
18年の憲法改正で国家主席の任期制限の規定は撤廃されており、習氏は明文化されていない定年ルールを破って続投することが確実視されている習近平。
定年ルールがあいまいになることで、習氏の終身制につながる可能性も増す。
習政権が長期化することで歴史が繰り返される恐れもあると指摘されているのは、産経・三塚氏。
習近平氏69歳 懸念される定年ルール「七上八下」破りの影響 - 産経ニュース 三塚 聖平
【北京=三塚聖平】中国の習近平国家主席(共産党総書記)が15日に69歳になった。党指導部には「68歳定年」の不文律があるが、習氏は今年秋の党大会で異例の総書記続投をうかがう。ただ、慣例破りを行えば指導部人事全体にも影響を与える。習氏への権力集中がさらに進むことで、逆に政治体制が不安定化しかねないリスクも生じる。
習氏は誕生日を迎えた15日、プーチン露大統領と電話会談を行った。プーチン氏は過去にも習氏の誕生日に電話会談を行ったことがあり、祝いの言葉を述べた可能性がある。ただ、習氏の動静を大きく伝える中国共産党機関紙、人民日報に、習氏が69歳を迎えたことを伝える記事は見当たらない。指導者の年齢が中国政治に与える影響が背景にあるとみられる。
党指導部の定年をめぐっては「七上八下」という暗黙のルールがある。党大会の年に67歳以下なら留任、68歳以上なら引退というものだ。2002年の党大会で68歳だった李瑞環氏が引退に追い込まれたことが前例となり、07年の党大会で曽慶紅氏にも適用されて明確になったとみられる。「七上八下」は中国語で心が乱れる様子を表現する言葉だったが、指導部の定年を示すようになった。
18年の憲法改正で国家主席の任期制限の規定は撤廃されており、習氏は明文化されていない定年ルールを破って続投することが確実視されている。
注目されるのは習氏以外の指導部メンバーの定年がどうなるのかだ。習氏のみを例外とするほか、定年が引き上げられるという見方もあり、習氏の経済ブレーンとして知られる劉鶴副首相(70)が最高指導部入りするといった観測もささやかれる。いずれにせよ「七上八下」が破られれば、中国の人事をめぐる不確実性が高まる。
定年ルールがあいまいになることで、習氏の終身制につながる可能性も増す。建国の父、毛沢東は事実上の終身制を敷き、権力集中が文化大革命の大混乱につながったと指摘される。その反省から集団指導体制が確立されたが、習政権が長期化することで歴史が繰り返される恐れもある。中国政治関係者は「習氏がトップの座に長くいることで、本人が意図しなくても耳に心地よい情報ばかりが入ってくるということが既に起きている」と懸念する。
【北京=三塚聖平】中国の習近平国家主席(共産党総書記)が15日に69歳になった。党指導部には「68歳定年」の不文律があるが、習氏は今年秋の党大会で異例の総書記続投をうかがう。ただ、慣例破りを行えば指導部人事全体にも影響を与える。習氏への権力集中がさらに進むことで、逆に政治体制が不安定化しかねないリスクも生じる。
習氏は誕生日を迎えた15日、プーチン露大統領と電話会談を行った。プーチン氏は過去にも習氏の誕生日に電話会談を行ったことがあり、祝いの言葉を述べた可能性がある。ただ、習氏の動静を大きく伝える中国共産党機関紙、人民日報に、習氏が69歳を迎えたことを伝える記事は見当たらない。指導者の年齢が中国政治に与える影響が背景にあるとみられる。
党指導部の定年をめぐっては「七上八下」という暗黙のルールがある。党大会の年に67歳以下なら留任、68歳以上なら引退というものだ。2002年の党大会で68歳だった李瑞環氏が引退に追い込まれたことが前例となり、07年の党大会で曽慶紅氏にも適用されて明確になったとみられる。「七上八下」は中国語で心が乱れる様子を表現する言葉だったが、指導部の定年を示すようになった。
18年の憲法改正で国家主席の任期制限の規定は撤廃されており、習氏は明文化されていない定年ルールを破って続投することが確実視されている。
注目されるのは習氏以外の指導部メンバーの定年がどうなるのかだ。習氏のみを例外とするほか、定年が引き上げられるという見方もあり、習氏の経済ブレーンとして知られる劉鶴副首相(70)が最高指導部入りするといった観測もささやかれる。いずれにせよ「七上八下」が破られれば、中国の人事をめぐる不確実性が高まる。
定年ルールがあいまいになることで、習氏の終身制につながる可能性も増す。建国の父、毛沢東は事実上の終身制を敷き、権力集中が文化大革命の大混乱につながったと指摘される。その反省から集団指導体制が確立されたが、習政権が長期化することで歴史が繰り返される恐れもある。中国政治関係者は「習氏がトップの座に長くいることで、本人が意図しなくても耳に心地よい情報ばかりが入ってくるということが既に起きている」と懸念する。
毛沢東時代への回帰を目指す習近平。
経済発展を支えた不動産バブルの崩壊、新型コロナ禍で世界の工場のサプライチェーンの危うさから、脱中国依存で脱投資が進む中国。
習近平の続投は、吉とでるか、凶とでるか。要注目ですね。
# 冒頭の画像は、習近平と李克強
睡蓮
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