Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

くりぃむレモン

2008-04-02 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2004年/日本 監督/山下敦宏
「実にセリフが少ない。それがとてもいい」


兄と妹から男と女になって、心と体を通わせる。今まで蓋をしていた感情が開放され、24時間裸で抱き合っていたいという思いで心がいっぱいになる。いやあ、甘酸っぱいですね。「兄と妹の恋」という言葉から連想されるアブノーマルな香りは全然ありません。むしろ、非常にセリフの少ない、やけに落ち着いた雰囲気の作品でじっくりと鑑賞してしまいました。特に妹の亜美の口数の少なさが際だっていて、時折ぽつんとつぶやく言葉の中に様々な感情を読み取ってしまう。セリフが少ないことで、ふたりの言葉に出せない「もやもや」もより伝わってくる。

そして、ゆったりとしたカメラの動きが印象的。スクリーンの左右を上手に使って、空間を作り出す。部屋の中でゆっくりカメラを回して、余韻を出す。それらは取り立ててすごいテクニックというわけではなく、おそらく映画作りにおける基本的な空間演出なのだろうけど、セリフが少なくて静かな映画なのでとても効果的に見えます。

で、これまた、「ダメ男」の映画ですけども、このおにいちゃんは、妹が好きで好きでたまんないってのを全面に出してていいですね。憎めません。水橋研二くん、最近観ませんけど、どうしているんでしょう。それから山下監督は、ラストカットがうまいです。本作も、なかなか素敵です。ラストをどうするかって、物語が波瀾万丈な方がイージーだと思うんです。反して、この作品はふたりがどうなるってのを完結させるわけでもなく、ぶっちゃけ物語は途中で切れちゃうわけですが、それでもこのラストシーンの甘酸っぱいような、清々しいような気分は何でしょう。引き際が上手なんだな、山下監督は。