当然、報道では一方的に攻められていることになっている中国の反攻が注目されますし、そもそも地域の主役のASEAN各国の動向がどうなのかが大切な鍵です。これまでの経緯では、ASEAN + 米国での中国包囲網形成に動くベトナムやフィリピン、シンガポール、インドネシア等や、中国の札束攻勢になびき、二国間交渉でよいとするタイやマレーシアなどにASEAN内部でも分かれていましたし、米国の支援を仰ぐ各国も、中国の札束攻勢とは両天秤の外交を展開してきていて、旗色を一方的に偏らせて鮮明にしてきてはいないしたたかぶりです。国際外交では当然のことですが。
中国の反応です。「米国は北から南まで中国を封じ込める基地群を作ろうとしている」との専門家の意見や、「南シナ海での武力行使もやむを得ない」などの強硬論を報道している様ですが、政府の当面の態度は、ASEANの意向に擦り寄る態度の様です。
【ヌサドゥア=大木聖馬】中国の胡錦濤政権は、オバマ米政権がアジア重視に政策転換したことに警戒感を強めている。中国外務省の劉為民・報道局参事官は17日の定例記者会見で、「国家間の関係を発展させる時、他の国や地域の利益、平和、安定を考慮すべきだ」と述べ、米国のアジアへの関与拡大が逆に地域の不安定化をもたらさないよう注文をつけた。
国営新華社通信は17日、「アジアの国は、別人が自分の価値観を強要することを決して好まない。さらに好まないことは、米国がアジアとの関係を『指導と指導される』関係に定めることだ」とする評論を配信。共産党機関紙・人民日報系の国際問題専門紙「環球時報」も17日、「米国は北から南まで中国を封じ込める基地群を作ろうとしている」とする軍事専門家の分析を掲載した。
米国が対テロ戦争で中東地域などに精力を注ぐ中、胡政権は、急速な経済成長を背景に、アジアで影響力を拡大させてきた。世界第2位の経済大国となったいま、胡政権が目指すのは「米国と共に、対等にアジア・太平洋地域を主導していく秩序作り」(中国筋)だ。
中国メディアの間では最近、「南シナ海での武力行使もやむを得ない」などの強硬論も出ている。胡政権は米国のアジアへの関与を注視し、万一の事態を想定した軍事力の整備も急ぎつつ、アジア各国との経済協力や日中韓自由貿易協定(FTA)などを加速させ、影響力を維持するものとみられる。
最も危惧されるのが、これまでにも観られた人民解放軍の暴走です。本当に南シナ海での武力行使はしかねない中華思想に凝り固まった集団です。共産党も、2012年に台湾併合の目標を立てていて、第二列島線までの制空・海権を樹立し、米艦隊の接近を阻止する軍事力強化を推進してきたのでしたね。
また、多国間交渉を回避し、二国間での札束脅迫外交で分断し、主導権を確立すべく攻勢を強めていました。
一方、主役のASEANの反応。
日本のTPP参加に対し、これまでに決まったルールは乱すなと門戸を硬くする発言のシンガポールの態度がありましたが、日米に主導権をとられたり、地域を混乱させたりされることを警戒したり、米中両天秤での中国の財力の魅力と、米国の安全保障との二兎を得たい目的とから、日米の介入への警戒と、ASEAN主導を護る動きが台頭しているようですね。
【ヌサドゥア=梁田真樹子】17日のASEAN首脳会議が、「ASEAN海洋フォーラム」拡大の方向性で一致したのは、南シナ海問題での米国の関与を促しつつも、あくまでASEANを中心に据えた枠組みを議論の場とすることで、主体性を発揮したいとの考えからだ。多国間の話し合いを嫌う中国を将来的にこの枠組みでの協議に引き込もうとの思惑もある。
海洋の問題を討議する枠組みとしては、すでにASEAN地域フォーラム(ARF)などがある。米露が初参加して、南シナ海問題などを話し合う19日の東アジア首脳会議も、ASEANを中心とした機構だ。
日本は、東アジア首脳会議参加国による、海洋の問題に特化した「東アジア海洋フォーラム」の新設を提唱した。これに対し、今年のASEAN議長国インドネシアは、ASEAN海洋フォーラムの枠組み拡大を逆に提案した。「まずASEANで議論の土台を作ってから域外国と討議する」(インドネシア外交筋)ASEAN主導の形にこだわったというが、東アジア首脳会議の参加国のうち米国や日本、インドなどが枠組みに加入するのを見て、中国も無視できなくなるだろうとの読みもある。
