遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

習近平に辞任要求の公開書簡

2016-03-31 23:58:58 | 中国 全般
 3月初旬、北京で、全人代の開幕直前、中国当局が公認しているニュースサイト「無界新聞」に、習近平批判の書簡が掲載されたのだそうです。
 最近、中国では官製メディアが流すニュースがあまりにつまらないため、スマートフォン時代の読者がまったくついてこないという問題が生じていた為、中国共産党が新しい宣伝媒体として「無界新聞」を立ち上げていたのでした。
 「全ての中国メディアの姓(名字)は共産党である」と、メディアの共産党による管理を強めようとしている習近平。一般大衆をひき付けるための巧妙な世論操作を裏から行おうとして産んだ「無界新聞」でしたが、逆利用されてしまったのでした。
 

辞任要求を突きつけた公開書簡「経済減速の責任は習氏に」 :日本経済新聞

 「習近平同志、あなたの高圧的な『反腐敗』運動は共産党の不正の風をただすのに役立っています。だが、客観的に見て、各レベルの政府が仕事を怠けるサボタージュ現象を生んでいます。官僚が事を恐れるあまり仕事をしないため、経済状況の悪化を加速しています。現在の反腐敗の目標は、権力闘争のための集権にすぎないのです」
 これは3月初旬、北京で全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の開幕直前、中国当局が公認しているインターネットメディアが掲載した驚くべき文章だ。国家主席、習近平宛ての公開書簡の形式をとっている。

■「反腐敗で経済悪化」と関係明示
 
習近平による厳しい「反腐敗」運動と経済悪化の関係を中国内部で初めて明確に指摘したのが目を引く。経済が落ち込んだ責任は、事実上、権限のない首相の李克強にはなく、無理な集権を進めた習近平自身にある
、というのだ。
 これは、共産党の伝統である政治局常務委員(現在7人)による集団指導制の放棄である、とも指摘している。いずれにせよ、経済の司令塔であるはずの李克強の地位は無視されている。
 この公開書簡は、監視機構の指示を受けて削除された。しかし、その前に多くの中国国民が目にしたため、大きな話題になり、転載されていった。拡散した文章は海外を中心にインターネット上に残っており、誰でも閲覧できる。ネット時代の特徴である。
 この文を掲載したニュースサイト
「無界新聞」
は中国共産党の新しい宣伝媒体だった。習近平指導部の発足後に設立されたインターネットメディアを管理・監督する中国国家インターネット情報弁公室の傘下にある。
 2015年春、中国の有力経済誌「財経」を発行する財訊集団、新疆ウイグル自治区党宣伝部、電子商取引を核とする中国の巨大企業であるアリババが共同で設立した。多くの記者を擁し、著名編集者も雇った。本部は北京だ。
 
最近、中国では官製メディアが流すニュースがあまりにつまらないため、スマートフォン時代の読者がまったくついてこないという問題が生じていた。
そこで各地の党宣伝部などが知恵を絞った。
 考えついたのは、独自にニュースサイトを立ち上げ、一見、官製に見えない面白い官製ニュースを流すという手法だ。外部のインターネットビジネスの専門家の意見も踏まえたビジネスモデルである。
 その代表の一つが「無界新聞」だった。共同設立者のアリババは、トム・クルーズ主演の人気の米映画「ミッション・インポッシブル」の製作に出資しているような著名企業である。そのビジネス感覚はネット運営でも生かされていた。
 お堅い中国国営通信である新華社の配信記事、共産党機関紙である人民日報などの引用は極めて少なく、あえて目立たないようにしていた。
 サイトを最初に見た多くの読者は、目を引く見出しの付け方、斜めからバサッと切る鋭い分析など、その新しい感覚に驚いた。「一瞬、新たな海外の親中国系ニュースサイトなのだと錯覚した」。北京の大学生の感想だ。

■メディア統制の中で不満を代弁
 
「全ての中国メディアの姓(名字)は共産党である」。習近平指導部は、メディアは忠実な党のしもべであれ、というマスコミ統制のキャンペーンを展開している。だが、その裏では、中国社会の実態に合わせて、一般大衆をひき付けるための巧妙な世論操作の手法も研究していた

