米中による「新冷戦時代」の対立が深まった今年は、世界情勢が大きく変化した都市として、歴史に残る年となるのではないでしょうか。
定年制を廃して独裁体制を構築していた習近平が、軍事力と資金力とで世界中に覇権を拡大するのを阻止しようと立ちはだかった米国。
対中交易の利益が先立ち腰が重かった欧州勢が、新型コロナ感染元となった中国の姿勢、香港の「一国二制度」を期限を待たず破綻させた国際公約無視の「香港国家安全維持法」の強行、ウイグルやチベットでの民族弾圧、「一帯一路」の債務の罠といった暴挙に、さしもの欧州勢も重い腰をあげ、中国と自由主義陣営との「新冷戦時代」の構図が、より鮮明になったのでした。
この間の欧州勢の動きについて、WSJが振り返った記事を掲載していました。
「一帯一路」の覇権拡大ロードを欧州へ伸ばしたい習近平。2019年3月、マクロン仏大統領、メルケル独首相、欧州委員会のユンケル委員長(当時)とパリで会談したのだそうです。
そこで習近平は、最近のEUの政策文書では中国を「体制上のライバル」と位置づけているが、それはEUの真意なのかと、3人の首脳に迫ったのだそうです。
メルケル氏は習氏への賛辞を込め、その文言は欧州が中国の力と影響力の拡大を認識していることを示すものだと述べ、ユンケル氏は場を和ませようと、中国に関する見解をEU内で統一できないことについて冗談を飛ばしたのだそうです。
しかし、マクロン氏は無遠慮に、それは本当だ、貴国はライバルだと述べたのだそうです。そして、数週間後、フランスは軍艦に台湾海峡を航行させて中国を挑発。中国政府は、同国の水域に違法に侵入したと非難したのでした。
習氏のビジョンを阻む最大の障害は、国内ではなく、国外にある。中国に対する見方がわずか数年で劇的に変化している国々だとWSJの記事。
かつては中国を憤慨させることを控えていた諸国が、米国の強硬でおおむね超党派的なスタンスに近づきつつあり、顧客やテクノロジー、重要インフラへの中国のアクセスを抑制し始めていると。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが10月に実施した調査によると、ほぼ全ての調査対象国で習氏に対する不信感が高水準に達しているのですね。(冒頭のグラフを参照ください)
しかし、中国には大きな経済力があるため多くの国が。インフラへの投資やコロナワクチンの供給を期待している大半の国は過度に強気に出ることができず、中国への対抗には限界もあるのも現状。
しかし、そこで生じている「債務の罠」も近年は露呈してきていますね。
欧州当局者によると、メルケル氏は依然、中国との関係を維持する意向を変えていない。同氏は、欧州経済と中国経済の結びつきをさらに深める投資協定を締結するEUの取り組みを主導し、米新大統領の就任前に合意を固めようと推し進めていると。
しかし、中国の市場力に対するドイツ国内の懸念は高まっている。また、一部のEU議会議員は、協定が締結にこぎ着けても、承認を阻止する構えをちらつかせているのだそうです。
チェコやスウェーデンなどの比較的小規模な国を中心に、欧州全般で中国に対する反感が高まっている。それらの国では、中国外交当局者の高圧的な行動が怒りをあおり、経営者は中国企業との不公正な競争に対する懸念を強めているとも。
習氏に対する懸念は、既に2018年には募り始めていた。当時はEUとトランプ政権の関係が緊張化しており、それが欧州と中国を接近させることになるかもしれないとの見方もあった。
一方、2018年7月、習氏はEU代表団との公式夕食会で、国家主導型の中国モデルは自由貿易のグローバル化時代に繁栄すると主張。さらに、欧州は「意思決定の遅さ」に阻害され、所得格差がポピュリズムをあおっていると述べ、英国のEU離脱の是非を問う国民投票について言及したのだそうです。
これには、ユンケル氏が、「あなたが言う『遅さ』をわれわれは『民主主義』と呼ぶ」と反撃したのだと。
ユンケル氏は、中国が米国との争いで欧州を利用しようとしていると確信し、2週間後、トランプ氏と会談し、電撃的に米欧貿易紛争の休戦で合意したのだそうです。
その頃、ドイツ産業界の代表と政策当局者らはベルリン北方にあるツィーテン城に集まり、ドイツと競合しようとする中国の野心について、2日間にわたり議論。財界リーダーらはより強硬な対中政策を働きかけることで合意。自由市場経済は「システミックな(体制上の)競争相手」である中国に負ける恐れがあると警鐘を鳴らしたのだそうです。
昨年初め頃のEUの政策文書は中国について、単なるパートナーや競争相手ではなく、「システミックライバル」と呼んでいたのだそうで、この表現は欧州に駐在する中国の外交官らを驚かせたのだと。
