遊爺雑記帳

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成長を続けた「中国モデル」に陰りが

2011-12-17 23:51:37 | 中国 全般
 政府主導の投資と輸出に過度に依存した「中国モデル」と称される経済発展の伸びに陰りが出てきたようです。
 輸出の伸び率が鈍化し、工業生産の伸び率も鈍化、不動産業も大・中都市での相場が前月比マイナスに転じ更に地方への波及が見込まれるのだそうですね。
 
【緯度経度】北京・山本勲 正念場迎えた中国モデル (12/17 産経)

 中国経済の減速が鮮明になってきた。欧米の景気再悪化による輸出鈍化や政府がインフレ対策として進めてきた金融引き締めの浸透がきっかけだ。しかし筆者もかねて指摘してきた、政府主導で投資と輸出に過度に依存した「中国モデル」と称される発展方式の限界が、いよいよ露呈してきたとの観も深い。党・政府が例年、12月初めに開く中央経済工作会議が中旬にずれ込んだことも、こうした危機感の表れとみられる。

 景気後退は秋に入り明確になってきた。欧州経済危機などで輸出伸び率が9月から3カ月続けて鈍化、11月には前年同月比約14%と2年ぶりの低さになった。来春にかけてさらに鈍るのは必至とみられる。
 同月の
工業生産は12・4%増と、これも2年3カ月ぶりの低い伸び。10月の鉄鋼業総利潤は前月比83%減の約14億元(約170億円)と史上最低に落ち込み、大手77社中、25社が赤字となった。
 
不動産業は2008年秋のリーマン・ショック後に政府が打ち出した4兆元(約50兆円)景気対策と超金融緩和策でバブル化していた。しかしこの2年間の金融引き締めで「10月から全国70の大・中都市で相場が前月比マイナスに転じた」(国家統計局)。
 北京、上海など中心都市では下げ幅が2割前後に達しており、地方都市への波及が見込まれる。
 政府の景気対策で国内総生産(GDP)が一昨年9・2%、昨年10・4%も伸びたことから、国際社会では「中国モデル」をもてはやす声も高まった。
 しかし市場原理を超えた政府主導の超大型景気対策の効果は長続きせず、副作用も大きかった。政府方針で融資残高は09~10年に19・6兆元(約240兆円)も激増した。
 この中から採算性や会計管理の怪しい地方の新都市建設や鉄道、高速道路などのインフラ建設に膨大な資金が流れた。
 投資主体となった
地方政府系融資機関の債務残高は「約10・7兆元」(政府当局)と、対GDP比約27%に相当する。加えて「国有銀行の直接、間接の不動産融資は総融資残高の半分にのぼる」(英フィナンシャル・タイムズ紙の中国語電子版)とされる。
 政府はインフレ、不動産急騰を抑制するため金融を引き締めたが、行き過ぎればバブル崩壊や金融不安を招き、景気失速(ハードランディング)につながりかねない局面を迎えた。
 そこで14日閉会した中央経済工作会議は「安定の中に進歩を求める」をスローガンに(1)経済の安定的で比較的速い発展(2)輸出と投資主導から消費を中心とした内需主導の発展への転換(3)インフレ抑制と民生の向上-などをめざす。
 そのために
財政投融資を再び適度に緩め、重点インフラ建設を継続し、減税などにより消費拡大を図る-といった具体策を講じる。これらを通じて最低8%台の成長を維持する構えだ。党・政府主導の「中国モデル」型対策としてはこんなところかもしれない。
 しかし1人当たりGDPが「(物価水準を勘案した)購買力平価ベースで約8千ドル」(劉世錦・国務院発展研究中心副主任)と、すでに中進国の上位に達した中国の発展戦略としては問題がありそうだ。
 企業のイノベーションを促すには、
民間主導の公正、公平で開かれた市場経済体制の構築が欠かせない。だが中国では国有企業が逆に勢力を増し、民営企業が窮地にある。
 内需主導の発展には「人口の1%が国富の4割強を占有する」
極端な所得格差の是正が欠かせない。「腐敗による国家損失は毎年GDPの1~2割」との試算もあり、成長が5%以下になれば大規模な社会騒乱も起きかねない。中国経済は根本的、抜本的な体制改革を必要としている

世界の工場としての経済発展から、内需の成長を促進した発展への転換が、オリンピック以後の経済発展の方向とされ、インフラへの投資を軸とした政府主導の「中国モデル」が世界中からの投資を呼び、独り勝ちともいえる経済成長を達成してきました。
 しかし、そのエンジンの基は政府の投資によるもので、政府によって造りだされた成長でしたが、その政府の起動にもそろそろ限界が見えてきたというのですね。自由主義経済国の、国内外の民間企業による投資を主体とする成長と違うところで、日本や、欧米の衰退・低迷と比べ、管理された社会主義経済のほうが優位性があるのではとの声も多く聞かれていた昨今でした。
 とはいえ、中国の輸出は依然世界一を誇っていて、経済基盤、貿易収支を支えているのが現実でしたから、実態はまだ政府の牽引に負っているのですね。

 政府のインフラ整備推進は、不動産バブルを招きGDPに締める割合も大きいのは、古くは米国のニューディール政策、日本での列島改造計画に習ったもので、オバマ大統領も景気回復策に「グリーンニューディール政策」を掲げていました。
 中国の不動産バブルの弾ける兆については、諸兄がご承知のことですし、多くの報道があり、遊爺も触れてきました。GDPにしろ、工業生産にしろ、伸び率が鈍化した話ですが、不動産についてはマイナスに転じたというレベルなのです。日本のバブル崩壊も、不動産から始まりました。
 民間企業の生産活動やサービスの実経済活動といった実質経済活動の中での投資拡大ではない、政府による起爆剤用の投資はいつかは民間投資に肩代わりしないと、持続した成長は望めません。
 GDPが世界2位とは言え、一人当たりGDPはやっと中進国と言う平均値で、実態は一握り(と言っても日本の総人口に匹敵)の富裕層が富を甘受している状況では、内需の伸びもはかどりません。
 
 欧州や米国・日本の自由主義経済の低迷は、資本主義の限界というより、過度な金融主義というかマネーゲームによる過度なブレがもたらすものと考えますが、統制された社会主義経済=中国モデルも行き詰まりが見えたとすると、なにか新たなモデルの誕生を期待するしかないのでしょうか。
 いずれにしても、今一番世界経済をけん引している中国経済の動向には注目が必要ですし、脱中国の備えも求められる、変化が来年はやってきそうですね。



 # 冒頭の画像は、河南省鄭州市の完全に無人状態の新築住宅群

 



  この花の名前は、山茶花

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続 中国の海洋戦略
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