落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

カツラとハイヒールとサングラスとつけまつげと

2007年02月17日 | play
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』

1998年にブロードウェイで上演され各賞を総ナメにしたロック・ミュージカルで2001年には映画化もされ、日本では過去に三上博史主演で上演された舞台。
60年代に東ベルリンで生れたヘドウィグが、流転の果てにドラアグ・クイーンとなり、オフブロードウェイのライブハウスで波乱の生涯を語る独白劇。
ぐりは映画でも舞台でも一度も観たことがない。今回がまったくの初見。

あのねー。
山本耕史キレイ過ぎ。
芝居ウマ過ぎ。カラダ素晴し過ぎ。歌ウマ過ぎ。歌は中村中の方が上手いけど(笑)、それでも充分。
しかし今回の舞台は山本クンのこの「優等生ぶり」がネックになってるかもしれない。子役出身の役者にありがちなソツのなさが、ヘドウィグの背負った人生の哀愁、愛の敗者だけが知る涙の味、そんなものを邪魔してるように見えて仕方がなかった。
この舞台は半分はヘドウィグのライブで、半分が彼女の昔語りになっているが、たとえば彼女の子ども時代、同性愛者としてのアイデンティティの葛藤や、恋愛・結婚の失敗についての説明はかなりあっさりしている。そのぶんを歌で表現してるんだけど、それでも、演じてる山本クンのキャラがサワヤカ過ぎて、ピチピチし過ぎてて、イメージが広がりにくいんだよね。想像力がうまく働かない。ヘドウィグのいろんなものにまみれ、疲れ、くたびれ果てた後にこそ獲得された輝きから放たれる(筈)のドラマってのがもうひとつ伝わってこない。山本クンが涙を流して熱演してる努力はすごくわかるんだけど、この役を演じるには若過ぎたのかもしれないし、毒が足りなかったのかもしれない。しかもコレ全編ほとんど彼の独白だけだし〜。

ストーリーはシンプルだし、主人公はドラアグ・クイーンでも同性愛の話じゃないし、誰にでもわかるいい話だと思う。感動できるし、泣ける。重みもあるし、笑いもある。
山本クンも中村中もとっても頑張ってたし(山本クン台詞トチり過ぎ・歩き方ヤバ過ぎですが)、非常にきちっとした舞台であるだけに惜しい。
ぐりは実は4月公演のチケットもとってあるので、それまでに山本ヘドウィグがどんだけ成長してるか楽しみにしておりますです。

ところで山本クンのメイクはなんであんなヒドイの?ヒドイったってもうちょっとどーかなりそーなもんだけどさあ・・・。

ミゾケンサイコー!!

2007年02月17日 | movie
『雨月物語』
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上田秋成の「雨月物語」から「浅茅が宿」と「蛇性の婬」を原案に脚色した時代劇。
原作の「雨月物語」は中学時代に読んだと思う。この短編集は後世さまざまな小説や映画やドラマのモチーフに採られていて、いずれもオカルト色の強い作品ばかりなので、この映画もそれだとばかり思ってたら全然違いました。反戦映画だよね。コレ。
主人公の源十郎(森雅之)と弟の藤兵衛(小沢栄太郎)は戦さをきっかけに金儲けや立身出世の夢に熱中して、それまでの平和なふつうの生活を顧みなくなってしまうんだけど、そんな男たちと混乱する時代に翻弄され不幸になるのはいつも女だ。
映像がとにかくものすごくリアル。全体に淡々としていてとくに何を強調するというわけでもないのに、戦時下の荒廃した社会の背景描写が非常に生々しい。しかもそこに登場する妖しの女・京マチ子の存在がまったく浮いてないとはこれいかに。まさに妖精、小悪魔的にかわいくて肉感的で夢のように綺麗なのに背筋も凍るほど怖い女の物語と、かなりはっきりと社会派な反戦ドラマがしっかりきっちり結びついている。見事としかいいようがない。
けど窯から素手で焼けたての陶器を取り出すシーンにはちょっと笑ってしまった。ソレ絶対ムリですってばあ〜。