Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

あゝ、荒野 完全版

2018-03-01 | 日本映画(あ行)
★★★★☆ 2017年/日本 監督/岸善幸

(U-NEXT)

親に捨てられた新次、親から虐待を受けて育った吃音の健二。
ボクシングを通じて偶然知り合った2人が己の心と体を傷つけながら、もがき、苦しみ、
それでも何かを掴もうと懸命に生きる様を描く。
主演ふたりの熱演はすばらしく、ボクシングシーンも圧巻である。
個人的には、東京オリンピック後の2021年の新宿という舞台がすごく印象に残った。
奨学金を返済できない若者の徴兵制度の導入や自衛隊でのいじめ告発など、
近未来日本の社会問題が非常にリアルである。
中でも、主演の次に重要な存在として自殺防止研究会という存在が非常に異質に描かれており、
この異質さ(ボクシングの身体性との対比も含めて)が作品の印象を一筋縄ではいかないものとしている。
ただ、後半の彼らの顛末が尻すぼみなのは残念なところ。
脇役では相変わらず高橋和也がすばらしい。

ラストの展開には驚いた。
この結末を考えるほどに主演は菅田将暉ではなく、ヤン・イクチュンではないかと思ってしまった。

話は変わるが、本作の自殺防止研究会の作品内での位置づけは
園子温の「愛のむきだし」の自殺サークルを思わせる。
実は最近、邦画を見ていて園子温の影響を感じることが多いのだ。