2019年3月、パリを訪問した習近平は、「システミックライバル」の話題が出ると、あきらかにに不機嫌になっていったのだそうです。
協議をさらに数週間続けた後、中国政府は自国の市場にEUがより広範囲に参入できるようにする意向を伝えたのだそうです。
だが、その約束の実現に向けた協議は数カ月で行き詰まったのでした。理由は、貿易の流れを促すどころか、中国は自国民の感情を傷つけたとする欧州の行為を罰する新たな制限をちらつかせたから。
今春、香港で抗議デモが続く中、英国はEU加盟諸国に強硬姿勢を強めるよう説得を開始。他の諸国も中国に対して声を上げ始めたと、WSJ。
EUは7月下旬、香港との犯罪人引き渡し条約の停止を含む制裁措置を承認。
メルケル氏が提唱し、9月にライプチヒで開催予定だったEUと中国の首脳会議は、コロナ禍でビデオ会議での開催となったのだそうですが、参加者は習氏とメルケル氏、2人のEU高官だけだったのだそうです。メルケル氏の孤立化は顕著。
ビデオ会議が終了するまでに、どちらの側も貿易についての進展はあまり見られなかったのだそうです。
数週間後、ジョセップ・ボレルEU外交安全保障上級代表はマイク・ポンペオ米国務長官と電話会談し、米国と欧州は対中国で協調すべきであるという目標を共有することで一致したのだと。
欧州諸国との連携を重視すると言われているバイデン氏が大統領になる2021年。
チャイナゲート問題を抱えるバイデン大統領。「新冷戦時代」を優勢に展開させてきたトランプ氏の対中外交を、引き続き優勢に維持できるか。自由主義陣営の運命かを背負っていただくのですが、頑張っていただきたい。
# 冒頭の画像は、習近平氏が国際問題に対し正しいことをしていないという各国の評価のグラフ
この花の名前は、福寿草
↓よろしかったら、お願いします。
定年制を廃して独裁体制を構築していた習近平が、軍事力と資金力とで世界中に覇権を拡大するのを阻止しようと立ちはだかった米国。
対中交易の利益が先立ち腰が重かった欧州勢が、新型コロナ感染元となった中国の姿勢、香港の「一国二制度」を期限を待たず破綻させた国際公約無視の「香港国家安全維持法」の強行、ウイグルやチベットでの民族弾圧、「一帯一路」の債務の罠といった暴挙に、さしもの欧州勢も重い腰をあげ、中国と自由主義陣営との「新冷戦時代」の構図が、より鮮明になったのでした。
この間の欧州勢の動きについて、WSJが振り返った記事を掲載していました。
中国への反発、欧州にどう広がったか - WSJ 2020年12月30日
中国の習近平国家主席は2019年3月、エマニュエル・マクロン仏大統領、アンゲラ・メルケル独首相、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長(当時)に会うため、パリに飛んだ。
シャンパンで乾杯した後、その場にいた関係者の一人によると、習氏は首脳3人に迫った。最近のEUの政策文書では中国を「体制上のライバル」と位置づけているが、それはEUの真意なのかと。
同関係者によると、メルケル氏は習氏への賛辞を込め、その文言は欧州が中国の力と影響力の拡大を認識していることを示すものだと述べた。ユンケル氏は場を和ませようと、中国に関する見解をEU内で統一できないことについて冗談を飛ばした。しかし、マクロン氏は無遠慮だったという。
それは本当だ、貴国はライバルだ。マクロン氏はこう述べた。
数週間後、フランスは軍艦に台湾海峡を航行させて中国を挑発。中国政府は、同国の水域に違法に侵入したと非難した。
中国国内では、習氏の権力は一段と絶対化されている。同氏はライバルを放逐し、反体制派を粛清し、自国の利益を平然と主張できる中国の復活を推進することで自らの人気を高めている。
習氏のビジョンを阻む最大の障害は、国内ではなく、国外にある。中国に対する見方がわずか数年で劇的に変化している国々だ。
かつては中国を憤慨させることを控えていた諸国が、米国の強硬でおおむね超党派的なスタンスに近づきつつあり、顧客やテクノロジー、重要インフラへの中国のアクセスを抑制し始めている。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが10月に実施した調査によると、ほぼ全ての調査対象国で習氏に対する不信感が高水準に達している。
中国は、同国に対する否定的な見方は主に欧米諸国での問題で、米国がたきつけていると述べている。中国外務相高官の1人によると、同国の多くの外交当局者は、自信を高める母国の国民や、たとえ外国当局者を敵に回してでも、中国の威力の高まりを見せつけたがっている指導部を有り難く感じている。
