Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者

2009-06-09 | 日本映画(あ行)
ちょっとマニアックな邦画をご紹介。日活ロマンポルノなんですけれども、これは傑作。

★★★★★ 1976年/日本 監督/田中登
「宮下順子、ファム・ファタル」


乱歩の原作「屋根裏の散歩者」と「人間椅子」をミックスさせたオリジナル脚本が二重三重の深いテーマを放つすばらしい作品。人生に冷めた郷田(石橋連司)という男が、己のエロスを持てあます女、美那子(宮下順子)の招きによって、「あちらの世界」から「こちらの世界」に引きずりこまれる、つまり境界線を越えるというお話であり、殺人をもって男が女に愛を証明するというSM的愛の物語であり、運命の女に出会う純然たるラブストーリーでもあります。

しかも、件の毒薬殺人のあと、屋根裏を介して見つめ合った視線が、最後には生け贄を介してこちらの世界で絡み合い、エロスからタナトスへと昇華する。いやはや、76分でこの密度は凄いのひと言です。

とにもかくにも、ピエロの愛撫を受けながら屋根裏に視線を投げつける宮下順子が圧巻。「そんなところで何やってるの」「早く出てきなさいよ」と挑む目が強烈。見事なファム・ファタルぶりです。洋装の貴婦人という設定で、登場の度にちょこんと斜めにかぶる洋帽子が違うのですが、そのどれもこれもが美しくて、ファッションも堪能できます。

やっぱり日活ロマンポルノという土俵でこれだけ観念的な世界を築き上げているところが、私はすごく好きですね。お高く止まっていないというか。エロもちゃんとあるし、乱歩らしい毒気や耽美もある。何ともサービス満点な傑作。