★★★★★ 2019年/日本 監督/石川慶
編集が最高!通常、演奏シーンはいかに音楽が凄いかを見せる事が多いが本作はそれをしない。演奏シーンに別のピアニストの過去や心情のシークエンスをかぶせてくる。ゆえに演奏シーンで物語が止まることがなく、別の演奏者の苦悩や気づき、希望を同時進行で描き出すのだ。
またその演奏中に挿入されるシークエンスの美しいことよ!時に叙情的に時に幻想的に。ある意味コンペ曲が劇伴の役割を担っているのだ。そして、ラストの演奏者、松岡茉優のシーンだけはそれをしない。完璧に彼女の演奏しか見せず、彼女が紡ぎだす音楽に集中させる。これはもう、やられた!
斉藤由貴、片桐はいりなどの脇陣も全員がまさに音楽業界にいそうな人物を好演。中でも平田満が最高…栄伝を見送るあの小さな頷きで涙腺が決壊した…。松岡茉優は全てにすばらしいのだけど、予想外だったのは森崎ウィン。こんな繊細な演技をするんだと唸った。本年度暫定No.1。映画館の音響で見るべし。