中国当局者は、同国がいかに新型コロナウイルス感染症を封じ込め、世界各地に支援や投資をしているかを強調してきた。中国外務省はこの記事の取材に対し、同国は欧州をライバルではなく戦略的パートナーと見なしていると述べ、国際関係に関する自国の手法を擁護した。「中国の外交は、表面はソフトだが中身はハードだ」
中国への対抗には限界もある。同国には大きな経済力があるため大半の国は過度に強気に出ることができず、多くの国が中国にインフラへの投資やコロナワクチンの供給を期待している。また、米国の欧州同盟国には米政府と見解を異にする部分もあり、トランプ政権からの対中政策での協調要求を頻繁にはぐらかしている。
欧州当局者によると、メルケル氏は依然、中国との関係を維持する意向を変えていない。同氏は、欧州経済と中国経済の結びつきをさらに深める投資協定を締結するEUの取り組みを主導し、米新大統領の就任前に合意を固めようと推し進めている。とはいえ、中国で活動する独企業は5200社に上り、中国の市場力に対するドイツ国内の懸念は高まっている。また、一部のEU議会議員は、協定が締結にこぎ着けても、承認を阻止する構えをちらつかせている。
習氏の国家主席就任当初は、大半の欧州指導者が中国を主にチャンスと見なしていた。その巨大な市場の威力が米国の支配力を相殺する可能性があったためだ。
しかしそれ以来、チェコやスウェーデンなどの比較的小規模な国を中心に、欧州全般で中国に対する反感が高まっている。それらの国では、中国外交当局者の高圧的な行動が怒りをあおり、経営者は中国企業との不公正な競争に対する懸念を強めている。
欧州委員長を務めていたユンケル氏をはじめ、当局者はEU首脳陣の強硬化を舞台裏で後押しした。オーストラリアの外交当局者も同様で、欧州各地を訪れて小国の反中派と他国の反中派との連携を促した。こうした取り組みはほとんど知られていないが、米国の同様の取り組みを補強してきた。
そうした動きは、ドイツをはじめとする欧州の大国に対し、たとえ中国から反発を受けるリスクを冒してでも、地域の利益のために立ち上がるよう一段と圧力をかけてきた。
習氏に対する懸念は、既に2018年には募り始めていた。当時はEUとトランプ政権の関係が緊張化しており、それが欧州と中国を接近させることになるかもしれないとの見方もあった。
同年7月、ユンケル氏をはじめとするEU代表団は北京で習氏と会談した。その数日前には、北大西洋条約機構(NATO)サミットが開かれ、トランプ大統領が同機構から脱退する可能性を示唆し、欧州首脳陣との間に亀裂が生じていた。トランプ氏はインタビューで、EUが米国の最大の敵の1つだと述べ、EU当局者に衝撃を与えた。
対照的に習氏はEU代表団を公式夕食会で迎えた。出席した関係者3人によると、同氏はEU企業に対する機会の提供や気候変動に関する協調を漠然と約束した。
ウエーターが皿を片付けると、習氏の口調が変わったと同関係者は話す。国家主導型の中国モデルは自由貿易のグローバル化時代に繁栄すると習氏は主張。さらに、欧州は「意思決定の遅さ」に阻害され、所得格差がポピュリズムをあおっていると述べ、英国のEU離脱の是非を問う国民投票について言及した。ゲストは痛いところを突かれた。
だがユンケル氏も黙っていなかった。その場にいた関係者2人によると、同氏は「あなたが言う『遅さ』をわれわれは『民主主義』と呼ぶ」と反撃した。
ユンケル氏は、中国が米国との争いで欧州を利用しようとしていると確信した。同氏はEUも同じようにすればいいと側近に語った。それは、中国との対話を利用して米国に対して優位に立つことを意味した。2週間後、同氏はトランプ氏と会談し、電撃的に米欧貿易紛争の休戦で合意した。ユンケル氏はその後退任しており、コメントは得られなかった。
その頃、ドイツ産業界の代表と政策当局者らはベルリン北方にあるツィーテン城に集まり、ロボット工学や自動運転・クリーンエネルギー車などの分野でドイツと競合しようとする中国の野心について、2日間にわたり議論した。中国企業が相次いでドイツの戦略的資産を取得していたことも切迫感を強めた。
財界リーダーらはより強硬な対中政策を働きかけることで合意した。政策文書を用意してドイツと欧州連合(EU)の高官に配り、その中で自由市場経済は「システミックな(体制上の)競争相手」である中国に負ける恐れがあると警鐘を鳴らした。
中国の台頭を懸念するオーストラリアの当局者らはその文言に注目し、ドイツ外務省との会合で何度もそれを繰り返した。オーストラリアは自国産の大麦と牛肉の輸出価格に中国が追加関税を課したのを受け、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の5G通信機器の国内導入を阻止したばかりだった。ドイツは中国への経済依存に伴う問題を過小評価していると、豪当局者は主張した。