南シナ海を含む東南アジアを取り巻く海域では、中国の進出に対し米国が日、豪といった同盟国、またインドなどと連携し、その動きと対峙する姿勢を見せている。ASEAN首脳会議直前の16日には、米豪が、インドネシアから800キロメートル程度しか離れていない豪北部ダーウィンでの米海兵隊駐留開始を発表した。
これに対してインドネシアのマルティ外相は16日、「緊張の負の循環を生み出すような行動を挑発する合意は見たくない」と発言。米側と中国が対立し、地域が争いの場となることへの懸念を示した。
ASEANは拡大された海洋フォーラムを、ARFなど、ほかのASEANを中心とした地域機構と関連させつつ、自らの存在感を発揮していきたい考えだ。
【ヌサドゥア=深沢淳一、大木聖馬】17日の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、東アジア経済統合を日中韓とインド、豪州、ニュージーランドの6か国を加えたASEANプラス6で推進することにASEAN側が合意し、16か国の大型市場統合が実現する可能性が出てきた。
今回、ASEANが自ら主導して東アジア統合に乗り出すのは、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)が完成すれば、ASEANの競争力や結束に影響を及ぼすとの懸念からだ。
米国が参加しない東アジアの市場統合で主導権を狙う中国には誤算の面もある。
中国は、米国の影響力が及ばない日中韓の自由貿笏協定(FTA)を最初にまとめ、それをASEANプラス3に発展させ、最終的にASEANプラス6に拡大させる青写真を描いており、いきなりASEANプラス6で進めることには後ろ向きだった。それが「いかなる形式でもアジア太平洋地域の一体化を支持する」(兪建華・商務次官補)と柔軟な姿勢へ転換を見せている。TPP交渉加速への危機感が背景となっている。
日本が新提案する「東アジア海洋フォーラム」。それにインドネシアが逆提案する「ASEAN海洋フォーラム」。中国が米国の関与を排除し自分が主導権を持とうと画策する「ASEAN + 3」。それに対し、昔、日本が提唱していた「ASEAN + 6」。いろいろな枠組みや言葉が出てきて解りづらいところもありますが、以下(EAS に米露が加わったところがまだ更新されていませんが)を参照ください。
外務省: ASEAN地域フォーラム(ARF)の概要
Web東奥/ニュース百科・ASEAN海洋フォーラム
日本が新提案する「東アジア海洋フォーラム」は、EASと同じ国々。インドネシアが逆提案する「ASEAN海洋フォーラム」の参加国は、ASEANの10ヵ国。
ASEAN 10ヵ国を指すのか、日中韓を加えるのか、豪、ニュージランド、印も加えるのか、更に米露を加えるのか。大きく言えば、米国を加えるか否かの争点ですね。
米中の間で主導権を持ち両方からの利益に与りたいASEAN。米国を排除したい中国。中国の主導を避け、主導権を握るべく政策転換をし攻勢をかけている米国といったところですね。
会合が動き始めている実績を持つTPPが、日本の参加表明もあり一歩リードしていて、守りの中国が劣勢で、米国が含まれていない「ASEAN + 6」(ASEAN海洋フォーラム拡大版?)へ歩み寄りを見せているといった展開ですね。
野田総理は、日本への各国の期待が伝わってきたと言っていますが、それこそ外交辞令。提示した日本の支援は中国がさらに増額を言いだしていて、札束以外の貢献が必要となります。
19日に行われるEASでの、海洋安全保障の提言が重要ですが、自衛隊の日本では限界があり、環境やインフラの技術支援などのwin winの貢献も必要ですね。
鳩と菅とで失った、関連諸国からの信頼が少しでも回復が出来るよう、野田氏の頑張りに期待します。
# 冒頭の写真は、ASEAN議長国のインドネシア・ユドヨノ大統領と握手する野田総理
この花の名前は、ヤマトリカブト (撮影場所=六甲高山植物園)
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