Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

21g

2007-10-03 | 外国映画(な行)
★★★★☆ 2003年/アメリカ 監督/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

「ナオミ・ワッツが最高」


前作「アモーレス・ペロス」も3つの異なる物語を進行する形式だったが、その結末はいささか物足りないものだった。しかし、「21g」はお見事のひと言。3つの物語が繋がったり、離れたりしながら錯綜するアレハンドロ独特の手法は、非常にドラマチックかつ緻密。錯綜する間にもそれぞれの物語の時間軸が前後するという、驚くべきつなげ方にも関わらず、それが混乱をきたすことは全くなく、逆に物語にダイナミズムを与えている。まさに「誰にも真似できない」映画である。

ざらついた映像、手持ちカメラによる揺れ、リアルな演出。「生々しい」という言葉が一番しっくり来るだろうか。運命にあらがえず、もがき苦しむ全ての登場人物たち。その激しい呼吸音が耳元で聞こえてきそうな、圧倒的な臨場感が迫る。もともと演技派と呼ばれる俳優陣だが、今作における魂の入りようは半端ではなく、アレハンドロの演出が彼らのすさまじいまでの演技を引き出したのは言うまでもない。

ガエル・ガルシア・ベルナル、ベニチオ・デル・トロ、ショーン・ペン、ブラッド・ピット。アレハンドロと私の好みは、ドンピシャ(笑)。ここに、これまた私の好きな役所広司が入るんだから、「バベル」が楽しみでしようがない。汗臭い役所広司がどこまで汗臭くなってんのか、興味津々。

ナオミ・ワッツは「マルホランド・ドライブ」に匹敵するすばらしさで、激しい嗚咽でいくらメイクが崩れようとも演技の迫力の方が勝る希有な女優になりつつある。そして、シャルロット・ゲンズブール!あのアンニュイなフランス娘がしっかりアレハンドロの世界に溶け込んでいるではありませんか。アレハンドロは俳優の存在感を引き出すのがすごくうまいんだね。こぞっていろんな俳優が出たがるのがすごくわかる。

神は何故これほどまでに我々を過酷な運命を与えたもうたか。
皮肉な運命で結びつく3つの魂。
絶望の淵にいながらも、なおかつ「生きる」という選択肢を選ぶ3人の生き様がちんたら日々を過ごしている我々に強烈なパンチを喰らわせる。