 今回の事件では、この新たな手法が逆に利用された形だ。
内部の仕業とも噂される公開書簡は、習近平に責任をとって党と国家の全ての職務から辞任するように要求
し、自分と家族の安全にも気をつけたほうがよい、と脅している。激しい。
 当局は、掲載の経緯を巡って厳しい取り調べを始めた。既に10人を超す関係者が当局に拘束され、調査されたという。香港在住の中国人評論家、賈葭もその一人だった。著名なメディア人である賈葭は、サイト運営の責任者である男性と昔からの知り合いだった。
 関係者によると、米国滞在中にこの書簡の掲載に気が付き、男性に削除するように連絡した。その後、中国に戻り、3月中旬、北京の空港から香港に出ようとしたところを拘束された。賈葭は既に釈放されている。
 こうした目立つ拘束事件に目を奪われがちだが、
今回の事件の本質は別の所にある。一つ確かなことがある。厳しいうえに極めて恣意的な「反腐敗」運動の結果、恐れをなした官僚がまったく働かず、多くの中央、地方の指導者が困り切っている
、という事実だ。首相の李克強が3月5日に読み上げた政府活動報告のなかにさえ、同趣旨の言葉があった。
 公開書簡は、この問題を正面から突いた。党内の不満を代弁しているともいえるのだ。しかし、「反腐敗」運動に逆らうことは、自らの失脚を意味する。
「経済悪化は習近平のせいだ」などとは、表では口が裂けても言えないだから、こうした“紙爆弾”が内部から登場
した。
 しかも、中国では、
指導者を批判する危険な文章はトップの人気が絶大なうちは出てこない。潮目に来ているからこそ登場する
のだ。
 反腐敗で悪徳役人を次々、捕まえた正義の味方、習近平は確かに大衆の心をぐっとつかんだ。しかし、それも3年もたてば飽きが来る。ここにきての経済の減速も大きく影響している。
一般人が、生活が厳しいと感じ始めたら危うい

 通常、民主主義社会であれば、指導者に対する意見表明は何の問題もない。むしろ、健全な批判意見がより良い政策づくりに生かされる。ところが、共産党が全てを仕切る中国では様相が全く異なる。

■事件は権力闘争の道具に
 
こうした突出した異論の表明の裏には、必ず激烈な権力闘争が隠れている
。そして事件の捜査、処理の過程も権力闘争に利用される。全てが政治的なのだ。
 中国では2017年の秋以降、第19回共産党大会が開催される。その際の最高指導部人事では、「ポスト習近平」の候補者選びをにらむ闘いが繰り広げられる。今回の事件処理がどう絡むのか、注目したい。

 そして鳴り物入りで発足した「無界新聞」はどうなるのか。完全閉鎖の噂も絶えない中、現時点ではサイトの閲覧は可能だ。だが、ほぼ全てが新華社や人民日報、国営の中国中央テレビが発信するニュースになった。
 逆戻りしてしまったのだ。新たな試みはあっけなく終わった。これでは誰も見てくれない。大衆は正直だ。つまらないニュースにも目もくれない。
 なお、
調査が進行中である前代未聞のトップへの辞任要求事件。それは中国政治と中国メディアが抱える矛盾を象徴している
。(敬称略)

 『反腐敗』運動は共産党の不正の風をただすのに役立っているとしながらも、官僚が事を恐れるあまり仕事をしないため、経済状況の悪化を加速していると指摘し、現在の反腐敗の目標は、権力闘争のための集権にすぎないと糾弾しているのです。
 そして、習近平に責任をとって党と国家の全ての職務から辞任するように要求し、自分と家族の安全にも気をつけたほうがよい、と脅しているのだそうです。

 『無界新聞』は、昨年4月、雑誌『財経』の親会社・財訊集団と新疆ウイグル自治区とアリババグループ(創始者は馬雲)の3者による出資で成立したのだそうで、なぜ新疆ウイグル自治区で習主席への辞任要求公開書簡が掲載されたのかは、同自治区書記(実質的トップ)が「上海閥」の張春賢だったからだろうとの情報があり、省市自治区トップの約3分の2が習主席への忠誠を誓ったとされるなか、張春賢は未だ言を左右にして、習主席への忠誠を誓っていないのだそうです。

 中国では、指導者を批判する危険な文章は、トップの人気が絶大なうちは出てこない。潮目に来ているからこそ、表立っては言えない内容の紙爆弾が登場するのだそうですが、反腐敗の虎退治も、3年を経過し退治する対象が小物になり飽きが来始めている事に加え、ここにきての経済の減速も潮目を変える時期を招いている様です。
 そして、こうした突出した異論の表明の裏には、必ず激烈な権力闘争が隠れているとし、2017年の秋以降に開催される、第19回共産党大会での、共産党中央政治局常務委員の7つの椅子取りに向けた派閥間の戦いが始まっていることの顕れと指摘しています。

 「習近平打倒同盟」なるグループが勃興した証しの習近平辞任要求に対し、「山西毛学組」による「李克強首相辞任勧告」も対抗してネット上に登場しているのだとか。
 
李克強首相責任論と『無界新聞』の内幕 - 澁谷 司

 しかし、本来、経済担当の李克強首相の権限を習近平が奪い取り、独断政治を展開していることは、衆知のことで、外交の行きづまり、経済の減速は習近平に責任があることは明らかです。
 順風満帆の右肩上がりの高度成長期には、多くの課題が隠されて露呈しませんでしたが、減速するとともに諸課題が噴出してくるこれから。その責任のなすりつけ合いの政局争いが激化し政策不在の政治がなされれば、日本が政局優先の民主党政権で沈没しそうになったのと同様、中国の崩壊が始まりかねません。栄枯盛衰、驕る平家は久しからず。驕る習近平政権の行方が危惧されますね。



 # 冒頭の画像は、新疆ウイグル自治区書記 張春賢






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