だがメルケル氏は中国との関係を拡大したい考えだった。2人の欧州当局者によれば、2020年9月に習氏を訪独させ、EU全加盟国との首脳会談を初めて開催することを非公式に提案したという。同氏は、事前に中国が欧州企業に自国の市場をもっと開放することで、首脳会談で投資協定の署名に至ることを期待していた。
ドイツ政府の報道官は、機密に関わる会話や内部の協議についてはコメントしないと述べた。
昨年初め頃のEUの政策文書は中国について、単なるパートナーや競争相手ではなく、「システミックライバル」と呼んでいる。この表現は欧州に駐在する中国の外交官らを驚かせたと、関係筋の一人は明かした。
中国の外交官らは「ライバル」を辞書で調べ、あらゆる含意についてより理解しようとした。その後、公式に説明を求め、ライバルという言葉にEUは敵という意味を込めていたのか、と問いただした。
習氏は2019年3月、マクロン氏と会談するためにパリに到着した際、同じ質問を用意していた。マクロン氏はアフリカでの影響力などを巡り、中国に不満を抱いていた。同氏はユンケル氏とメルケル氏に会談への参加を求めた。
「システミックライバル」の話題が出ると、習氏は明らかに不機嫌になっていったと、その場にいた当局者は明かした。この当局者によれば、ユンケル氏は場の空気を和らげようとして、母国ルクセンブルクが中国に宣戦布告しなかったのは、小国すぎて捕虜を収容しきれないからだと冗談を言ったという。
EU当局者との協議をさらに数週間続けた後、中国政府は自国の市場にEUがより広範囲に参入できるようにする意向を伝えた。中国企業が欧州でそうしているように、欧州企業も原則として中国で取引・投資ができるようになるはずだった。
だが、その約束の実現に向けた協議は数カ月で行き詰まった。貿易の流れを促すどころか、中国は自国民の感情を傷つけたとする欧州の行為を罰する新たな制限をちらつかせた。
中国政府はチェコのプラハ市立管弦楽団の中国訪問を中止させた。台湾の地位を巡り同市の市長と対立したことを理由に挙げた。ファーウェイに対してチェコが警告したことの報復でもあると、中国大使はのちにチェコの外交官に伝えた。
中国大使はその後、72歳のチェコ上院議員の台湾訪問計画に文書で警告した。関係が改善しなければ、中国に輸出する数少ないチェコ企業の一つであるピアノメーカーのペトロフが影響を受けるという。
数日後、この上院議員は心臓発作で死亡した。中国のバイヤーへのピアノ11台の販売は実現しなかった。
チェコの富豪がこのピアノを購入した。同国の政治家や財界人、学者ら計90人が台湾に飛んだ。ある当局者は、中国大使から苦情の電話があったが、大使の話している間は受話器を置いて無視したと振り返る。
中国外務省は質問への回答の中で、チェコの当局者らの最近の行動に対して「重大な懸念と強い不満」を表明した。こうした行動は「中国の中核的利益にかかる混乱をもたらした」としている。
今春の終わりには、他の諸国も中国に対して声を上げ始めた。英国の元植民地だった香港で抗議デモが続く中、英国はEU加盟諸国に強硬姿勢を強めるよう説得を開始し、香港の自由を制限する中国の計画に関する12項目の文書を配布した。中国への香港返還を巡り1984年に中国と英国との間で交わされ、一定の自由を明記した合意に習氏が違反していると、英当局者らは主張した。
EUは7月下旬、香港との犯罪人引き渡し条約の停止を含む制裁措置を承認した。いかなるセキュリティーリスクも管理可能だと表明していた英国は、自国の通信会社がファーウェイの機器を購入するのを禁止した。
メルケル氏は孤立を深めているようだった。同氏が提唱し、9月にライプチヒで開催予定だったEUと中国の首脳会議は、コロナ禍でビデオ会議での開催となった。しかも参加者は習氏とメルケル氏、2人のEU高官だけだった。
主要議題は貿易のはずだったが、1時間が経過したころ、EU高官の一人であるシャルル・ミシェルEU大統領は人権問題で中国に圧力をかけ始めた。習氏は統計を引き合いに出し始め、ドイツでは反ユダヤ主義に関わる事件が10%増加していると指摘した。また、米国の「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切=BLM)」運動が他国にも波及しているとほのめかしたほか、海で移民が溺死していることにも言及した。ビデオ会議に参加した当局者2人が明かした。
