Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

とらばいゆ

2007-10-27 | 日本映画(た行)
★★★★ 2001年/日本 監督/大谷健太郎

「優しすぎる男たち」


デビュー作「アベックモンマリ」同様、2組の男女が織りなす四角関係をベースにした物語。とってもミニマムなシチュエーションなんだけど、セリフのやり取りがとっても面白くって、こういう作風の映画大好き。エリック・ロメールあたりのフランス映画っぽい雰囲気なんだよね。

「働きマン」ってマンガ、あたしは大好きなんだけど、今「闘ってるオンナ」ってすごく多い。主人公の麻美(瀬戸朝香)も闘うオンナなんだ。なんせ女性棋士ですからね。将棋の世界はまだまだ男性優位で、そんな業界で彼女は奮闘している。しかも、最近スランプでB級クラスから墜ちてしまいそうな崖っぷち状態。

そんな彼女に接するダンナの一哉(塚本晋也)が、びっくりするくらい優しい男なのだ。サラリーマンの彼は、疲れて仕事から帰ってきても部屋は真っ暗。晩ご飯ができていないのを見越してわざわざ二人分弁当買ってきても「今、こんなの食べてる気分じゃない!」と弁当をたたき落とされる始末。で、そこでこのセリフ「だって麻美、とんとん亭の酢豚弁当好きじゃないか。これで元気が出ると思ったからさあ…」

オーマイガッ!優しすぎるぜ、一哉くん。でね、この優しさは最後まで変わることがないんだよ。こりゃあ、まるで「母の無償の愛」ですよ。一哉があんまり優しすぎるもんで、最初は一哉のキャラクターってのは、何かを皮肉ってんのか、バカにしてんのか、とにかく何かをシンボライズしたくてわざとここまで優しい男に描いてんのか、と斜めに見ていたわけ。ところがね、この男はほんまもんのピュア男なんですよ。

それもこれも、塚本晋也がすごくいいからなんだ。ワタクシ、塚本晋也は監督としては正直肌に合わないの。でもね、俳優塚本晋也はいいんだよね。あの過激な映画を撮ってる塚本晋也が、頼りなさげ、でもスッゴイいい奴!という優しさの権化みたいな男を飄々と演じております。

で、この夫婦と対を成すのが麻美の妹、里奈(市川美日子)と彼氏の弘樹(村上淳)。妹もまた女性棋士で闘うオンナ。弘樹は居候の身だから、と毎日晩ご飯作って、待ってんの。対局の日も「そばにいたいから」と言って外で待ってるし、これまた優しい男なんだわ。

さて、この映画2001年の作品なんですけど、こういった「優しすぎる男たち」って、今見るとさらにハマる。監督の大谷氏は「NANA」シリーズに抜擢されたんだけど、こちらは未見。また、こういうミニマムな映画を撮って欲しいなあ。