Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

屋根裏の散歩者

2009-06-10 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★ 1992年/日本 監督/実相寺昭雄
「覗き男はいつまでも覗き男」

本作は映画館で見ましたが、田中版が傑作なので、今一度見比べ鑑賞。これはこれで、面白いです。実相寺監督お得意の斜め構図炸裂ですけど、違和感なく座りがいいですし、旅館の住人たちが大変個性的な魅力を放っています。最後の寺山俳優、三上博史が覗き野郎という皮肉なキャスティングも面白い。

階下の部屋から籠もれ入る光が交差する屋根裏が大変幻想的。迷宮の入口のようです。光に導かれて、今日はどの穴を覗こうかと毎夜徘徊する。そりゃこれだけ淫靡な世界が展開しているんだったら、毎日覗きたくもなります。ちょっと残念なのはエロが強すぎて、殺人事件が薄れてしまっていることでしょうか。どんなセックスを覗き見ようとも、自分の手で人を殺すことを決断したら、それは強いリビドーを引き起こすものだと思います。しかし、住人たちの倒錯ぶりにやや押され気味なんですよね。

殺人を犯した郷田はこちらの世界に降りてきて、淫乱作家とセックスもどきの遊びをするけど、やっぱり面白くも何ともない。人を殺しても何も変わらない。郷田の抱える虚無がラストにもっと際立ってもいいのになあと思います。が、何ともゆるく終わってしまう感じこそ、この作品の持ち味なのかも知れません。