参加者らと中国の国営通信社によれば、習氏は「われわれはどのような説教も受け入れない。完璧な経歴の持ち主など存在しない」と述べたという。
ミシェル氏は、EUには少なくとも人権問題を解決するための政策があると応じた。前出の当局者2人によると、メルケル氏は「われわれは完璧とはほど遠いが、核心が問われるような質問には対処する用意がある」と述べたという。
ビデオ会議が終了するまでに、どちらの側も貿易についての進展はあまり見られなかった。
数週間後、ジョセップ・ボレルEU外交安全保障上級代表はマイク・ポンペオ米国務長官と電話会談し、米国と欧州は対中国で協調すべきであるという目標を共有することで一致した。その協調関係はジョー・バイデン次期米大統領が就任すれば強化されることになると、ボレル氏は最近述べている。
中国の習近平国家主席は2019年3月、エマニュエル・マクロン仏大統領、アンゲラ・メルケル独首相、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長(当時)に会うため、パリに飛んだ。
シャンパンで乾杯した後、その場にいた関係者の一人によると、習氏は首脳3人に迫った。最近のEUの政策文書では中国を「体制上のライバル」と位置づけているが、それはEUの真意なのかと。
同関係者によると、メルケル氏は習氏への賛辞を込め、その文言は欧州が中国の力と影響力の拡大を認識していることを示すものだと述べた。ユンケル氏は場を和ませようと、中国に関する見解をEU内で統一できないことについて冗談を飛ばした。しかし、マクロン氏は無遠慮だったという。
それは本当だ、貴国はライバルだ。マクロン氏はこう述べた。
数週間後、フランスは軍艦に台湾海峡を航行させて中国を挑発。中国政府は、同国の水域に違法に侵入したと非難した。
中国国内では、習氏の権力は一段と絶対化されている。同氏はライバルを放逐し、反体制派を粛清し、自国の利益を平然と主張できる中国の復活を推進することで自らの人気を高めている。
習氏のビジョンを阻む最大の障害は、国内ではなく、国外にある。中国に対する見方がわずか数年で劇的に変化している国々だ。
かつては中国を憤慨させることを控えていた諸国が、米国の強硬でおおむね超党派的なスタンスに近づきつつあり、顧客やテクノロジー、重要インフラへの中国のアクセスを抑制し始めている。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが10月に実施した調査によると、ほぼ全ての調査対象国で習氏に対する不信感が高水準に達している。
中国は、同国に対する否定的な見方は主に欧米諸国での問題で、米国がたきつけていると述べている。中国外務相高官の1人によると、同国の多くの外交当局者は、自信を高める母国の国民や、たとえ外国当局者を敵に回してでも、中国の威力の高まりを見せつけたがっている指導部を有り難く感じている。
中国当局者は、同国がいかに新型コロナウイルス感染症を封じ込め、世界各地に支援や投資をしているかを強調してきた。中国外務省はこの記事の取材に対し、同国は欧州をライバルではなく戦略的パートナーと見なしていると述べ、国際関係に関する自国の手法を擁護した。「中国の外交は、表面はソフトだが中身はハードだ」
中国への対抗には限界もある。同国には大きな経済力があるため大半の国は過度に強気に出ることができず、多くの国が中国にインフラへの投資やコロナワクチンの供給を期待している。また、米国の欧州同盟国には米政府と見解を異にする部分もあり、トランプ政権からの対中政策での協調要求を頻繁にはぐらかしている。
欧州当局者によると、メルケル氏は依然、中国との関係を維持する意向を変えていない。同氏は、欧州経済と中国経済の結びつきをさらに深める投資協定を締結するEUの取り組みを主導し、米新大統領の就任前に合意を固めようと推し進めている。とはいえ、中国で活動する独企業は5200社に上り、中国の市場力に対するドイツ国内の懸念は高まっている。また、一部のEU議会議員は、協定が締結にこぎ着けても、承認を阻止する構えをちらつかせている。
習氏の国家主席就任当初は、大半の欧州指導者が中国を主にチャンスと見なしていた。その巨大な市場の威力が米国の支配力を相殺する可能性があったためだ。
しかしそれ以来、チェコやスウェーデンなどの比較的小規模な国を中心に、欧州全般で中国に対する反感が高まっている。それらの国では、中国外交当局者の高圧的な行動が怒りをあおり、経営者は中国企業との不公正な競争に対する懸念を強めている。
欧州委員長を務めていたユンケル氏をはじめ、当局者はEU首脳陣の強硬化を舞台裏で後押しした。オーストラリアの外交当局者も同様で、欧州各地を訪れて小国の反中派と他国の反中派との連携を促した。こうした取り組みはほとんど知られていないが、米国の同様の取り組みを補強してきた。
