Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

青春の蹉跌

2011-04-24 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 1974年/日本 監督/神代辰巳

「エンヤートット、エンヤートット」

アメフト部のスター選手の賢一郎(萩原健一)は、かつて学生運動に身を投じたこともあったが今では法学部学生としてエリートの階段を着実に昇りつつあった。名家の令嬢(檀ふみ)との婚約も控え、社会的地位と財産をも手中にしていたが、家庭教師先で知り合った教え子(桃井かおり)と遊びの関係を持ち、彼女が妊娠してしまう…


本作についての批評や感想を読んでいると、ショーケンが(頭の中で)唄っている「エンヤートット、エンヤートット」というフレーズがみんな印象的みたいで、私もこの歌声が映画を見終わってからも頭から離れなかった。「バイブレータ」で頭の中の声に悩まされるのは独身ライター女性だったけど、この頃は若い男たちなんだよね。時代を感じる。自分の中に渦巻く焦燥感やいらだちが、この意味のないエンヤートットというリフレインで実に巧く表現されている。このアイデアはショーケンだった、って話をどっかで聞いたけど。

いいとこのお嬢さんと結婚するために、妊娠しちゃった遊び相手を捨てると言う、ストーリーとしては、本当にありきたりで陳腐なんだけどね。やっぱ、神代監督だけに男と女の切っても切れない関係性をじっとり描いていて引き込まれる。それにしても、ショーケンの演技がすっごいヘタでビックリ(笑)。まあ、演技力よりも存在感が大事ってことかな。

今や皇后様を演じる桃井かおりだけど、若い頃は不器用でバカな女をやらされたら、この人の右に出る者ナシだね。まるで、雨の日に捨てられた子猫のよう。助けてあげないと生きていけないけど、不要になればいつでもうち捨てられるような、そんな薄幸さがにじみ出ていた。