Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

シカゴ

2008-04-04 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2003年/アメリカ 監督/ロブ・マーシャル
「ナイスバディに酔う」


俳優の惜しみない努力を当然と見るハリウッドに感服。それはもちろん、キャサリン・ゼタ・ジョーンズとレニー・ゼルウィガー、ご両人のこと。役作りのためにサーフィン習いました、とか、病院実習行きました、なんてのが子どもの戯れ言に聞こえる。いや、それはもちろん努力しないよりした方がいいに決まっているのだけれどね。キャサリンの見事な開脚、レニーのお尻ぷりっぷりのキャットウォーク。一体、彼女たちはどれほどの努力をしたのでしょうか。見上げたプロ根性です。そして、脇を固める超ナイスバディなダンサーたち。女のアタシもクラックラ来ちゃいました。

「ドリーム・ガールズ」のビル・コンドンが脚本担当ですが、やはりこの人は通常の演技の部分とミュージカルシーンの境目、つまり歌への導入部分が実にスムーズに行くよう配慮しているのだというのがよくわかる。よって、私のようなミュージカル嫌いでも存分に楽しめる。ミュージカルの何がイヤって、突然歌い出すあの感じなの。でも、ストーリー全体の流れからミュージカルシーンが浮いてない。流れを大事にした上で、もっともっとスピード感を出そうと試みたのが「ドリーム・ガールズ」なんでしょう。しかし、冒頭においては「シカゴ」の勝ち。遅れてきた主役キャサリン・ゼタ・ジョーンズが楽屋で慌ただしく衣装を身につけ、手に付いた血を拭いて、いきなりセクシーなダンスで舞台に登場。歌い終わると、即殺人犯で刑務所送り。ぼーっとしてると置いてけぼりをくらいそうな実に鮮やかなプロローグです。

「シカゴ」は文字通りシカゴ、「ドリーム・ガールズ」はデトロイト、そしてただ今公開中の「ヘアスプレー」はボルチモア。昨今のアメリカのミュージカルムービーは、地方都市らしさというのを存分に映し出しているのが特徴。「シカゴ」では禁酒法の話題はちらっとしか登場しないけど、むせかえるタバコの煙に包まれたキャバレーとショーガールたちのエロティックなコスチュームから、時代の空気がぷんぷん匂う。セットや小道具など、当時を彷彿させるこれぞプロ!と呼ぶべき作り込みもまた、観客を物語へぐいぐい引き込む大きな要因になっているのは間違いないだろうと思う。


サンシャイン2057

2008-04-04 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2006年/イギリス 監督/ダニー・ボイル
「かなり抑制されたSF作品」

なぜか「中庸」という言葉を思い浮かべてしまった。SF大作と聞いてまず想像するのは壮大な物語とダイナミックな宇宙の映像だろう。しかし、本作品は、そのいずれもが抑制の効いた見せ方になっている。なるほど。映画館に見に行った方々の評価が芳しくなかったのもうなずける。シネコンにSF大作を見に行く人が期待するものを満足させてくれるものは、ここにはないかも知れない。

でも、私はそれなりに面白かった。それは、SFアドベンチャー的要素を過剰に盛り込まない行為、すなわち観客への裏切りを楽しむことができたから。まず本作、クルーをちゃんと紹介してくれない。宇宙船という閉じた空間で起きる人間ドラマ。ならば、まずはメンバー紹介をしてくれないとわからんではないか。なのに、物語はどんどん進む(笑)。しかも、イカロス1号はすでに行方不明になっているなど、まるで途中から見始めたような錯覚を覚える。ものすごく説明不足なのだ。これでつまずく人は正直多いかも知れない。しかし、私は、この語らなさは製作者の挑戦だと思って、そんなら受けて立つぞ、って気持ちになって一生懸命見てしまった。

「太陽の光に魅入られる」というコンセプトは、なかなか面白い。間近で見れば間違いなく視力を失う。なのにもっと近くで見たい、という欲求に逆らえないクルーたち。おそらくSFものって言うのは、宗教観とは切っても切れない。やっぱり宇宙に出ることは、神に触れることなのだろうし。でも、その宗教臭さの代わりに「太陽光」への畏敬の念をもってきた。それはなかなか新しい視点じゃないだろうか。

クルーが一人ずついなくなってしまう。まあ、ちょっと予測できる展開ではあるけど、最終的に核弾頭を投げ込む人物をヒーローにおだてあげたりしないのは好感が持てる。しかし、クルー同士の信頼や裏切りといった部分にもう少しドラマ性が欲しい。まあ、いろんな意味で裏切られる映画。そこを楽しめるかどうかですね。そして、全体的にとても地味なトーンなのに、船外で着る宇宙服だけが、目もくらむばかりのピッカピカの黄金宇宙服。これまた、妙な残像。