そうした動きは、ドイツをはじめとする欧州の大国に対し、たとえ中国から反発を受けるリスクを冒してでも、地域の利益のために立ち上がるよう一段と圧力をかけてきた。
習氏に対する懸念は、既に2018年には募り始めていた。当時はEUとトランプ政権の関係が緊張化しており、それが欧州と中国を接近させることになるかもしれないとの見方もあった。
同年7月、ユンケル氏をはじめとするEU代表団は北京で習氏と会談した。その数日前には、北大西洋条約機構(NATO)サミットが開かれ、トランプ大統領が同機構から脱退する可能性を示唆し、欧州首脳陣との間に亀裂が生じていた。トランプ氏はインタビューで、EUが米国の最大の敵の1つだと述べ、EU当局者に衝撃を与えた。
対照的に習氏はEU代表団を公式夕食会で迎えた。出席した関係者3人によると、同氏はEU企業に対する機会の提供や気候変動に関する協調を漠然と約束した。
ウエーターが皿を片付けると、習氏の口調が変わったと同関係者は話す。国家主導型の中国モデルは自由貿易のグローバル化時代に繁栄すると習氏は主張。さらに、欧州は「意思決定の遅さ」に阻害され、所得格差がポピュリズムをあおっていると述べ、英国のEU離脱の是非を問う国民投票について言及した。ゲストは痛いところを突かれた。
だがユンケル氏も黙っていなかった。その場にいた関係者2人によると、同氏は「あなたが言う『遅さ』をわれわれは『民主主義』と呼ぶ」と反撃した。
ユンケル氏は、中国が米国との争いで欧州を利用しようとしていると確信した。同氏はEUも同じようにすればいいと側近に語った。それは、中国との対話を利用して米国に対して優位に立つことを意味した。2週間後、同氏はトランプ氏と会談し、電撃的に米欧貿易紛争の休戦で合意した。ユンケル氏はその後退任しており、コメントは得られなかった。
その頃、ドイツ産業界の代表と政策当局者らはベルリン北方にあるツィーテン城に集まり、ロボット工学や自動運転・クリーンエネルギー車などの分野でドイツと競合しようとする中国の野心について、2日間にわたり議論した。中国企業が相次いでドイツの戦略的資産を取得していたことも切迫感を強めた。
財界リーダーらはより強硬な対中政策を働きかけることで合意した。政策文書を用意してドイツと欧州連合(EU)の高官に配り、その中で自由市場経済は「システミックな(体制上の)競争相手」である中国に負ける恐れがあると警鐘を鳴らした。
中国の台頭を懸念するオーストラリアの当局者らはその文言に注目し、ドイツ外務省との会合で何度もそれを繰り返した。オーストラリアは自国産の大麦と牛肉の輸出価格に中国が追加関税を課したのを受け、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の5G通信機器の国内導入を阻止したばかりだった。ドイツは中国への経済依存に伴う問題を過小評価していると、豪当局者は主張した。
だがメルケル氏は中国との関係を拡大したい考えだった。2人の欧州当局者によれば、2020年9月に習氏を訪独させ、EU全加盟国との首脳会談を初めて開催することを非公式に提案したという。同氏は、事前に中国が欧州企業に自国の市場をもっと開放することで、首脳会談で投資協定の署名に至ることを期待していた。
ドイツ政府の報道官は、機密に関わる会話や内部の協議についてはコメントしないと述べた。
昨年初め頃のEUの政策文書は中国について、単なるパートナーや競争相手ではなく、「システミックライバル」と呼んでいる。この表現は欧州に駐在する中国の外交官らを驚かせたと、関係筋の一人は明かした。
中国の外交官らは「ライバル」を辞書で調べ、あらゆる含意についてより理解しようとした。その後、公式に説明を求め、ライバルという言葉にEUは敵という意味を込めていたのか、と問いただした。
習氏は2019年3月、マクロン氏と会談するためにパリに到着した際、同じ質問を用意していた。マクロン氏はアフリカでの影響力などを巡り、中国に不満を抱いていた。同氏はユンケル氏とメルケル氏に会談への参加を求めた。
「システミックライバル」の話題が出ると、習氏は明らかに不機嫌になっていったと、その場にいた当局者は明かした。この当局者によれば、ユンケル氏は場の空気を和らげようとして、母国ルクセンブルクが中国に宣戦布告しなかったのは、小国すぎて捕虜を収容しきれないからだと冗談を言ったという。
EU当局者との協議をさらに数週間続けた後、中国政府は自国の市場にEUがより広範囲に参入できるようにする意向を伝えた。中国企業が欧州でそうしているように、欧州企業も原則として中国で取引・投資ができるようになるはずだった。
だが、その約束の実現に向けた協議は数カ月で行き詰まった。貿易の流れを促すどころか、中国は自国民の感情を傷つけたとする欧州の行為を罰する新たな制限をちらつかせた。
中国政府はチェコのプラハ市立管弦楽団の中国訪問を中止させた。台湾の地位を巡り同市の市長と対立したことを理由に挙げた。ファーウェイに対してチェコが警告したことの報復でもあると、中国大使はのちにチェコの外交官に伝えた。
中国大使はその後、72歳のチェコ上院議員の台湾訪問計画に文書で警告した。関係が改善しなければ、中国に輸出する数少ないチェコ企業の一つであるピアノメーカーのペトロフが影響を受けるという。
数日後、この上院議員は心臓発作で死亡した。中国のバイヤーへのピアノ11台の販売は実現しなかった。
チェコの富豪がこのピアノを購入した。同国の政治家や財界人、学者ら計90人が台湾に飛んだ。ある当局者は、中国大使から苦情の電話があったが、大使の話している間は受話器を置いて無視したと振り返る。
中国外務省は質問への回答の中で、チェコの当局者らの最近の行動に対して「重大な懸念と強い不満」を表明した。こうした行動は「中国の中核的利益にかかる混乱をもたらした」としている。
今春の終わりには、他の諸国も中国に対して声を上げ始めた。英国の元植民地だった香港で抗議デモが続く中、英国はEU加盟諸国に強硬姿勢を強めるよう説得を開始し、香港の自由を制限する中国の計画に関する12項目の文書を配布した。中国への香港返還を巡り1984年に中国と英国との間で交わされ、一定の自由を明記した合意に習氏が違反していると、英当局者らは主張した。
EUは7月下旬、香港との犯罪人引き渡し条約の停止を含む制裁措置を承認した。いかなるセキュリティーリスクも管理可能だと表明していた英国は、自国の通信会社がファーウェイの機器を購入するのを禁止した。
メルケル氏は孤立を深めているようだった。同氏が提唱し、9月にライプチヒで開催予定だったEUと中国の首脳会議は、コロナ禍でビデオ会議での開催となった。しかも参加者は習氏とメルケル氏、2人のEU高官だけだった。
主要議題は貿易のはずだったが、1時間が経過したころ、EU高官の一人であるシャルル・ミシェルEU大統領は人権問題で中国に圧力をかけ始めた。習氏は統計を引き合いに出し始め、ドイツでは反ユダヤ主義に関わる事件が10%増加していると指摘した。また、米国の「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切=BLM)」運動が他国にも波及しているとほのめかしたほか、海で移民が溺死していることにも言及した。ビデオ会議に参加した当局者2人が明かした。
参加者らと中国の国営通信社によれば、習氏は「われわれはどのような説教も受け入れない。完璧な経歴の持ち主など存在しない」と述べたという。
ミシェル氏は、EUには少なくとも人権問題を解決するための政策があると応じた。前出の当局者2人によると、メルケル氏は「われわれは完璧とはほど遠いが、核心が問われるような質問には対処する用意がある」と述べたという。
ビデオ会議が終了するまでに、どちらの側も貿易についての進展はあまり見られなかった。
数週間後、ジョセップ・ボレルEU外交安全保障上級代表はマイク・ポンペオ米国務長官と電話会談し、米国と欧州は対中国で協調すべきであるという目標を共有することで一致した。その協調関係はジョー・バイデン次期米大統領が就任すれば強化されることになると、ボレル氏は最近述べている。
「一帯一路」の覇権拡大ロードを欧州へ伸ばしたい習近平。2019年3月、マクロン仏大統領、メルケル独首相、欧州委員会のユンケル委員長(当時)とパリで会談したのだそうです。
そこで習近平は、最近のEUの政策文書では中国を「体制上のライバル」と位置づけているが、それはEUの真意なのかと、3人の首脳に迫ったのだそうです。
メルケル氏は習氏への賛辞を込め、その文言は欧州が中国の力と影響力の拡大を認識していることを示すものだと述べ、ユンケル氏は場を和ませようと、中国に関する見解をEU内で統一できないことについて冗談を飛ばしたのだそうです。
しかし、マクロン氏は無遠慮に、それは本当だ、貴国はライバルだと述べたのだそうです。そして、数週間後、フランスは軍艦に台湾海峡を航行させて中国を挑発。中国政府は、同国の水域に違法に侵入したと非難したのでした。
習氏のビジョンを阻む最大の障害は、国内ではなく、国外にある。中国に対する見方がわずか数年で劇的に変化している国々だとWSJの記事。
かつては中国を憤慨させることを控えていた諸国が、米国の強硬でおおむね超党派的なスタンスに近づきつつあり、顧客やテクノロジー、重要インフラへの中国のアクセスを抑制し始めていると。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが10月に実施した調査によると、ほぼ全ての調査対象国で習氏に対する不信感が高水準に達しているのですね。(冒頭のグラフを参照ください)
しかし、中国には大きな経済力があるため多くの国が。インフラへの投資やコロナワクチンの供給を期待している大半の国は過度に強気に出ることができず、中国への対抗には限界もあるのも現状。
しかし、そこで生じている「債務の罠」も近年は露呈してきていますね。
欧州当局者によると、メルケル氏は依然、中国との関係を維持する意向を変えていない。同氏は、欧州経済と中国経済の結びつきをさらに深める投資協定を締結するEUの取り組みを主導し、米新大統領の就任前に合意を固めようと推し進めていると。
しかし、中国の市場力に対するドイツ国内の懸念は高まっている。また、一部のEU議会議員は、協定が締結にこぎ着けても、承認を阻止する構えをちらつかせているのだそうです。
チェコやスウェーデンなどの比較的小規模な国を中心に、欧州全般で中国に対する反感が高まっている。それらの国では、中国外交当局者の高圧的な行動が怒りをあおり、経営者は中国企業との不公正な競争に対する懸念を強めているとも。
習氏に対する懸念は、既に2018年には募り始めていた。当時はEUとトランプ政権の関係が緊張化しており、それが欧州と中国を接近させることになるかもしれないとの見方もあった。
一方、2018年7月、習氏はEU代表団との公式夕食会で、国家主導型の中国モデルは自由貿易のグローバル化時代に繁栄すると主張。さらに、欧州は「意思決定の遅さ」に阻害され、所得格差がポピュリズムをあおっていると述べ、英国のEU離脱の是非を問う国民投票について言及したのだそうです。
これには、ユンケル氏が、「あなたが言う『遅さ』をわれわれは『民主主義』と呼ぶ」と反撃したのだと。
ユンケル氏は、中国が米国との争いで欧州を利用しようとしていると確信し、2週間後、トランプ氏と会談し、電撃的に米欧貿易紛争の休戦で合意したのだそうです。
その頃、ドイツ産業界の代表と政策当局者らはベルリン北方にあるツィーテン城に集まり、ドイツと競合しようとする中国の野心について、2日間にわたり議論。財界リーダーらはより強硬な対中政策を働きかけることで合意。自由市場経済は「システミックな(体制上の)競争相手」である中国に負ける恐れがあると警鐘を鳴らしたのだそうです。
昨年初め頃のEUの政策文書は中国について、単なるパートナーや競争相手ではなく、「システミックライバル」と呼んでいたのだそうで、この表現は欧州に駐在する中国の外交官らを驚かせたのだと。
2019年3月、パリを訪問した習近平は、「システミックライバル」の話題が出ると、あきらかにに不機嫌になっていったのだそうです。
協議をさらに数週間続けた後、中国政府は自国の市場にEUがより広範囲に参入できるようにする意向を伝えたのだそうです。
だが、その約束の実現に向けた協議は数カ月で行き詰まったのでした。理由は、貿易の流れを促すどころか、中国は自国民の感情を傷つけたとする欧州の行為を罰する新たな制限をちらつかせたから。
今春、香港で抗議デモが続く中、英国はEU加盟諸国に強硬姿勢を強めるよう説得を開始。他の諸国も中国に対して声を上げ始めたと、WSJ。
EUは7月下旬、香港との犯罪人引き渡し条約の停止を含む制裁措置を承認。
メルケル氏が提唱し、9月にライプチヒで開催予定だったEUと中国の首脳会議は、コロナ禍でビデオ会議での開催となったのだそうですが、参加者は習氏とメルケル氏、2人のEU高官だけだったのだそうです。メルケル氏の孤立化は顕著。
ビデオ会議が終了するまでに、どちらの側も貿易についての進展はあまり見られなかったのだそうです。
数週間後、ジョセップ・ボレルEU外交安全保障上級代表はマイク・ポンペオ米国務長官と電話会談し、米国と欧州は対中国で協調すべきであるという目標を共有することで一致したのだと。
欧州諸国との連携を重視すると言われているバイデン氏が大統領になる2021年。
チャイナゲート問題を抱えるバイデン大統領。「新冷戦時代」を優勢に展開させてきたトランプ氏の対中外交を、引き続き優勢に維持できるか。自由主義陣営の運命かを背負っていただくのですが、頑張っていただきたい。
# 冒頭の画像は、習近平氏が国際問題に対し正しいことをしていないという各国の評価のグラフ
この花の名前は、福寿草
↓よろしかったら、お願いします。